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【この本!】 2009.12.21 (Mon)

『砂の器』づくし

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 '09年12月21日は 「松本清張生誕100年」 ということで、『砂の器』 原作を読みました。
 映画やTVドラマですでに何度となく見ていたので、ストーリーはもうおなじみ (ネタバレ済みの推理小説はさすがに苦しかった・・・)。


 ♯♯ 小説版 ('60~61読売新聞)♯♯
 今まで 「清張といえばおっさん小説」 と食わず嫌いでいたのですが、やっぱり昭和のおっさんくさかった (ぼくは清張派じゃなくて乱歩・横溝派だし)。 ただそのへんは、当時の 「今」 を切り取る大衆作家の 宿命 であると言えます。 通俗的と揶揄されながらも、常に弱者の目線から現実社会のひずみに光を当ててきた。 清張には普遍・古典性などハナから意識になかったのでしょう。

 原作は 「東北弁のカメダ」 という言語学上の謎解きがメインで、映画版の見せ場である 「親子の流浪」 はほんの数行。 そこを拾いあげて、ガッツリ映像化しようとひらめいた脚本&プロデューサーの橋本忍大先生がさすがというべきでした。


 ♯♯ 映画版 ('74松竹)♯♯
 その映画版は、監督野村芳太郎、脚本橋本忍・山田洋次・・・最高の映画職人がそろった娯楽映画のカガミ。 清張をして 「原作を超えた」 と言わしめたのは有名なエピソードです。
 重い社会派テーマを扱ってこそいますが、やはりこれは大衆向けサスペンス (真の社会派なら、現実社会が1996年まで問題を放置していないはず!)。 美しくも過酷な遍路の映像詩など 日本人好みの 「泣かせ」 の仕掛けには、分かっていても何度でも泣かされます。
 (以下ネタバレ・・・) 何といってもラスト、名優・加藤嘉の嗚咽混じりの叫び! 悲痛きわまる一世一代の名演に、見ているほうも胸をかきむしる思いでした。 三木謙吉役の緒形拳さんも、本当はこの本浦千代吉役をやりたかったとか。

 いたずらな名作崇拝にはくみしませんが、やはり日本映画の中でも最良質の一本。多くの人がこの作品を愛してやまないのも分かります。(…ちなみにこのウェットぐあい、欧米ではまったく受けなかったが、中国ほかアジア圏では日本同様大ヒットしたとか。)


 ♯♯ TVドラマ版 ('04TBS)♯♯
 SMAP中居正広さんを主役にすえて、映画版をリメイク (橋本・山田の脚本を潤色したとクレジットされていた)。
 和賀英良役の中居くんは、なかなかの力演でした。日ごと追いつめられ、罪の意識にさいなまれていく者の震えんばかりの恐怖心。 『金八先生』 出身・福澤監督の熱血演出も、らしさが出ていた。
 ただ、新たに再設定された物語最大のキーワード 「本浦千代吉の忌まわしき過去の秘密」 は、スケール小っちゃかったなぁ。 ぼくは 「元連合赤軍」 くらいを想像していたので、ここで一気に冷めてしまった。(演じるのが原田芳雄さんなら、そのくらい想像するでしょ!) 社会派ネタに踏み込めなかった製作者と脚本家の弱腰が、じつに悔やまれます。

 でも音楽は、ドラマ版のほうがずっといい。 千住明さんの新しいテーマ曲 『宿命』 は洗練。 映画版は野暮ったい。
 余談ですが、このふたつの 『宿命』 を聴いていると、『ドラクエ7』 の旅の音楽とゴッチャになって仕方ありません。悲しき放浪のムードも似てるし・・・。

 YouTube検索 『ドラクエ7 失われた世界』  『砂の器 宿命』



 ・・・あと、昔レンタルで「田中邦衛・佐藤浩市主演」 版を間違えて借りてしまったことがあるのですが、あまり記憶に残っていません。間違えたショックで見なかったのかも。


 清張作品が伝える、今まだ湯気がのこる昭和の筆致。 年齢や時代との距離感で人それぞれ共感の温度に差があると思います。 やがて時代が進んで文化が熟成 (あるいは劣化?) した時、昭和を知らない人々が 「清張という時代」 をどう受け止めるか、客観的な評価を知りたいものです。

 
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