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【ヒッチコック米時代】 2012.02.05 (Sun)

『舞台恐怖症 (1950米)』

(ヒッチコック全作品) 
36.舞台恐怖症

 ≪感想 (※ネタバレあり)≫
 ヒッチ自身も認めているが、男の回想はウソだった、というのは映画のルールを破るアンフェアなやり方。
 そうでなくとも芝居がかったセリフが回りくどく、ストーリーは煩雑なくせにスリルや冒険は低調。ヒロインが素性を隠し通すことや、真相が明かされてからの展開などに驚きがない。年寄りくさいイギリス流の作劇。



 A・ヒッチコック監督第36作 『舞台恐怖症 (1950米)』

 出演/ジェーン・ワイマン (イヴ・ギル)
     マレーネ・ディートリッヒ (シャーロット・インウッド)  
     リチャード・トッド (ジョナサン・クーパー)
     マイケル・ワイルディング (スミス刑事)
     アラステア・シム (イヴの父)

 ≪あらすじ≫
 夫を殺したという舞台女優シャーロットが、愛人ジョナサンのもとに転がり込んでくる。ジョナサンは彼女のために偽装工作をするが、それがもとで警察に追われる身に。演劇学校に通うイヴは友人の汚名を晴らすため、シャーロットの家に単身乗り込んでいく。

 ≪解説≫
 芝居を生業とする者たちの、複雑な化かし合いが展開。 大女優ディートリッヒが貫禄の演技。
 ヒッチは前作 『山羊座のもとに』 に続いて故郷ロンドンで撮影。イギリス風のミステリー脚本に、イギリス人俳優のイギリス演劇風の芝居などイギリスづくしだが、同時に郷愁〈ノスタルジー〉からの卒業でもあった。以後ヒッチはアメリカ流の娯楽と冒険道にまい進し、その黄金時代を築き上げる。次にイギリスで撮影するのは晩年の 『フレンジー('72)』。

 ≪裏話≫
 妻アルマ・レヴィルの名がクレジットされるのは、本作が最後。イギリス映画界では監督進出も期待された俊才だったが、彼女にはあまり野心がなかったようだ。 渡米後はヒッチの給料を上乗せさせるための、ほとんど名前だけのクレジットもあったが、引き続き脚本の手直しなどでヒッチを公私に支えていく。
 脚本作りやラッシュ(試写)で、アルマの意見に全幅の信頼を寄せていたヒッチ。 ふたりは“夫婦”というより“同志”のような関係だったそうだ。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 40分ごろ、ブツブツとセリフの練習をするヒロインとすれ違って振り向く。



 『STAGE FRIGHIT』

 監督・製作/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ウィットフィールド・クック (構成/アルマ・レヴィル)
     原作/セルウィン・ジェブソン
     撮影/ウィルキー・クーパー
     音楽/レイトン・ルーカス (ディートリッヒの歌はコール・ポーターらの曲)
     製作/フレッド・アハーン

 ワーナー 110分
 
12:50  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック米時代】 2012.01.26 (Thu)

『見知らぬ乗客 (1951米)』

(ヒッチコック全作品) 
37.『見知らぬ乗客』

 ≪感想≫
 何と言ってもロバート・ウォーカー!
 悪玉ブルーノは今日でいうストーカーのような偏執狂だが、得体のしれない怪物などではなく、育ちのよい洒脱さと、盲人の手を引いてやる優しい人間らしさも備えている。その一方で、極端な父への憎悪と母への偏愛・・・。その多面的な人間描写が画期的で、かつ現代社会の病理にも通じていて今なお怖ろしい。
 また、彼の母(マリオン・ローン)の不気味な過保護ぶり、ガイの妻ミリアムの「あばずれメガネっ子」な色気など、それぞれのキャラ造形と演技も光る。とくにヒッチの実娘パトリシアが演じた、ズケズケと残酷なことをいう犯罪マニアな妹のキャラクターが、辛口ユーモアとしても利いていておもしろかった。 (※山田康雄ほかのTV吹き替え版がお薦め! 下の【続き…】参照。)

 ヒッチの演出も、前作までの地味な英国ミステリー調から一転、アメリカ的な娯楽サスペンスに開眼して新境地を開拓。 事件のカギとなる眼鏡やライターといった小道具使いの巧さが冴え渡る。首を絞める手つきや遊園地のボート池での悲鳴など、細かいスリルを積み重ねる盛り上げ方もニクい。(唯一チェンバロ音楽が間抜けで興を削いだ。)



 A・ヒッチコック監督第37作 『見知らぬ乗客 (1951米)』

 出演/ファーリー・グレンジャー (ガイ・ヘインズ)
     ロバート・ウォーカー (ブルーノ・アントニー)
     ルース・ローマン (アン・モートン)
     パトリシア・ヒッチコック (アンの妹バーバラ)
     ローラ・エリオット (ガイの妻ミリアム)

 ≪あらすじ≫
 妻ミリアムとの離婚を望んでいる人気テニス選手のガイ。家路に向かう列車の中、ブルーノという見知らぬ男から、「父を殺してくれれば、ミリアムを殺してやる」と交換殺人を持ちかけられる。ガイはその申し出を一笑に付すが、ひとり暴走するブルーノは・・・。

 ≪解説≫
 「交換殺人」 をめぐってまとわりつく見知らぬ男の影・・・。 ヒッチはそれまでの低迷期を脱し、ヒッチ史における黄金時代の到来を告げた。
 原作は後の 『太陽がいっぱい』 で有名なハイスミスの長編第1作。 この映画がヒットしたおかげで人気作家としてブレイクした。 原作では (『太陽がいっぱい』にも通じる) ブルーノのガイに対する同性愛的な崇拝が強調されている。
 一方、ハードボイルド小説の雄チャンドラー (『探偵フィリップ・マーロウ』シリーズ) が脚本を任されたがヒッチとソリが合わず、ヒッチと若手オーモンド('40年代の諸作を手がけたベン・ヘクトの弟子)がほとんどを手直しした。

 撮影のR・バークスがヒッチ作品初登場。 彼は本作から(『サイコ』をのぞいて)『マーニー('64)』までを手掛けたヒッチ最高の右腕。本作でアカデミー白黒撮影賞ノミネート、『泥棒成金('55)』 では念願のオスカー受賞。

 ≪裏話≫
 愛人アンの妹バーバラを演じるのはヒッチの実娘パトリシア。父母両方の面影。ヒッチは縁故採用だと思われないよう、娘の応募を知った時から極端なくらい他人行儀で接したのだとか。
 また、悪役R・ウォーカーはこの怪演で一躍脚光を浴びるが、妻の女優ジェニファー・ジョーンズと大プロデューサーD・O・セルズニックの不倫に悩んで酒びたりになっており、本作の公開直後に32歳で急死してしまった。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 10分すぎ、列車から降りる主人公と入れ違いに、コントラバスを抱えて乗り込む。



 『STRANGERS ON A TRAIN』

 監督・製作/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/レイモンド・チャンドラー (初稿のみ)
         チェンチ・オーモンド (およびバーバラ・キーオン、ヒッチ&アルマ夫妻による)
     原作/パトリシア・ハイスミス
     撮影/ロバート・バークス  (アカデミー白黒撮影賞ノミネート)
     音楽/ディミトリ・ティオムキン

     ワーナー 101分
 
22:26  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック米時代】 2012.01.16 (Mon)

『私は告白する (1953米)』

(ヒッチコック全作品) 
38.『私は告白する』

 ≪感想≫
 他人の罪をかぶってでも沈黙を貫くカトリック神父の姿勢は、同じキリスト教圏では異論反論があり受けなかったそうだが、部外者には 「そういうものか」 と単純に受け入れられた。 その設定はじゅうぶんキャッチーで個性的。
 また、我が身可愛さゆえに奸智に走る真犯人の下男は根っからの悪者ではないし、その妻のかよわい怯えも多面的な人間ドラマを期待させる。 M・クリフト以下俳優陣の演技は素晴らしい。緊張感あふれる出色の心理描写。

 ところが、そんな深い心理劇を期待させておいて踏み込みが甘く、中盤以降は並のメロドラマになってしまった。ヒロインが回想する平板な恋物語や、不倫の是非を裁判で長々と問うくだりは実に退屈で、ラストのアクションも取ってつけたよう。 現代でも通用する傑作になりえたのに、ヘンに世間におもねってしまったのが残念。



 A・ヒッチコック監督第38作 『私は告白する (1953米)』

 出演/モンゴメリー・クリフト (マイケル・ローガン神父)
      アン・バクスター (ルース・グランフォート)
      O・E・ハッセ (オットー・ケラー)
      ドリー・ハス(ケラーの妻アルマ)
      カール・マルデン (ラルー警視)

 ≪あらすじ≫
 カナダ・ケベックのカトリック教会。ローガン神父は下男のケラーから殺人を犯したとの懺悔を告白される。しかし人妻ルースとの怪しい密会から、神父自身が容疑者にされてしまう。カトリックの戒律により、信者の懺悔を他言することはできない。神父はこのまま身代わりとなって罰を受けるのか・・・?

 ≪解説≫
 真実と戒律のはざまで苦悩する神父を描く。テーマが宗教とあって、ヒッチらしからぬ重苦しい作品となった。
 はまり役のM・クリフトが素晴らしい演技を見せる。娯楽第一のヒッチにとって、クリフトや刑事役K・マルデンら、このころ台頭してきた舞台畑・メソッド演技系の俳優とは合わなかったというが、その彼らの名演でもっている。

 ≪余話~カトリックとしてのヒッチについて≫
 アイルランド系のカトリック信者は、英国国教のイギリスでは厄介者あつかいされたマイノリティ。青果店を営んでいたヒッチコック家は、経済的に不自由はなかったものの社会的には下級階層に属していた。
 両親と寄宿学校から、カトリックの厳しいしつけと教育を受けたヒッチ少年。後に彼自身が述懐するほど度を外れた厳しさではなかったと思われるのだが、繊細な気質の少年にはたしかに大きな重しとしてのしかかった。
 表立ってはとくべつ熱心な信仰心を表明していたわけではないが、このとき叩き込まれた道徳観は、彼の生涯の人格形成に決定的な影響を及ぼす。
 すなわち、抑圧を打ち破るスリルへの衝動の一方で、破綻を恐れる用心深い自制心――。 隣りあわせの不気味さと品格は、作品やヒッチ自身のキャラクターに共通して見られる傾向になっている。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 冒頭、石段の上を横切る。



  『 I CONFESS 』

 監督・製作/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ジョージ・タヴォリ
          ウィリアム・アーチボルト
     原作/ポール・アンテルム
     撮影/ロバート・バークス
     音楽/ディミトリ・ティオムキン
  共同制作/バーバラ・キーオン

  ワーナー 95分
 
22:40  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック米時代】 2012.01.06 (Fri)

『ダイヤルMを廻せ! (1954米)』

(ヒッチコック全作品) 
39.『ダイヤルMを廻せ!』

 ≪感想≫
 3D撮影やグレース・ケリー初登場などで語られる人気作で、派手なシーンもありますが、ヒッチの演出は意外にもオーソドックス。 そもそも場面がほぼ固定されたセリフ劇で、ヒッチ作品としては地味な設定。それでも緻密に練り上げられた原作の面白さを前面に立てて、自分は基本の映像演出に徹する・・・、セリフや心理の流れに自然に寄り添うその 「基本」 の巧さにうならされるのです。
 前半、夫と同窓生のやり取りなどは作為を感じさせないまま、あれよあれよとその殺害計画に引きずり込まれていきます。「そんなことを言われた相手はどういう顔をするのだろう?」 なんていう観客の興味に忠実に応えるカット割りやカメラワークで、長ゼリフも飽きさせない。
 じつは物語としてはさほど魅かれなかったのですが、文句なしに面白い 『裏窓』 や 『北北西…』 もいいけど、プロの演出の神髄を語るなら本作の方が重要かもしれません。

 それから夫役R・ミランドの名演が光る! その悪だくみの機転にほれぼれ、思わず彼を応援してしまうほど。 ヒッチ作品の特徴である 「知的で紳士的な悪役」 のすばらしい代表例です。
 作家にいみじくも真相を言い当てられた彼はどう切り返すのか。また、陥れられた妻はどうやって冤罪の危機を逃れるのか。それだけに最後、警察の偽装と小細工で一件落着・・・はいまいましく感じました。



 A・ヒッチコック監督39作 『ダイヤルMを廻せ! (1954米)』

 出演/グレース・ケリー (マーゴ・ウェンディス)
     レイ・ミランド (トニー・ウェンディス)
     ロバート・カミングス (作家マーク・ハリデー)
     ジョン・ウィリアムズ (ハバード警部)
     アンソニー・ドーソン (刺客レズケート)

 ≪あらすじ≫
 妻マーゴが推理作家マークと不倫していることを知ったトニーは、彼女を殺して財産を我が物にせんと企む。マーゴは夫が差し向けた刺客に襲われるが、正当防衛で男を殺して危機を逃れる。しかしトニーも後には引けない。暗にマーゴへの容疑をふくらませ、計画的殺人犯に仕立てていく。

 ≪解説≫
 ブロードウェイの大ヒット劇の映画化で、ヒッチはアパートメントの一室内に場面を限定して、舞台劇の雰囲気を再現した。揺れ動く三角関係と二転三転の謎解きは、推理小説を読むような味わい。

 娯楽の王座を脅かすテレビへの対抗策としてハリウッドが打ち出した、立体映像 「3D」 方式を採用。前後に奥行きをもたせた調度品の配置や、ヒロインが手前のハサミに手を伸ばす立体的な動きなどに3D向けの工夫がされている。特殊な撮影法のため、ダイヤルを回す指のカットは巨大なハリボテだとか。
 ・・・ただし業界の3D戦略は軌道に乗らず、ほとんどは通常の方式で劇場公開された。3D版は最新ブルーレイなど一部ソフトで見られる。

 その3Dに合わせて、ヒッチは 『ロープ』 『山羊座のもとに』 以来のカラー撮影 (以後 『間違えられた男』と『サイコ』以外はすべてカラー作品)。 もともとヒッチは3Dに乗り気ではなく、本当は白黒で撮りたかったらしい。3D撮影は色彩・照明などに制約があったそうで、赤みが目立つ色調は野暮ったくてヒッチらしくない。

 ヒッチコック映画最高の「クール・ビューティ」 G・ケリーが初登場!
 はじめヒッチはそこまで彼女に入れ込んでいなかったことと、3D撮影上の制約もあって輪郭が硬く、言うほど美しく撮ってもらってはいない。 それでもいきなりふたりの男との連続キスが、魔性の 「ヒッチコック・ヒロイン」 を体現していてたまらない。 (「不倫」 という不道徳なふたりが最終的に勝利するのも、本作の特徴。)

 ≪ヒッチはここだ!≫
 13分ごろ、同窓会の写真の中にいる。技あり!  映画雑学クイズの定番。



 『DIAL M FOR MURDER』

 製作・監督・脚本/アルフレッド・ヒッチコック
        原作/フレデリック・ノット
        撮影/ロバート・バークス
        音楽/ディミトリ・ティオムキン

        ワーナー 105分
 
19:16  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック米時代】 2011.12.25 (Sun)

『裏窓 (1954米)』

(ヒッチコック全作品) 
40.『裏窓』

 ≪感想≫
 マイ・フェイバリットです。ヒッチのテイスト&カラーが過不足なく詰めこまれた、これぞ 「ヒッチコック・タッチ」 ! (ベートーヴェンに例えるなら5番運命…よけい分かりにくい?)
 声が聞こえそうで聞こえない、分かりそうで分からない隣人たちの生活描写や、主人公の人となりがすべて分かる冒頭のパン撮影(※)など・・・。、立体的な空間の隅々までをコントロールし、映像だけで物語を雄弁に語ってみせる。

   (※温度計・・・暑いから住人は窓を開けっぱなしている。
    ものものしいカメラ・・・主人公の職業が分かる。のぞき見の武器にもなる。
    カーレースの写真・・・主人公はこの事故でケガをした。
    女性のネガ写真・・・たぶん恋人だろう、どんな女性なのか?と期待させる。
                素直に飾れない 「ひねくれた愛情」 も感じさせる。)

 何よりヒッチコック究極の ”クール・ビューティ” G・ケリーの美しいこと! 引退作 『白鳥』 以上の、彼女史上最高。 ハリウッド史を代表する名デザイナー、イーディス・ヘッドのエレガントな衣装もすてき。
 ほか、クライマックス、双眼鏡越しにニラまれるシーンはビビッた! 「主人公目線」 に入り込んでいたので、あれは思わず背筋が寒くなった。



 A・ヒッチコック監督第40作 『裏窓 (1954米)』

 出演/ジェームズ・スチュワート (L・B・ジェフリーズ)
     グレース・ケリー (リザ・フリモント)
     セルマ・リッター (看護師ステラ)
     レイモンド・バー (ラーズ・ソーウォールド)
     ウェンデル・コーリー (ドイル刑事)

 ≪あらすじ≫
 事故で足を骨折したカメラマンのジェフは、アパートメントの自室で退屈な療養生活を送っていた。そんな彼の暇つぶしは、裏窓から見える隣人たちの生活をのぞき見すること。恋人リザや看護婦ステラの忠告もどこ吹く風、ひとり嬉々とするジェフ。ところがある日、向かいの男ソーウォールドの不審な行動を目撃する。

 ≪解説≫
 ヒッチの優れた演出とユーモアを随所に散りばめた、最も人気の高い傑作のひとつ。
 ギプスで動けない主人公の視界にあわせ、彼の部屋から一歩も出ないカメラ。(『救命艇』や『ロープ』などで試行錯誤を重ねてきた) 「制限された舞台設定」 の集大成にして最高の到達点になった。
 アカデミー監督、脚色、カラー撮影、録音賞にノミネートされたが無冠。ヒッチは娯楽映画の職人と見なされていた時代、ほとんど無視されて終わった (主要受賞作はE・カザン監督の 『波止場』)。

 ≪裏話≫
 原作はミステリーの詩人ウールリッチの短編小説。 無名作品の発掘とアレンジに長けていたヒッチは、このマイナー作を思う存分に料理して、第一級のエンターテインメントに仕上げてみせた。
 その一方で、プロデューサーとしてのヒッチはドケチとして知られ、ウールリッチにはスズメの涙ほどの著作権料しか支払われなかった。 ウールリッチはその微々たる額より、招待のチケットを送ってこなかったことが不満だったという。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 25分ごろ、売れない作曲家の部屋にいる黒髪のハゲたおじさん。難易度やや高し。



 『REAR WINDOW』

 製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ジョン・マイケル・ヘイズ
     原作/コーネル・ウーリッチ
     撮影/ロバート・バークス
     音楽/バーナード・ハーマン
     衣装/イーディス・ヘッド (本作からヒッチの遺作まで、計9作の衣装を手がける常連に。)

 パラマウント 112分
 
10:42  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック米時代】 2011.12.16 (Fri)

『泥棒成金 (1955米)』

(ヒッチコック全作品) 
41.『泥棒成金』

 ≪感想≫
 「太ももと胸、どちらがお好き?」…実はチキンの話でした。そんなオトナの火遊び<アバンチュール>にうっとり。
 水面に映えるG・ケリーが最高に美しい! それから濃厚で色鮮やかな南仏の風景も。そして花火とキス! ・・・この時代のカラー映像は、太陽の下に惜しげもなく広げた油絵のようです。オスカー獲るだけのことはあります。
 この際ストーリーは二の次。アメリカもハリウッドもヒッチも黄金期、幸福な時代の幸福な娯楽作。 大好きな作品のひとつです。

 パラマウント社の最新DVDパケは色調が下品。上のポスターのような古式ゆかしさのかけらもない。FOXドラマと一緒にしないでほしい。



 A・ヒッチコック監督第41作 『泥棒成金 (1955米)』

 出演/ケイリー・グラント (ジョン・ロビー)
     グレース・ケリー (フランシー・スティーヴンス)
     ブリジット・オーベール (ダニエル)
     ジェシー・ロイス・ランディス (母スティーヴンス夫人)
     シャルル・ヴァネル (ベルタニ)

 ≪あらすじ≫
 “怪盗キャット”ことジョン・ロビーは、今ではすっかり足を洗い、風光明媚なコート・ダ・ジュールで悠々自適の生活を送っていた。ところがキャットの手口を真似た泥棒が現れ、警察からにらまれる羽目に。不当な容疑を晴らすべく、富豪スティーヴンス母娘の警護を買って出るロビー。やがて彼は美しき令嬢フランシーと恋に落ちる。

 ≪見どころ・裏話≫
 美しい南仏の風景をバックに、ハリウッドきっての美男美女が交わす軽妙な会話…おしゃれこのうえないロマンティック・サスペンス。ヒッチ初のワイドスクリーン作品。
 ヒッチは以後すべての作品をグレース主演で撮りたいとまで惚れこむが、グレースはこの撮影の前後にカンヌ映画祭に出席、そこで後の夫君になるモナコのレーニエ公と出会うことになる。

 アカデミー・カラー撮影賞受賞 (ほか美術、衣装賞ノミネート)。撮影のR・バークスは、『見知らぬ乗客('51)』 から(『サイコ』をのぞいて)『マーニー('64)』 まで、ヒッチの黄金時代を支えた最高の右腕。
 豪華な南仏ロケ*をしているのに、車の運転シーンはわざわざいつもの 「スクリーン・プロセス(背景合成)」 撮影。 ヒッチコックといえばスクリーン・プロセス。 本人は大の旅行好きだったが、ロケのリアル感より、作りものであっても銀幕の夢世界を追求するヒッチの、昔かたぎのこだわりがうかがえる。
 (*ちなみに戦後のアメリカ映画界は各種規制が厳しくなり、ハリウッド内で撮るより国外ロケをしたほうが自由で安くつくようになった。世界の文物・情報は観客の興味とも一致し、この時代海外ロケものが多く作られた。『ローマの休日('54)』やアカデミー作品賞『八十日間世界一周('56)』『戦場にかける橋('57)』など。)

 ≪この頃・・・≫
 1955年4月20日、ヒッチはアメリカ国籍を取得。 渡米後まもなく帰化した妻アルマと娘パトリシアから遅れること10余年。本人は 「裁判所に出向いて宣誓するのがめんどくさかった」 とはぐらかしている。
 同年10月、TVドラマ 『ヒッチコック劇場』 シリーズが放送開始。ヒッチは演出および番組ホストとしてお茶の間の人気者に。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 10分、バスの中、K・グラントの横にちゃっかりと!ふたりの仏頂面がおかしい。
 (※技ありから超難問まで、いろんなチョイ役出演がありますが、これが一番好き!)



  『TO CATCH A THIEF』

 製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ジョン・マイケル・ヘイズ
     原作/デヴィッド・ドッジ
     撮影/ロバート・バークス                    (アカデミー撮影賞受賞)
     美術/ハル・ペレイラ、ジョセフ・マクミラン=ジョンソン   (美術賞候補)
     衣装/イーディス・ヘッド                     (衣装賞候補)
     音楽/リン・マーレー

 パラマウント 106分

 
20:46  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック米時代】 2011.12.04 (Sun)

『ハリーの災難 (1956米)』

(ヒッチコック全作品) 
42.『ハリーの災難』

 ≪感想≫
 やりたいことは分かるのだけれど、コメディとしては笑えないし、サスペンスとしてもハラハラしない。登場人物や舞台がのんびりしているのはいいが、映画作品としての躍動感までのんびりする事とは違う。
 でも、あっちを立てればこっちが立たず、七転八倒の騒動は三谷幸喜ふう。まだ脂が乗っていた頃の三谷さんにリメイクしてほしかったです。



 A・ヒッチコック監督第42作 『ハリーの災難 (1956米)』

 出演/エドマンド・グェン (“船長”アルバート・ウィルズ)
      ジョン・フォーサイス (サム・マーロウ)
      シャーリー・マクレーン (ジェニファー・ロジャース)
      ジェリー・マザーズ (息子アーニー・ロジャース)
      ミルドレット・ナトウィック (ミス・グレイヴリー)
      フィリップ・トリュクス (ハリー・ウォープ) =ノンクレジット

 ≪あらすじ≫
 紅葉美しいバーモントの森に、3発の銃声が響き渡った。そして山中に男の死体が・・・。男の名はハリー。禁猟中の森で狩をしていた“船長”ウィルズ、ハリーの前妻ジェニファーら、それぞれ思うところのある村人たちは、事件を隠そうとあれこれ策をめぐらせる。

 ≪見どころ≫
 少々ブラック&シュールな、ほのぼのミステリー。 美しくのどかな田舎に不釣り合いな死体のアンバランスと、死体を前にしてなおのどかな人々のアンバランス。 死体さんにとってはまったく災難なタイトルにもクスリとさせられる。
 後の名優S・マクレーンが若い母親役で映画デビュー。コメディエンヌとして当時から抜群にカンが良かったそうだ。
 また音楽のB・ハーマンがヒッチコック作品初参加。ヒッチ黄金時代を支える最大の盟友に。

 ≪裏話≫
 1955年、ヒッチは本作の宣伝のため初来日 (自身は本作を気に入っていたが、興行の成功には自信がなかったからという話も)。このとき和食の名店に招待されながら、大好物のステーキを店に出前させたという。(・・・宣伝や会議にはまじめに参加していたそうだが、食に関しては世界の行く先々に好物を空輸させるほど、とにかくうるさかった。)

 ≪ヒッチはここだ!≫
 20分ごろ、露店のサムの絵に見入る老人の高級車の向こうに。難易度高し。



  『THE TROUBLE WITH HARRY』

 製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ジョン・マイケル・ヘイズ
     原作/ジャック・トレヴァー・ストーリー
     撮影/ロバート・バークス
 タイトル・イラスト/ソール・スタインバーグ (ノンクレジット)
     音楽/バーナード・ハーマン

 パラマウント 99分
 
23:26  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑