【アカデミー賞全作品】 2014.04.23 (Wed)
『我等の生涯の最良の年 (1946米)』

≪感想≫
ちょっとしたきっかけで喜怒哀楽が変わる、人間生活の機微の描写はさすがに上手いです。
軍服を脱いだ途端に平凡な男に戻ってしまうフレッドと、それを一瞬で見抜く妻マリーの表情。 大量復員で仕事のイスは奪い奪われ(*)、国の英雄も企業にとっては宣伝材料でしかない現実。そして生活力のない色男にほれる優等生の娘・・・。
今回(2014年)はこの生活力のない、ちっぽけなプライドばかりで爆弾落とすことしか能のないフレッドに最後の最後まで!共感できなかったのがマイナス。まぁそういう 「戦争の英雄」 も多かっただろうから、それも含めての応援歌か。
(*)機上から見える、空港にびっしりと並ぶ用済み戦闘機が暗示的。この様子じゃ軍需産業は早く次の「消費」がしたくてたまらないだろうな、と背筋が寒くなった。終盤にまた出てきたので驚いた。
オスカー度/★★★
満足度/★★★ (今回、若い頃ほど感動はしなかったけど、やはり良心的な秀作なので。)
『我等の生涯の最良の年 (1946米)』
監督/ウィリアム・ワイラー
主演/フレドリック・マーチ (アル・スティーブンソン)
ダナ・アンドリュース (フレッド・デリー)
ハロルド・ラッセル (ホーマー・パリッシュ)
マーナ・ロイ (アルの妻ミリー)
テレサ・ライト (アルの娘ペギー)
ヴァージニア・メイヨ (フレッドの妻マリー)
≪あらすじ≫
第2次大戦が終結し、故郷に復員したアル、フレッド、ホーマーの3人。しかしフレッドと新妻マリーの心は離れ、戦場で両腕を失ったホーマーは家族や恋人を悲しませる。そして幸せな家庭におさまったアルですら、社会の急激な変化に直面する。
≪解説≫
戦勝国アメリカにも例外はない戦争の傷跡。さまざまな問題を抱えながらも、希望を胸に生きる帰還兵たちを描いた秀作ヒューマン・ドラマ。困難な状況でも、明るく希望を忘れないアメリカの国民性がよく表れている。
娘役のT・ライトは、終戦直後の日本でアイドル的人気を博した。同じワイラー監督の'42年作品賞 『ミニヴァー夫人』 で助演女優賞を受賞している。
≪受賞≫
アカデミー作品、監督、主演男優(F・マーチ)、助演男優(H・ラッセル)、脚色、音楽、編集賞の計7部門を受賞。(候補9部門中) またH・ラッセルに特別賞(Special Award=のちの「名誉賞Honorary Award」)。
(他の作品賞候補 『素晴らしき哉、人生!』 『小鹿物語』 『ヘンリー5世』 『剃刀の刃』)
実際に腕を失いながらも義手で熱演したH・ラッセルが、助演賞のほか特別賞も受賞。演技経験は初めてだったそうだ。あの「窓ガラス」のシーンは心に突き刺さるものがあったし、ラストの結婚式も本当に素晴らしかった。
監督賞ワイラー(『ミニヴァー夫人('42)』) と主演賞F・マーチ(『ジーキル博士とハイド('31)』)は2度目の受賞。
国内興行収入1000万ドル越えの大ヒットを記録。アカデミー作品賞としては別格作 『風と共に去りぬ ('39)』 以来で、この大台に乗るようになるのは、授賞式のTV中継が始まる 『地上最大のショウ ('52)』 あたりから。(ちなみに『風…』はさらに1ケタ多く稼いでいる。)
『THE BEST YEARS OF OUR LIVES』
製作/サミュエル・ゴールドウィン (↓ 以下、ハリウッド映画史上の大・王道のビッグネーム!)
監督/ウィリアム・ワイラー
脚本/ロバート・E・シャーウッド
原作/マッキンレー・カンター
撮影/グレッグ・トーランド
音楽/ヒューゴー・フリードホーファー
編集/ダニエル・マンデール
ゴールドウィン・プロ/170分
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「戦闘機は家庭用品にリサイクルされる」と平和の到来をアピールしていますが、実際の歴史は爆弾を落とす先がよそに移っただけでした。
はじめて投稿させていただきます。
わたしもこの映画が心に残っています。
また、スクラップヤードのシーンも強く
印象に残りました。
記事を読んで、傷ついた心と体を正面から取り上げた良心的な
映画だと感じたのを思い出しましたよ。
これからも、時々アーカイブを覗かせていただきます。
よろしくお願いいたします。