【クラシック音楽】 2010.11.09 (Tue)
レナード・バーンスタイン記念

今2010年は、大指揮者レナード・バーンスタイン (1918-1990米) の没後20年だそうです。
あちこちで特集が組まれていますが、中でも弟子の指揮者・佐渡裕さんが語ったNHK教育の番組がおもしろかった。
「カラヤンの音楽は大ッ嫌いだが、あいつの(かっこいい)顔は見たい」 と、カラヤンとのライバル関係を本人が楽しんでいたというサバけた素顔。
最晩年の、ゆっくりすぎる指揮に反発するウィーン・フィル団員たちとのぶつかり合い・・・。
「レニー」 の愛称で親しまれ、舞台上での軽快な指揮ぶりが知られていますが、その演奏は意外なほど堅実で、ヨーロッパの伝統と伍する深みと説得力を持っていました。それでいて 「アメリカ初の世界的指揮者」 としてのヨーロッパとはひと味違った視点は間違いなく音楽界の視野と領域を広げた。それが最大の功績でしょう。
【ベートーヴェン 『第九』 (1989)】
ベルリンの壁崩壊を記念して、その1カ月後に演奏されたライブCD。 歌詞の 「Freude(フロイデ=喜び)」 を 「Freiheit(フライハイト=自由)」 に変えたというエピソードが有名。
東西の演奏家が集結した即席の混成オケですが、それをまとめるレニーのカリスマ性はさすが。
歴史的・祝祭的な高揚感はもちろんのこと、いち演奏としてもしっかり作られている。 「はじめての第九」 やじっくり普段聴きとしてもオススメできる希有な名演です。
【ベートーヴェン 『皇帝』(1989)】
クリスティアン・ツィマーマンとのピアノ協奏曲。
巨匠然とふんぞり返った 『皇帝』 ではなく、明快・前向きな骨格が何と雄々しくすがすがしいことか。 CD解説にある 「バーンスタインという大海をゆうゆうと泳ぐツィマーマン」という表現がぴったりの、明るい未来型の快演。 ぼくの決定盤。
【マーラー 『交響曲第5番』(1987)】
80年代に録り直した新マーラー全集より。
最晩年80年代のバーンスタインは、内向的でネチっこくてあまり好きじゃありません。 この曲のベストとして名高いCDですが、ゆっくりこってりと濃密緻密に過ぎて、最初の1枚としてはどうか。
ただ、それだけ作品の奥底を掘り下げ、芸術の神髄を描きつくさんとする洞察力・解析力は生涯尽きることがなかった。 有名な第4楽章≪アダージェット≫だけは、これより深く官能的な演奏を聴いたことがありません。 他に比ぶるものなき孤高の頂き。
・・・なんだかんだ言いながら、最晩年80年代の演奏ばかりになっちゃいました。
ほか、1978年録音のベートーヴェン 『英雄』 (写真)は、ぼくが初めて買ったバーンスタイン。前の世代ほど古くなく後の世代ほど軽くない、初心者にも安心なスタンダードと言えるのではないでしょうか。
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