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【アカデミー賞全作品】 2015.07.09 (Thu)

『カッコーの巣の上で (1975米)』

第48回アカデミー作品賞~~世の中、まともなのは自分だけ

48 カッコーの巣の上で

 ≪感想≫
 とてもむずかしい映画でした。単純に「権力vs反体制」で片付けてよいものかと、しばし思案。
 「患者たちを救うため」と言いきる婦長は、患者たちの反発にもほとんどたじろがず、確信を持って対応します。彼女が握る権力や冷酷さ以上に、その確信こそが怖い。
 自分が信じる道、何気ない生き方・・・。立場や見方を変えれば、誰もが“ラチェッド婦長”かもしれませんから。自分は気付いていないだけかも。彼女自身がそうであるように。

 (以下ラストに言及・・・)主人公が最後まで病院を脱走しなかったのは、「帰属本能の呪縛」ゆえと解釈しています(例えば、戦争はイヤだけど国籍の呪縛から逃れられず出征する、イジメはイヤだけど学校の呪縛から逃れられず自ら命を絶つ、など)。それを克服したのが、当時ヒッピー思想の理想・象徴とされたアメリカ原住民(インディアン)出身のチーフ。ラストの「希望に満ちた輝く朝日」は楽観的すぎるという意見もありましたが、これら呪縛からの解放で終わらないことにはどうにも救われない、という作り手の思いも分からなくもありません。

 オスカー度/★★★
    満足度/★★★



 『カッコーの巣の上で (1975米)』

 監督/ミロス・フォアマン
 主演/ジャック・ニコルソン (ランドール・マクマーフィ)
      ルイーズ・フレッチャー (ミルドレッド・ラチェッド婦長)
      ウィル・サンプソン (“チーフ”)
      シドニー・ラジック (チェズウィック)
      ブラッド・ドゥリフ (ビリー)

 ≪あらすじ≫
 刑務所から精神病院に移されたマクマーフィという男。重労働がイヤだから病を装っているのか、それとも本当に病気なのかは、医師もはかりかねていた。
 しかし彼を受け入れた病棟は、ラチェッド婦長らに徹底的に管理され、看護の名のもとに人権すら奪われた、精神の牢獄に他ならなかった。マクマーフィは患者たちを煽りたて、事あるごとに反抗してみせるのだが・・・。

 ≪解説≫
 精神病院を舞台に、人間の尊厳を求めて管理社会に抵抗する男を描いた社会派ドラマの秀作。若者による反体制運動が盛り上がった時代、そのシンボルとしてベストセラーになった小説を映画化。
 L・フレッチャーが演じた冷酷な看護師は、ハリウッド映画史上でも指折りの悪役として語り継がれている。(アメリカ映画協会AFIが選ぶ悪役第5位)

 若いころは製作者でもあった俳優マイケル・ダグラス。父の名優カーク・ダグラスが惚れこんだ企画を引き継ぎ、名プロデューサーのゼインツと組んでこの難作を完成させた。すでに舞台化していた父カークは、この映画版でも主人公マクマーフィを演じたいと意気込んでいたので、起用されず大いにガッカリしたという。(息子いわく「パパはもう年だから」 とか。)

 なおタイトルの由来は、子育てをしないカッコーを歌ったマザーグースの一節から、単に「愛のない環境」の比喩ではないだろうか。「精神病院の隠語」説は、本作のヒット以後ではないかと思う。詳しいかた教えてください。(追記…中世ヨーロッパでは精神病患者にカッコウの焼灰を飲ませたりクチバシを身につけさせたりの“治療法”があったらしい。何らかの謂(い)われは古くからあるみたいです。)



 ≪受賞≫
 アカデミー作品、監督、主演男優(J・ニコルソン)、主演女優(L・フレッチャー)、脚色賞の計5部門受賞。(候補9部門中)
 (他の作品賞候補 『バリー・リンドン』 『JAWS/ジョーズ』 『狼たちの午後』 『ナッシュビル』)

 これら主要5部門の独占は、『或る夜の出来事('34)』 『羊たちの沈黙('91)』 と並ぶ快挙。
 J・ニコルソンと製作者ゼインツ、それぞれ計3度の受賞を果たすことになるふたりの名手に、まず最初のオスカー。(ニコルソン 『愛と追憶の日々('83=助演賞)』 『恋愛小説家('97)』、ゼインツ 『アマデウス('84)』 『イングリッシュ・ペイシェント('96)』作品賞。・・・ちなみにフォアマン監督も『アマデウス』で2度目の監督賞。)
 授賞式のハイライトは主演女優賞フレッチャーのスピーチ。「皆さん、私を憎んでくれてありがとう」と笑わせた後で、ろうあの両親に向けて手話で感謝を伝える。歴史的大悪役のあふれ出す涙が多くの人の胸を打った。



 『ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST』

 製作/ソール・ゼインツ、マイケル・ダグラス
 監督/ミロス・フォアマン
 脚本/ローレンス・ホーベン、ポー・ゴールドマン
 原作/ケン・キージー
 撮影/ハスケル・ウェクスラー
 音楽/ジャック・ニッチェ

 ファンタジー・フィルムズ=ユナイト/133分
 

【続き・・・】


 ◆撮影賞は 『バリー・リンドン』 のジョン・オルコット。18世紀の雰囲気を再現するため、ロウソクの灯りだけで撮影した映像が実に見事だった。彼は本作のほか 『2001年宇宙の旅』 『時計じかけのオレンジ』 『シャイニング』 と、鬼才スタンリー・キューブリック監督の右腕として素晴らしい映像を残している。(なお同作は撮影ほか美術、衣装、歌曲の4賞受賞。)
 ◆黒澤明監督 『デルス・ウザーラ (ソ連)』 に外国語映画賞。完璧主義でカネのかかる黒澤映画はもう日本では撮らせてもらえず、手を差し伸べたソビエト連邦の全面協力で制作された全編ロシア語の作品。黒澤は'51年 『羅生門』 以来2度目の外国語映画賞('51年当時は同賞がまだなく、「名誉賞」名義での受賞)
 ◆('72年『ゴッドファーザー』の)全米興行収入記録を塗り替えた最大の話題作 『ジョーズ』 は編集、作曲、音響の3賞受賞。(・・・今思うと黒澤とキューブリック、そしてこのふたりを私淑する新鋭スティーヴン・スピルバーグ。時代を受け継いでいく新旧「映像の魔術師」の交錯が印象的だなあ。)


 
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19:42  |  アカデミー賞全作品  |  コメント(2)  |  EDIT  |  上へ↑

*Comment

■Re: 『カッコーの巣の上で (1975米)』

はじめまして!
この映画は30数年前の中学生の頃に見ました。
見終わった後、なんともいえない気分になったのを憶えています。
子供ながらに色々考えさせられましたね…
シャクリマンT |  2015.07.13(月) 21:13 |  URL |  【コメント編集】

■Re: 『カッコーの巣の上で (1975米)』

アカデミー賞のこのカテゴリーで、
映画ばかり観ていた頃のなつかしい作品群を
楽しく振り返っています。
「イージーライダー」からジャックの映画は必ず見ていましたね。
そしてキューブリック「バリー・リンドン」大好きです!
読んでいる途中ですが、嬉しくてついコメントしました。
クラッシュのマットがデイモンになっていたような?
私はあの映画のディロンはとてもよかったと思っています。
souboku |  2017.12.04(月) 09:26 |  URL |  【コメント編集】

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