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【この本!】 2010.02.25 (Thu)

江戸川乱歩のエログロ・ベスト3!

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  俳優の寺島しのぶさんが、映画 『キャタピラー』 でベルリン映画祭の銀熊賞(女優賞)を受賞したそうですね。
 原作は江戸川乱歩初期の傑作短編 『芋虫』 。 戦争で四肢と五感を失い 「芋虫」 同然になってしまった男と、その妻の壮絶かつ倒錯的な愛憎劇。

 映画は設定を太平洋戦争下に移したことで、昭和初期のデカダン・幻想的な乱歩ムードが台無しにならないか…と思っていたのですが、なるほど若松孝二監督は愚かな戦争とその時代への批判を前面に押し出したわけですね。
 歴史や思想をからめるのは乱歩の本意・作品の本質ではありませんが、やるのならば徹底的にやっていただきたい。久しぶりに映画を見たくなりました。日本公開の8月15日が楽しみです。

 ・・・って、半年待たされるのかよ。
 しかたないので、リアル乱歩の輝かしき影、文学史上にどす黒い異彩を放つ 「エログロ」 作品ベスト3を選んでみました。吐き気止めを飲んでからどうぞお読みください。無理に読んでいただかなくても構いません。


 ≪ 第1位! 『蟲』 ≫
 1929(昭4)年 『改造』 短編 (正式な表記は新字体の 『虫』)
 想いを寄せる女性を殺してしまったストーカー男。死体を自宅の蔵に隠すが、美しかった肉体はみるみる腐りはじめていく・・・。
 「蟲」 とはウジ虫ではなく目に見えない微細な虫…と乱歩の註。腐敗の描写が微に入り細をうがつ。グロすぎ。
 しかし、最後はもう何がなんやら分からなくなって、「なんだっけなあ、なんだっけなあ」 と彷徨しはじめる主人公の呆惚・虚脱感。これが一番真に迫って怖ろしかった。


 ≪ 第2位! 『盲獣』 ≫
 1931~2(昭6~7)年 『朝日』 中編
 盲目の殺人鬼が繰り広げる 「触覚の芸術」 と 「鎌倉ハム」(!)の恐怖。これはエロい。活字だからエロい。そしてグロい。
 乱歩自身、「ひどい変態もの」「エログロ」「吐き気を催す」 と自作中でも一番の酷評だが、なんのなんの、変態もここまで究めつくすと もはや尊敬に値します。物書きとして最後まで自信を持てなかった乱歩先生のそういうところもカワイイ。


 ≪ 第3位! 『芋虫』 ≫
 1929(昭4)年 『新青年』 短編
 代表作 『人間椅子』 と並んで、乱歩作品の中でも五指に入る好きな作品。
 学生時代に乱歩全集を読破した頃は、怪異な肉塊をもてあそぶ人間の情欲・・・、そのおぞましさにただただ戦慄ばかりおぼえたものですが、いま読み返すとむしろ、忘れられた草莽に生きる人間の哀しさと滑稽さが浮かび上がってくる。
 夫に唯一残された純粋なふたつの目。妻の平凡で泣き虫な心根。乱歩の筆致からそういうありのままの人間の生態を見つけて、そこに人間の本質を見出そう・・・・かと思いましたが、いややっぱり違うと思いなおしました。
 黙っていても脂のようににじみ出る人間の醜さを、芋虫が這うように容赦なくなすりつけてこそ乱歩。 それは昭和初期 「エロ・グロ・ナンセンス」 の露悪趣味の世界であって、太平洋戦争下に移した「社会派・人間ドラマ」 映画版はやはり違う。 第一印象のとおり、原作とは別物として映画を見させていただきます。


 ・・・以上、落ち込んでいただけましたでしょうか?
 腹をくくってリアル乱歩と向き合うなら、創元推理文庫のぶ厚い 『江戸川乱歩集』 をおすすめします (上の写真)。『芋虫』 や 『人間椅子』 『パノラマ島奇譚』 『陰獣』 など代表作が3冊ぶん入って、値段は2冊ぶんの1000円弱。 乱歩が自作を振り返る 「自註自解」 も添えられており、これが楽しい。

 
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