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【日本映画】 2011.02.18 (Fri)

伊丹十三の大傑作 『タンポポ』

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 また伊丹十三監督の大傑作映画 『タンポポ』 を見ました。1985年東宝。
 ずっと前にテレビ放送を録画したビデオ。フジテレビの映画劇場でもよくやっていたので、もう何度目でしょうか。
 流れ者の男が、ホレた女のためにラーメン屋を建て直して去っていく、人呼んで 「ラーメン・ウェスタン」。 その合間に散りばめられた 「食」 にまつわるオムニバス・エピソードも楽しい、極上の 「五目うま煮映画」 です。(予)

 全シーンを語ろうとしたら収拾がつかなくなったので、好きな小エピソードを選んでみました。それでも長くなりました。でもでも発表します。 (でれれれ・・・)


 ≪第1位! 専務とヒラの高級フレンチ・レストラン≫
 高級フレンチ・レストランにやってきた、あるサラリーマンご一行。 ふんぞり返ったお偉方はフレンチなんてチンプンカンプンな中、見るからにダメなヒラ社員 (加藤賢崇) が、「どういうわけか、朝からコルトン・シャルルマーニュが飲みたくて・・・」。
 日本の古い組織人たちの 「舌ビラメ」「ぼくも同じもの」「私も」 はいかにもありそう。 空気を読まない若造を笑うか、空気を読みすぎる年寄りを笑うか、その人の性格が出そうです。
 ウェイター役・橋爪功さんの、ツンとすました表情もおかしい (「さようでございマス」)。 何度見ても吹き出してしまう、一番好きなシーンです。


 ≪第2位! ホームレス風、トロトロ玉子のオムライス≫
 『タンポポ』 の名シーンと言えばこれ。
 グルメなホームレスの集団、そのひとり(ノッポさんこと高見映) が作るトロトロ玉子のオムライスは、当時列島に衝撃(?)が走りました。 半熟オムレツをライスに乗せて、真ん中から開くアイディアはまさに開眼モノ。 映画史上でも1、2をあらそう 「名ごちそう」 です。
 このあと自分でも作っていますが、玉子3つ4つ使わないとうまくいかない。考えたら1個たった10円20円ぽっちなのに、なんてぜいたく~。
 手元のアップ、実際に作っているのは伊丹監督なんだそうです。ずっとプロだと思ってた。


 ≪第3位! 白服の男とその情婦≫
 でも影の第1位は、白服の男 (役所広司) とその情婦 (黒田福美) の、食材を使ったエロいシーンです。 ぜったい 『ナインハーフ』 より 『エマニエル』 よりエロい。 名曲 『マーラーの第5番アダージェット』 がこれまたエロい。
 これら、全編に通底するエロのセンスが絶妙。 大人の諧謔です。


 その他のオムニバス・エピソード

 ≪ラーメン歴40年の先生≫
 冒頭のラーメン講釈。老先生 (大友柳太朗) のもったいつけたお作法が楽しい。演じる大友さんはこの直後・・・。

 ≪スパゲッティのマナー教室≫
 外国のマナーに敏感すぎる日本人を皮肉る。
 講師役の岡田茉莉子さん、お若いころはあだっぽくて小悪魔的で本当に素敵でした。 小津や成瀬作品にみずみずしい生気を与えていた。 伊丹映画の常連としては一転、『マルサの女』 がエグかった。 これぞ女優魂。

 ≪カキを採る海女≫
 海女役の洞口依子さんは当時20歳でしたか。もっと若い、中学生くらいだと思っていた。鮮烈すぎるデビューにドキッとしました。

 ≪歯が痛い男 (藤田敏八)≫
 熟女な歯科医助手がたまらない。
 ソフトクリームを一心不乱になめる男の子は、どこかしらひもじそうで可愛いらしくも哀れ。胸からぶら下げた注意書きの札は、伊丹監督が実際に息子さんにやっていた 「教育法」 だとか。タンポポの息子ター坊が、その実子・池内万平さんです。

 ≪カマンベールの老婆≫
 店に並ぶモモやらパンやらチーズやら、指でグニグニ押してまわる老婆 (原泉) と、その店主 (津川雅彦) の攻防。 セリフなしの追いかけっこがバカバカしくておかしい。

 ≪サギ師と老教授≫
 サギ師にカモられる 「教授」 役の中村伸郎さんは、黒澤映画の名作 『生きる』 のイヤミな上司が印象的な、インテリ&ブルジョワ系の名脇役でした。 ハマリ役を逆手にとっていて、クラシック映画ファンはさらにニヤリ。

 ≪母ちゃんが作った最後のごはん≫
 いまわの際の妻 (三田和代) が夫 (井川比佐志) に励まされ、最後の気力を振り絞ってごはんを作る。
 「母ちゃん、寝るな! めしを作れ!」
 母として妻として最期のつとめ。 家族が食べるのを見届け、静かに事切れる母ちゃん・・・。 ひっきりなしに鳴り響く電車と踏切の騒音が残酷。できればビデオを早送りしたい、観るのがとてもつらいシーンです。

 ≪おっぱいを飲む赤ちゃん≫
 大団円のエンディング。 食の原点ですね。かわいい赤ちゃん。



 本当に何度見てもおもしろい! 「伊丹十三」 という人の真の教養深さと真のIQの高さというものを感じさせてくれる、優れたユーモアとセンスに脱帽することしきりです。


 
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