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【アカデミー賞全作品】 2016.05.17 (Tue)

『シンドラーのリスト (1993米)』

第66回アカデミー作品賞~~“映像作家” スピルバーグの本気

66 シンドラーのリスト

 ≪感想(一部ラストに言及)≫
 後の『プライベート・ライアン('98)』もそうですが、本気になった“映像作家”スピルバーグの力量にすっかり参りました。ただ「派手な特撮を使う娯楽作家」ではなく、“映像の魔術師”ヒッチコックやキューブリックの後継者として世に出たことを再認識。
 人の死を、ここまでリアルかつ残酷・峻厳にとらえた映像演出はそうそうない。実際に当時の現場に放り込まれたようで、本当に怖ろしかった。
 ただし『P・R』同様、ドラマ部分はどうにもおセンチ過ぎ。妙にヒューマンぶって、せっかくの緊張がだらけてしまう。特にラストの主人公の涙。取ってつけたように「いい人」にしなくても・・・。それも含めてスピルバーグなんでしょう。
 「金儲けのためならナチスにも協力するけど、やっぱりかわいそうだから」――俗物だけど当たり前の良心も持っている、そういう清濁あわせ持つ人物像のままでよかったと思う。

 オスカー度/★★★
    満足度/★★★



 『シンドラーのリスト (1993米)』

 監督/スティーヴン・スピルバーグ
 主演/リーアム・ニーソン (オスカー・シンドラー)
      レイフ・ファインズ (アーモン・ゲート所長)
      ベン・キングスレー (ユダヤ人会計士イツァーク・シュテルン)
      キャロライン・グッドール (妻エミーリエ・シンドラー)
      ジョナサン・セガール (ペファーベルグ)

 ≪あらすじ≫
 ユダヤ人迫害が進むナチ占領下のポーランド。巧みにナチ幹部に近づいた実業家オスカー・シンドラーは、食器工場の払い下げを取り付け、低賃金のユダヤ人労働者を雇って巨万の富を築く。
 ところが突然ゲットーが閉鎖され、強制収容所の所長ゲートにより、ユダヤ人たちは無差別に殺されていく。貴重な労働者の損失と、非人道的な殺戮に内なる憤りを覚えたシンドラーは、私設の収容所をつくるため、ユダヤ人の名簿を作成するのだった。

 ≪解説≫
 構想から10年、ユダヤの血をひくスピルバーグが商業性ぬきで製作した力作。映画化実現の条件として作ったのが同年歴史的ヒットを記録した 『ジュラシック・パーク』であり、結果的にはヒットした本作と併せて名実ともに「スピルバーグ・イヤー」となった。(これ以後、売れる娯楽作と本当に撮りたい文芸作を並行させる作り方は、時間と金をかけない「早撮り」だからこそできるスピルバーグのスタイルになった。)

 シンドラー以下、多くが実在の人物の実話。シンドラーについてはいささか美化が過ぎるとの声があり、このあと実像に迫るドキュメンタリーが多く作られた。ただ、放蕩な素顔や救出の真意の是非、露骨なワイロや取り入りなど泥臭いやり方があったとしても、善意を 「実行」 したその功績はおとしめられるものではないだろう。(一方のゲート所長の蛮行は、映画以上だったと知って絶句した。)



 ≪受賞≫
 アカデミー作品、監督、脚色、撮影、作曲、美術、編集賞の計7部門受賞。(候補12部門中)
 (他の作品賞候補 『ピアノ・レッスン』 『日の名残り』 『父の祈りを』 『逃亡者』)

 '85年、歴代ワーストの「候補11部門全敗」に泣いた 『カラー・パープル』 の雪辱をここに果たす。

 本作からポーランド人キャメラマンのJ・カミンスキー(撮影賞)を起用。深く風格のある映像で、スピルバーグの「売れっ子から巨匠へ」の評価確立に大きく貢献している。(ちなみに元妻はこの年の主演女優賞ホリー・ハンター。)
 編集賞のM・カーンも、(デジタルではなく)いまだにフィルムで撮影しているスピルバーグを長く支える名職人。
 そしてスピルバーグと言えばおなじみ、音楽のJ・ウィリアムズに5つめのオスカー。(たしかノミネート40数回は個人最多。未確認。)

 なお同年の 『ジュラシック・パーク』 は視覚効果、音響、音響効果編集賞と、技術系3部門を受賞。(カミンスキーは参加していないが、カーンとウィリアムズはもちろん参加。)



 『SCHINDLER'S LIST』

 製作/スティーヴン・スピルバーグ、ジェラルド・R・モーレン 、ブランコ・ラスティグ
 監督/スティーヴン・スピルバーグ
 脚本/スティーヴン・ザイリアン
 原作/トーマス・ケネアリー
 撮影/ヤヌス・カミンスキー
 音楽/ジョン・ウィリアムズ
 ヴァイオリン独奏/イツァーク・パールマン
 美術/アラン・スタルスキ
 編集/マイケル・カーン

 ユニヴァーサル/195分
 

【続き・・・】

 

 ◆主演男優賞は 『フィラデルフィア』 のトム・ハンクス。HIV患者をシリアスに演じ、それまでの軽いコメディ俳優から本格派俳優への脱皮を果たした。翌年 『フォレスト・ガンプ』 で連覇。
 ◆主演女優賞 『ピアノ・レッスン』 のホリー・ハンターも言葉を話せないヒロインを熱演し、彼女もまた軽量級のイメージをくつがえした。
 彼女は 『ザ・ファーム/法律事務所』 でも助演賞候補に。なお、エマ・トンプソンも 『日の名残り』で主演賞候補、『父の祈りを』 で助演賞候補になっており、Wノミネートがふたりも輩出。
 ◆一番のサプライズは、『ピアノ・レッスン』 でヒロインの娘を演じたアナ・パキン11歳への助演女優賞。11歳の受賞は 『ペーパームーン』 テイタム・オニール10歳に次ぐ史上2番目の若さ。
 ◆助演男優賞は名作TVドラマの映画化 『逃亡者』 のトミー・リー・ジョーンズ。無実の主人公を執拗に追う鬼警部を力演し、本作で人気俳優の仲間入りを果たした。

 ◆外国語映画賞の候補には、チェン・カイコー監督 『さらば、わが愛/覇王別姫(香港)』、トラン・アン・ユン監督 『青いパパイヤの香り(ベトナム)』、アン・リー監督 『ウェディング・バンケット(台湾)』 と、アジアの名匠による秀作が並んだ。・・・が、受賞はスペインの大穴 『ベルエポック』という作品。

 ◆過去6度候補で無冠の女優デボラ・カーに名誉賞。作品賞『地上より永遠に('53)』の時は『ローマの休日』で鮮烈デビューのA・ヘップバーンに、『王様と私('56)』の時は不倫スキャンダルから劇的復帰した『追想』 I・バーグマンに敗れるなど相手が悪すぎた不運が続き、「オスカーの偉大な敗者」と呼ばれている。


 
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