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【ヒッチコック全作品】 2013.02.22 (Fri)

『農夫の妻 (1927英)』

(ヒッチコック全作品) 
07.農夫の妻

 ≪感想≫
 何が面白いのか、今となっては分からない。女性にフラれては当たり散らすだけの つまらぬオッサンを笑えばよいのか、四苦八苦の末のハッピーエンドに喝采すればよいのか・・・。



 A・ヒッチコック監督第7作 『農夫の妻 (1927英)』

 出演/ジェイムソン・トーマス (サミュエル)
     リリアン・ホール=デイヴィス (女中ミンタ)
     ゴードン・ハーカー (従僕アッシュ)

 ≪あらすじ≫
 男やもめの農場主サムは、ひとり娘の結婚を機に再婚を決意する。女中ミンタのアドバイスを受けて花嫁探しをするも、現実は厳しい。

 ≪解説≫
 イギリスの片田舎を舞台にした旧時代の牧歌的な物語。例によってヒットした舞台劇の映画化企画で、原作のフィルポッツは推理小説の古典 『赤毛のレドメイン家』 で有名。(本作はサスペンスではない。)
 キャメラマンが急病で倒れたため、ヒッチ自身がカメラを回したそうだ。探せばヒッチらしい冴えが見つかるだろうか。
 当時のロンドンでは約4年間もの大ロングラン上映を果たした。 サイレント作品。

 ≪ヒッチはここだ!≫
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 『THE FARMER'S WIFE』

 監督・脚本/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/エリオット・スタナード
     原作/イーデン・フィルポッツ
     撮影/ジョン・J・コックス (急病のため、実際はヒッチ自身が撮影。・・・一部?全部?)
     製作/ジョン・マックスウェル

 ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャーズ社 98分
 
23:21  |  ヒッチコック全作品  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック全作品】 2013.02.04 (Mon)

『シャンパーニュ (1928英)』

(ヒッチコック全作品) 
08.シャンパン

 ≪感想≫
 笑いのテンポがのんびりしていてサイレントで観ると冗長なので、弁士が面白おかしく補足してくれたらもっと楽しめるかも。 映像演出はフットワークが軽く生き生きしているだけに、そういうバージョンがあればぜひ見直したい。
 船上、千鳥足の酔っ払いが、船が揺れだすとまっすぐ歩けるというギャグがチャップリンみたいだった。本家チャップリンでこういうシーンなかったけかな?



 A・ヒッチコック監督第8作 『シャンパーニュ (1928英)』 (別題 『シャンペン』)

 出演/ベティ・バルフォア (ベティ)
      ゴードン・ハーカー (ベティの父)
      ジャン・ブラティン (ベティの恋人)
      テオ・フォン・アルテン (謎の紳士)

 ≪あらすじ≫
 恋人との結婚を父に反対された富豪令嬢ベティは、恋人を追ってフランスに駆け落ちする。父は破産を装って娘と恋人の仲を裂こうとするが、一念発起したベティはパリのキャバレーで働き始める。

 ≪解説≫
 世間知らずのお嬢様が人生経験を積んで成長する、という教訓めいたライト・コメディ。サイレント作品。
 会社からあてがわれた題材ではあったが、多彩なカメラワークで“ヒッチコック・タッチ”の片鱗を随所に見せており、後年の作品群の参考として見ると興味深い。

 本作完成後の同'28年7月7日、ひとり娘のパトリシアが誕生。(のちに父の作品 『舞台恐怖症('50米)』 『見知らぬ乗客('51)』 『サイコ ('60)』 などに出演。)

 ≪ヒッチはここだ!≫
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     『CHAMPAGNE』

 監督・構成/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/エリオット・スタナード
     原案/ウォルター・C・マイクロフト (製作マックスウェルの腹心)
     撮影/ジョン・J・コックス
     製作/ジョン・マックスウェル (BIP社長)

     ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャー社 107分
 
09:04  |  ヒッチコック全作品  |  コメント(1)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック全作品】 2013.01.23 (Wed)

『マンクスマン (1928英)』

(ヒッチコック全作品) 
09.マンクスマン

 ≪感想≫
 三者三様の心理描写はとても巧い。奇をてらわず、万人に伝わる喜怒哀楽 (ヒッチ演出はハデだと誤解されがちなのだが、本質は心理の動きに忠実なだけ)。 セリフに頼らず映像だけで語りつくすサイレント技法の完成に近づいているようだ。
 今となっては三角関係のお話自体がありきたりだが、実力のある作家がしっかり作った作品なのはよく分かった。



 A・ヒッチコック監督第9作 『マンクスマン (1928英)』

 出演/カール・ブリッソン (ピート)
     マルコム・キーン (フィリップ)
     アニー・オンドラ (ケイト)
     ランドール・エアートン (ケイトの父シーザー)

 ≪あらすじ≫
 漁師ピートと弁護士フィリップは、イギリスのマン島に暮らす無二の親友どうし。貧しいピートは恋人ケイトとの結婚を認めてもらうため、ひと山当てようと遠洋に乗り出すが、そのまま消息不明に・・・。残されたケイトはほどなくフィリップに傾いていくが、ふたりの前に生きていたピートが現れる。

 ≪解説≫
 英マン島を舞台に男女の三角関係を描くメロドラマ。 ヒッチ最後のサイレント作品。
 ヒロイン役のA・オンドラは、ヒッチが次に手掛けるイギリス初のトーキー映画 『恐喝<ゆすり>』 でも主演するポーランド系チェコの女優。当時欧州いちの映画先進国ドイツで活躍していただけあって、さすがに洗練されていて魅力的だ。気高い 「クール・ビューティ」 とはちがう庶民的でキュートな色気があり、最初の重要なヒッチコック・ヒロインと言えるだろう。

 ≪裏話≫
 黎明期のイギリス映画界は伝統ある演劇界より地位が低く、イギリス人女優の質も高くはなかった。最初期のヒッチ作品など、みんな女装したジャック・レモンみたい。 ヒッチ自身、イギリス人女優の中途半端な気取りがイヤで、しごいたり酷評したりしていたので、同映画界では 「女ぎらい」 という評判まで立っていたそうだ。(もともと奥手で女性の扱いがヘタだったこともある。)

 撮影直前の同'28年7月7日、ひとり娘のパトリシアが誕生。(のちに父の 『舞台恐怖症('50米)』 『見知らぬ乗客 ('51)』 ほかに出演。)

 ≪ヒッチはここだ!≫
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  『THE MANXMAN』

 監督/アルフレッド・ヒッチコック
 脚本/エリオット・スタナード
 原作/ホール・ケイン
 撮影/ジョン・J・コックス
 製作/ジョン・マックスウェル

 ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャー社 90分
 
00:26  |  ヒッチコック全作品  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック全作品】 2013.01.13 (Sun)

『恐喝<ゆすり>(1929英)』

(ヒッチコック全作品) 
10.恐喝(ゆすり)

 ≪感想≫
 刑事のやり方がむちゃくちゃなストーリーではあるが、映画史や技法の上では存分に楽しめた。

 冒頭、サイレント形式ですすむ捕り物劇と、終業と同時にドッとしゃべりだす刑事たち。・・・張り詰めた緊張が一気にほぐれるようでとても効果的だった。製作途中でトーキー方式に変わったことの ケガの功名。

 重要な 「ヒッチコック・ヒロイン第1号」 といえるA・オンドラが小悪魔的でキュート。やたら下着シーンが多いけど、映画先進国ドイツから来ただけにサッパリしていて全然いやらしくない。脱ぎっぷりがよくてヒッチも楽しかったことだろう。
 そのヒロインが殺人を犯して悄然と帰路につく場面、すれ違う人々が幻のように消えていく映像編集が丁寧にできていて感心した。

 そして何といっても、先進的なトーキー演出の数々!(下記) 初挑戦から目のつけどころが違うのだからかなわない。



 A・ヒッチコック監督第10作 『恐喝<ゆすり>(1929英)』

 出演/アニー・オンドラ (アリス) ※声の吹替ジョーン・バリー
    ジョン・ロングデン (フランク)
    ドナルド・カルスロップ (トレイシー)
    シリル・リチャード (画家)

 ≪あらすじ≫
 婚約者の刑事フランクとケンカしたアリスは、行きずりの画家に誘われるままそのアトリエに足を運ぶ。ところがそこで襲われそうになった彼女は、もみ合った末にナイフで画家を刺し殺してしまう。フランクの計らいでアリスは容疑を逃れるが、事件の真相を知る男が彼女をゆすり始める。

 ≪見どころ≫
 イギリス映画史上の記念すべきトーキー第1作*。
 後ろ向き・画面外での会話や、カーテンの向こうで叫び声だけで争うシーン、そして「ナイフ」という言葉が次第に強調されるシーンなど、ヒッチはトーキーの実験を的確かつ想像性豊かに試みている。

 主演のポーランド系チェコ女優A・オンドラのなまりが強すぎたため、脇に声の吹き替え女優 (J・バリーは後に『リッチ・アンド・ストレンジ('32)』で主演) を置いて同時録音(!)された。
 撮影中に急きょトーキー化が決まって撮り直されたため、一部のシーンはサイレント形式のまま。それでも、バタバタする会社側をよそに、すでにトーキー時代の到来を見越していたヒッチは意気揚々と撮りあげた。

 ≪*イギリス初の長編トーキー映画≫
 本作の公開は1929年6月29日。その少し前にもイギリスの会社がアメリカで製作したトーキー作品が1、2本あったが、純イギリス映画で、かつ芸術的・興行的に圧倒的な成功を収めたのは本作であったため、この 『恐喝』 が 「イギリス映画初の長編トーキー作品」 とみなされている。
 (なお、ニュース映像や実験映画など短編トーキーはすでに登場しているので、まったくの初めてではない。)

 ≪ヒッチはここだ!≫
 10分過ぎ、地下鉄の中で、子供にいたずらされる。



 『BLACKMAIL』

 監督/アルフレッド・ヒッチコック
 脚本・原作/チャールズ・ベネット
 撮影/ジャック・コックス
 音楽/ジミー・キャンベル&レグ・コネリー
 製作/ジョン・マックスウェル

 ゲインズボロー社 82分
 
10:07  |  ヒッチコック全作品  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック全作品】 2013.01.05 (Sat)

『エルストリー・コーリング (1930英)』

(ヒッチコック全作品)

 A・ヒッチコック監督・番外作 『エルストリー・コーリング (1930英)』

 ≪解説≫
 トーキー映画とテレビ放送の幕開けにあたり、ヒッチが所属する映画会社B.I.P.が、彼らのオールスター・キャスト&スタッフで作ったお祭り作品。
 「イギリス初のミュージカル映画」 とされているが、ただ芸人や歌手の芸を並べただけのもの。それらがテレビ放送の中で繰り広げられている、という趣向。

 ヒッチは、テレビの調子に四苦八苦しながらその番組を見ている男女のシーンのみを演出。
 通常、ヒッチコック監督全53作品の中に数えない。

 ちなみに 「エルストリー」 とは、ロンドン北郊外にあるイギリス映画の都。



 『ELSTREE CALLING』

 監督/アルフレッド・ヒッチコックほか計4人
 製作/ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャーズ社 83分

 
16:10  |  ヒッチコック全作品  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック全作品】 2012.12.19 (Wed)

『ジュノーと孔雀 (1930英)』

(ヒッチコック全作品) 
11.ジュノーと孔雀

 

 ≪感想≫
 舞台劇にそのままカメラを向けただけ。延々ワン・シーンのセリフ劇は、まるまる飛ばせばよかったくらい苦痛だった。 数少ない場面転換時に、機関銃の音をかぶせる演出は印象的だったが、もう少し場面を広げてくださいよ、ヒッチさん。

 ただ後半部には、現代でも定番として多用される 「音の演出」 が2か所。目(耳)に止まった。
 ①裏切り者の息子に追っ手がせまるシーン。罪悪感と命の危機におびえる表情だけ映し、画面の外から葬列の会話や鎮魂歌の 「声」 を容赦なくぶつけて、死の不安を頂点まであおる演出。
 ②事務所の階段を下りる夫。相続話がつぶれて失意の脳裏に、無邪気にはしゃいでいた頃の会話が再現されるみじめな演出。

 ・・・前後作品から察するに、これらはおそらくヒッチその人の発明だろう。今では当たり前の演出法でも、当時1930年、トーキー2作目でやってのけた功はすごい。



 A・ヒッチコック監督第11作 『ジュノーと孔雀 (1930英)』

 出演/サラ・オールグッド (ジュノー)
      エドワード・チャップマン (その夫ジョン・ボイル。“孔雀”)
      ジョン・ローリー (息子ジョニー)
      キャスリーン・オレガン (娘メアリー)

 ≪あらすじ≫
 アイルランド独立戦争に揺れるダブリン。しっかり者の女房ジュノーと、“船長”を気取るぐうたら亭主ボイル。この夫婦に遺産相続の話が舞い込んでくるが、それがもとで、彼らは次々と不幸に見舞われることに・・・。

 ≪解説≫
 当時リアルタイムのアイルランド独立紛争を背景にした、波乱の家庭ドラマ。 アイルランド気質を丁寧に描くと同時に、神をなじるような幕切れはカトリックおよびアイルランドの自己批判とも取れ、イギリスやプロテスタント勢力との紛争下にあっては劇的なものだったのだろう。(ちなみにヒッチもカトリックのアイルランド系イギリス人。)

 タイトルは、結婚生活に難儀したかのローマ女神とその飼われ鳥から。
 原作はイギリスでは知られた舞台劇だが、もともと映画的ではないうえ自己流にアレンジしづらい有名作品の映画化に、ヒッチは四苦八苦。 公開当時は高い評価を得たが、この原作戯曲と俊英ヒッチの名前先行で、あまり実質を伴ったものではなかったという。
 脚色はヒッチ夫妻。

 ≪ヒッチはここだ!≫
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 『JUNO AND THE PAYCOCK』

 監督・脚本/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/アルマ・レヴィル
     原作/ショーン・オケイシー
     撮影/ジャック・コックス
     製作/ジョン・マックスウェル

 ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャーズ社 95分
 
22:35  |  ヒッチコック全作品  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック全作品】 2012.12.08 (Sat)

『殺人!(1930英)』

(ヒッチコック全作品) 
12.殺人!

 ≪感想≫
 お話そのものより、映像やトーキー技法など技術的な部分を追うだけで楽しめた。

 冒頭の大騒動だけでも、当時最先端をゆくトーキー技法のオンパレード。
 ・・・夜のしじまをつく女の悲鳴。「ガンガン」「ワンワン」 の騒音と喧騒 (こういう画面外の音の使い方が上手い!)。 ところが死体が発見された瞬間、いっさいの音が消え去り無音に・・・。
 自身の 『恐喝<ゆすり>』 からわずか1年、 にぎやかであれさえばいいとすら思われていたトーキー黎明期において、声の距離感や沈黙の価値に気付いていたヒッチの卓見が光る。

 映像も、影の使い方が不気味だけどかっこよくて、やっぱりサスペンス・スリラーを撮ってるヒッチからは才能がほとばしっている。



 A・ヒッチコック監督第12作 『殺人!』 (1930英)

 出演/ハーバート・マーシャル (サー・ジョン)
     ノラ・ベアリング (ダイアナ)
     フィリス・コンスダム (マーカム)

 ≪あらすじ≫
 女優のダイアナが役者仲間を殺した罪で死刑判決を受ける。陪審員のひとり俳優のジョン卿は、有罪票に投じながらも判決に疑問を抱き、独力で真犯人を捜し始める。

 ≪解説≫
 ヒッチ作品では意外とめずらしい犯人当てミステリー。

 しかしむしろ注目すべきは、湯水のごとくあふれ出るトーキー演出のアイディア。
 たとえば朝のひげ剃りのシーン。今日ではおなじみの、役者が口を動かさず、別録りの音声を重ねて内心を語るという 「モノローグ(独白)」 の手法は世界初。 またラジオの音楽で心理描写を補うのも実験的。そして驚きは、ノックの音が鳴った瞬間、BGMがプツリと切れて「我に返る」表現。これも今では定番となった演出ではないか。ダビング技術などない時代、セリフの録音テープと生の楽団を脇に置いて同時撮影・録音したそうだ。

 その一方、ヒッチ夫妻で担当した脚本の仕上がりが遅れ、セリフやストーリーはチグハグなものに。 ドイツ人役者によるドイツ語トーキー版(『Mary』)も並行して作っており、現場はとにかく大変だったらしい。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 60分ごろ、現場宅から出てきたジョン卿らの前を女性と横切る。



  『MURDER!』

 監督/アルフレッド・ヒッチコック
 脚本/アルマ・レヴィル (ヒッチ夫人)
 原作/クレメンス・デーン、ヘレン・シンプソン
 撮影/ジャック・コックス
 製作/ジョン・マックスウェル

 ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャー社 92分

 
19:26  |  ヒッチコック全作品  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑