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【アカデミー賞全作品】 2015.03.05 (Thu)

『夜の大捜査線 (1967米)』

第40回アカデミー作品賞~~キング牧師の魂に届け・・・

40 夜の大捜査線

 ≪感想≫
 人種差別という深刻な社会問題をテーマとしながら、推理サスペンスの娯楽性にも富んでいて、最後まで目が離せない面白さ。ポワチエの静かな個性と、スタイガーの激しい個性の対比も強烈に効いている。
 ぶすぶすと黒煙をあげる男たちの眼光・・・。文字通り「ヒート」という言葉が似合うが、「大捜査」という邦題はイメージが違うぞ。これでだいぶ損をしている。(さては水野晴郎か??)


 主演のふたりがノミネートされたが、より深い人物造形でオスカーにふさわしいのはやはりスタイガー=ギレスピー署長のほうだった。

 ・・・終盤、黒人刑事の有能ぶりにすっかり参った白人署長は、相手がよそ者だからもあって自身の孤独を打ち明ける。「毎晩、酒をあおるだけ。誰もこの家を訪ねてくれない」
 だがそこで黒人刑事は媚びない。「(自分も独り身で寂しいが) あんたほどではない」
 「・・・!」
 見る見る顔色が変わる署長 「・・・調子に乗るなよ、黒ン坊。憐れみはごめんだ!」 ギリギリで保ってきた本音と建前の均衡が破れた瞬間。自分たちはそうやって、さんざん黒人をこきおろしてきたというのに。
 それでも署長は、もはや自身の差別思想に道理がないことも分かっている。アメリカ公民権法の成立は本作の3年前(1964)。ラストシーンの握手と笑顔は、意外とさっぱりすがすがしい。

 (キング牧師からも名指し批判された)人種差別主義の急先鋒であった実在のアラバマ州知事ジョージ・ウォレスも、晩年は自身の思想と政策を全面謝罪した。
 この小さな男とて、一朝一夕で人間が変わるものではないだろう。自分勝手な居心地の良さに甘んじるうち、やがては彼ら自身が見放され、いつの間にか自分の居場所を失い、孤独にまみれて敗北していくだけ。 原作ラストの署長の態度にはもっと戸惑いがあったそうだが、あのスタイガーの屈託ない笑顔は完全な敗北の瞬間だ。「対等な男どうしの」 という意見には異議あり。
 人種や民族への差別・偏見・憎悪に、大義や勝利などない。

 オスカー度/★★☆(面白い作品だが、映画史上から見た最優秀作は『俺たち…』『卒業』のほう)
    満足度/★★★



 『夜の大捜査線 (1967米)』

 監督/ノーマン・ジュイソン
 主演/シドニー・ポワチエ (ヴァジル・ティップス刑事)
      ロッド・スタイガー (ビル・ギレスピー署長)
      ウォーレン・オーツ (サム・ウッド巡査)
      リー・グラント (コルバート夫人)
      ラリー・ゲイツ (富豪エンディコット)

 ≪あらすじ≫
 休暇でミシシッピの田舎町に立ち寄った北部フィラデルフィアの黒人刑事バジル。ところが町で殺人事件が起こり、彼は黒人ゆえに逮捕されてしまう。まもなく彼の容疑は晴らされるが、署長のギレスピーら町民たちは、バジルの優れた捜査手腕にもかかわらず彼を偏見の目で見下すのだった。

 ≪解説≫
 人種差別にさらされながら、難事件を解決していく黒人刑事の孤独な戦いを描く社会派サスペンス。「坊やではない、ミスター・ティップスと呼べ」と毅然とふるまうポワチエの当たり役となり、より娯楽性を増してシリーズ化された。



 ≪受賞≫
 アカデミー作品、主演男優(R・スタイガー)、脚色、編集、音響賞の計5部門受賞。(候補7部門中)
 (他の作品賞候補 『俺たちに明日はない』 『卒業』 『招かれざる客』 『ドリトル先生不思議な旅』)

 授賞式直前の'68年4月4日にキング牧師が暗殺され、同8日から10日に延期されての開幕。神妙な雰囲気の中、黒人差別を問う本作が作品賞に選ばれたのは、偶然とはいえ因縁を感じさせる。
 '63年 『野のユリ』 でアフリカ系初の主演男優賞を獲得したポワチエ。この年も2つめのオスカーが期待されたが、同年の 『招かれざる客』 『いつも心に太陽を』 でも名演を見せたため、票が分かれてノミネートすらされなかった。

 また 『俺たち…』 『卒業』 と、この頃から作品賞候補に“ニューシネマ”系の作品が挙がるようになる。現代人から見ればこれらのほうが重要なのだが、当時はまだこれら反体制的な作風を褒賞するだけの準備ができていなかった。



 『IN THE HEAT OF THE NIGHT』

 製作/ウォルター・ミリッシュ
 監督/ノーマン・ジュイソン
 脚本/スターリング・シリファント
 原作/ジョン・D・ボール
 撮影/ハスケル・ウェクスラー
 音楽/クインシー・ジョーンズ
 主題歌/レイ・チャールズ
 編集/ハル・アシュビー
 音響/サミュエル・ゴールドウィン社サウンド部

 ミリッシュ=ユナイト/105分
 

【続き・・・】

 
 ◆「サスペンスの巨匠」 アルフレッド・ヒッチコック監督に、多大な業績を残した映画製作者に贈られるアーヴィング・G・サルバーグ特別賞。 渡米第1作 『レベッカ』(D・O・セルズニック製作)は作品賞を得たものの、以後は 「娯楽映画の職人監督」 として芸術面では軽んじられてきたが、ようやく公式に認められたかたちに。
 以後同賞は、「オスカーとは無縁だった巨匠への穴埋め・残念賞」 の性格を帯びていく。(例/『オズの魔法使』製作・『哀愁』『若草物語』監督などのマーヴィン・ルロイ監督('75)、『007』シリーズを生んだ製作者アルバート・R・ブロッコリ('81)、『カラー・パープル』で11部門全敗した翌'86年のS・スピルバーグ監督、『スター・ウォーズ』のG・ルーカス監督('91)などなど。)

 ◆本作で脚本賞のS・シリファントは、このあとあのブルース・リーの武術道場に入門。(今では伝説のTVドラマ)『グリーン・ホーネット』が早々に打ち切られてくすぶっていたリーを何とか売り出そうと、自ら手がけるTVドラマに熱心に出演させていたそうだ。
 ◆また編集賞のハル・アシュビーは、のち監督として 『シャンプー』 『帰郷』 『チャンス』 など'70年代に佳作を残した。
 ◆この年から撮影・美術・衣装賞にあった「カラー」「モノクロ」部門をひとつに統合。

 
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