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【日本映画】 2010.06.23 (Wed)

黒澤明 『静かなる決闘』・・・の千石規子

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 シリーズ≪黒澤映画のヒロイン≫その2

  黒澤明監督初期の人間ドラマ 『静かなる決闘』 (1949大映)。
 手術患者から梅毒に伝染した若き医師 (三船敏郎) の苦悶と葛藤を描く。

 前半は、主人公が病気を隠し、涙をのんで婚約者に別れを告げるまで。 しかし、当時は病気を隠すことが世間体として 「良し」 とされたのか知らないけれど、あまりの冷たい仕打ち、今ではまったく共感できません。
 一方的に婚約を破棄される婚約者 (三條美紀) が可哀そすぎ。


 ・・・が、婚約者が物語から退場して、ヒロイン役が見習い看護婦へ交代した後半はすごかった!

 主人公が押さえつけてきた想いや欲望を、看護婦にぶちまける圧倒的なひとり語り。
 その十字架の重さを、半分受け止めて半分受け止めきれなかったのか、子供のように 「ウゥー」 と哭くばかりの看護婦。 はじめやる気もなく主人公医師の 「性病」 を軽蔑していた彼女も、その真相と崇高な意思に打たれて生まれ変わります。


 ダンサーあがりの見習い看護婦役は千石規子
 いまだ現役の千石さん、『たけしくん、ハイ!』 や 『Dr.コトー診療所』 など気丈なおばあちゃん役で知られているかも。 お若いころは――黒澤の前後作 『酔いどれ天使』 『野良犬』 『醜聞<スキャンダル>』 もそうだったように――こういう 「アバズレ」 ぽい役をやらせたら天下一品!
 報われない恋心、でも女ひとりで生きていく強さを秘めたずるさとたくましさ・・・。 もし 『七人の侍』 で三船敏郎が演じた 菊千代 が生き残っていたら、こんなカミさんをもらってたのではないだろうか。 それくらい三船とぴったりハマってます。

 黒澤が映画人生でただ一度だけ 「震えた」 という白熱の演技合戦。 終戦直後の貧しさと激しい労働争議の中、映画に命を賭けた若者たちの熱っぽい日々が伝わってきて、必ずしも成功作とはいえない小品なのに目が離せません。
 とある酒席での千石さん、酔っぱらって黒澤の膝に吐いたこともあるとか。 黒澤映画の隠れた名ヒロイン、それが千石規子さんです。
 

【続き・・・】

 
 ・・・ほかにも、すべてを吐き出して看護婦の同情を受けたあと、何事もなかったかのように我に帰る主人公の態度もリアルだし、 ラスト 「ここの若先生は聖者だ」 に応えての父親役・志村喬の一言もズシリときた。
 前半のマイナスを後半で取り返した、じつに力みなぎる作品。

 
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