【アカデミー賞全作品】 2015.01.12 (Mon)
『マイ・フェア・レディ (1964米)』

≪感想≫
人気の高い名作だが、20歳すぎて初めて観たぼくにはもう合わなかった。こういう作品はもっと早くに観るべき。
もっと早くといえば、主演の両優、あと20年若いころにやってほしかった(有名なオードリーのスチール写真が観る気をそいでいたのです)。演技面でもオードリーはわざとらしいし、ハリソンの舞台そのままのよく通った発声も、映画では一本調子で芸がないと映る。そして、家庭的で小ぢんまりとまとめる 『サザエさん』 ふうのキューカー演出、手堅いとは言えるが3時間 『サザエさん』 はしんどい。しかもミュージカル映画革命『ウェストサイド物語('61)』の後だから、いかにも旧来型の作りは時代の逆行・退行として映る。
(有名な裏話である)オードリーの歌が吹き替えなのは、もはやこの際どうでもいい。とにかく出会いが遅すぎた。アラばかり目が行ってしまうのは、返す返すも残念。
後のTVドラマ「名探偵シャーロック・ホームズ」役で有名な、ジェレミー・ブレッドの若い頃を見られたのはうれしかった。
オスカー度/★★★
満足度/★☆☆
『マイ・フェア・レディ (1964米)』
監督/ジョージ・キューカー
主演/オードリー・ヘップバーン (イライザ・ドリトル)
レックス・ハリソン (ヘンリー・ヒギンズ博士)
ウィルフリッド・ハイド・ホワイト (ピカリング大佐)
ジェレミー・ブレット (フレディ)
スタンリー・ホロウェイ (イライザの父アルフレッド・ドリトル)
≪あらすじ≫
英語の乱れを憂う言語学者のヒギンズ博士は、友人のピカリング大佐との賭けで、下品な花売り娘イライザを再教育して立派なレディに仕立ててみせると言い放つ。はじめは意地を張って反発しあうイライザとヒギンズだったが、やがてイライザが真のレディに成長したとき、ふたりの間に愛が芽生える。
≪解説≫
大ヒットしたブロードウェイ・ミュージカルを映画化した名作シンデレラ・ストーリー。
(以下、有名なエピソード・・・) もともと原作舞台のイライザ役は新進女優ジュリー・アンドリュースの当たり役だったが、映画化に際して知名度の高いヘップバーンを起用。興行は成功を収めるものの、ヘップバーンの歌はすべて吹き替えだったこと、かつ当たり役を奪われたアンドリュースへの同情から、ヘップバーンはオスカーにノミネートすらされなかった。そして主演女優賞を獲ったのが、ディズニー社の 『メリー・ポピンズ』 に抜擢されたアンドリュースだった・・・という運命の皮肉。
なお、吹き替えの歌手マーニ・ニクソンは、『王様と私』 『南太平洋』 『ウェストサイド物語』 といった名だたる作品でもヒロインの歌を吹き替えている。『サウンド・オブ・ミュージック』 では修道女役で顔出し出演、アンドリュースとのからみで 『♪マリア』 を歌う。
'07年時点でまだご健在。名誉賞くらいあげたれよ。(←その後再評価されるようになったそうで、「3人目のフェア・レディ」として語る好事家も。)
≪受賞≫
アカデミー作品、監督、主演男優(R・ハリソン)、撮影、美術、編曲、衣装、音響賞の計8部門受賞。(全12部門候補中)
(他の作品賞候補 『メリー・ポピンズ』 『その男ゾルバ』 『博士の異常な愛情』 『ベケット』)
やはりヘップバーンとアンドリュース、ふたりの「フェア・レディ」の因縁に注目が集まった。その結果は上のとおり、『メリー・ポピンズ』のアンドリュースが主演女優賞を受賞。ノミネートすらされず、ひとりカヤの外だったヘップバーンは作品の勝利をけなげに喜んでみせたが、さぞ複雑な心境だったことだろう。
本作8/12勝、『ポピンズ』5/13勝と、作品どうしも事実上の一騎打ちだった。
『MY FAIR LADY』
製作/ジャック・L・ワーナー
監督/ジョージ・キューカー
脚本/アラン・ジェイ・ラーナー
原作/バーナード・ショウ 『ピグマリオン』
撮影/ハリー・ストラドリング
作曲/フレデリック・ロー、編曲/アンドレ・プレヴィン
音響/ワーナー社サウンド部 ジョージ・R・グローヴス
美術/ジーン・アレン、セシル・ビートン、装置/ジョージ・ジェームス・ホプキンス
衣装/セシル・ビートン
ワーナー/170分
【続き・・・】
◆主演男優賞R・ハリソン、主演女優賞J・アンドリュース、助演男優賞ピーター・ユスチノフ(『トプカピ』)の3イギリス人、助演女優賞には露=仏のリラ・ケドロヴァ(『その男ゾルバ』 )と、演技4賞はすべてアメリカ人以外の手に(2007年もそうだった。)。そもそも候補者の半分が外国人俳優だった。
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