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【日本映画】 2007.12.08 (Sat)

稲垣浩 『無法松の一生 (1943“阪妻”版)』

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 シリーズ宮川一夫④/稲垣浩監督 『無法松の一生 (1943年“阪妻”版)』


 すがすがしくて痛快な映画でした! 戦中に作られた、明治の男の一代記ですが、意外にもぜんぜん古くなかった。
 明治後期の福岡小倉を舞台に、ケンカっ早いが情に厚い車夫・松五郎と、名家の母子との交流を描いた人間ドラマの歴史的名作。

 バンツマこと阪東妻三郎演じる「無法松」のキャラクターが、実に人間味あふれる魅力。はじめは自分勝手に暴れまくりながら、ものの道理を諭されると素直に反省する様や、ケンカに負けても照れながら笑い飛ばす様は、軽やかで嫌みがありません。(そもそも無法なシーンは始めだけ)
 (リメイク三船版のような)西洋的でマッチョな男臭さではなく、無学を卑下しながらも権力には頓着しない、無邪気で素朴でやわらかいプレ近代人の、「竹を割ったような柳の木」の生きかた…といったところか。もやしっ子に育った名家の少年(子役時代の長門裕之さん)が、そんな痛快きわまる松五郎の人柄に触れ、「おじさん、えらいなぁ!」と目を輝かせる姿は、現代のわれわれの代弁でもあります。
 一方で、決して結ばれぬ運命にある夫人への想い、思春期を迎えて自分から離れていく少年とのすれ違い…、声高になることなく、つつましく紡がれるその後の物語も、切なくて深い余韻を残しました。

 そしてもちろん、若き日の大カメラマン宮川一夫の映像美も忘れがたい。人力車の車輪の挿入カットや、ラスト、祇園太鼓を乱れ打つ幻想的なシーンの、なんと洗練されていること! ただし宮川の自伝によれば、これら絶妙の構図や編集はすべて稲垣浩監督の綿密な絵コンテに従ったもので、自分は「配光のことだけを考えていればよかった」とのこと。今日いわれているように 宮川の手柄ばかりではなかったようです。しかしあらためて、陰・日なたの職人たちの総意によって映画は作られるのだと、深い感銘を受けました。


 『無法松の一生 (1943大映)』

 監督/稲垣浩
 脚本/伊丹万作
 撮影/宮川一夫
 出演/阪東妻三郎、園井恵子、沢村アキオ(長門裕之)

 戦中と戦後の2回、それぞれ日本の当局とGHQによりバッサリ検閲のハサミが入っているので、一部不自然な場面がある。(松五郎が夫人への想いを吐露する場面や、封建的に尽くす様などを削除。…しかしかえって押し付けがましくない、静かで深い感慨を生む効果に。)
 稲垣は雪辱を果たすため、'58年に三船敏郎主演でリメイク、ヴェネチア映画祭グランプリを獲得した。(こちらも観ましたが、あまり印象に残っていませぬ。)
 その巨匠稲垣を「最初の御亭主」と呼んで師事した、撮影監督・宮川一夫初期の代表作。


 

【続き・・・】

 
 運動会での徒競走のシーン、阪妻の走り方は子供のお遊戯みたいでヘンだが、愛すべき松五郎を象徴しているようで、とても印象に残っている。 現代人のように西洋式の走り方を習っていないだろうから、正しくはなくとも意外と間違っていないのではなかろうか。
 
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