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【この本!】 2006.09.14 (Thu)

シェイクスピアの悪役ツートップ

 LOVE悪役ランキング第1位. イアーゴー (シェイクスピア『オセロー』)


 シェイクスピアの4大悲劇 『オセロー』に登場する大悪役イアーゴーが好きでたまりません。
 主君オセローとその妻デズデモーナを破滅に追いやる、悪がしこい策士。一番言いたいことはあえて口ごもり、相手の興味を誘ってから引きずりこむ頭脳的な話術。サイフの開かせ方も巧妙。サギ師ならバイブルにしたい手口だ。
 イアーゴーあっての『オセロー』。主役夫妻を完全に食っているのは誰もが認めるところ。悪に理由などない。世界の悪役界をリードする不世出の天才スターです。


 イアーゴーが助演男優賞なら、リチャード3世(『同』)は主演賞だろう。
 イギリス王室を二分した「ばら戦争」末期、邪魔者を容赦なく葬って王位を奪った(とされる)実在の野心家がモデル。自身の悪業を冷静に見つめ、皮肉たっぷりに笑う自虐的な道化っぷり。実にイヤラシイ悪役だ。
 そして悪役といえば、みじめな滅びざまも求められる重要な素質のひとつだが、

 「馬をくれ、代わりに国をくれてやる (A horse! A horse! My kingdom for a horse!)」

 は、悪役なら一度は言ってから滅んでみたい名ゼリフだ。
 なお、作中では醜い容貌に描かれているが、実際はそうでもなかったらしい。しかし醜く想像されるのも、悪役冥利に尽きるというものだろう。


 ところで、この両雄を追うグループで惜しかったのが、『リア王』エドマンド 『タイタス・アンドロニカス』アーロン。ともに優秀な陰謀家なのだが、それぞれのインパクトある物語に埋もれ、やや小粒に終わってしまった。
 ただアーロンのラストシーンはいい。この醜く冷酷な人殺しにも子供ができ、それを愛し育てるという人生の皮肉。 同じ「悪との決別」でも悪役ファンの期待を裏切り、泣いて改心した軟弱者エドマンドに比べ、重い十字架を背負った男の逆説的な劫罰を感じさせる。なまじ大悪役には出来ない繊細な芸だ。


 ――古来日本で悪役といえば、仏や人の道に背くか、庶民から見た権力者くらい。一方シェイクスピアやゲーテは人間心理の闇を否定せず、堂々と受け入れて魅力的な人物像を生みだした。それこそ西洋ルネッサンスの原動力と言えるだろう。
 悪の華にあこがれるぼくにとって、シェイクスピア(1564-1616)の「人殺しいろいろ」ぶりは最高の教科書なんです。

 
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