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【日本映画】 2010.03.23 (Tue)

黒澤明 『隠し砦の三悪人…の雪姫』

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 シリーズ≪黒澤映画のヒロイン≫その1

  今2010年3月23日は、映画監督・黒澤明の生誕100周年記念日です。
 黒澤映画について語りたいことは山ほどありますが、 人気娯楽作 『隠し砦の三悪人』 ('58東宝)のヒロイン上原美佐さん・・・よりによって、素人同然の新人女優さんを真っ先に思い出してしまいました。

 勝気で肝のすわったヒロイン 「雪姫」 役。 戦に敗れ、敵領のど真ん中をいかに突破するか・・・という波乱万丈の冒険活劇。
 演じる上原さんは、たしか映画業界と関係があった良家のお嬢さん。何かの縁でたまたま黒澤監督に大大抜擢されたシンデレラ・ガールでした。

 ・・・が、その演技はまあ下手っぴです。
「いやじゃ!いやじゃ!」 の金切り声。あの 「いやじゃ!いやじゃ!」 は、この作品を見るたびに夢に出てきます。

 でも、その素人くさいぶっきらぼうな演技がツボ。 まだ世間知らずだけど一本筋の通った姫のりりしさと、みごとにマッチしているではないか!

 主君のためにわが身を犠牲にする家臣の 「忠義顔」 を、当の主君でありながら不快感もあらわに吐き捨てる…。 「いやじゃ!いやじゃ!」 は、未熟ながらも決して 「お飾りのお人形さん」 ではなく、彼女なりの理念や人格を持った一個の若者としての象徴的な叫び。 うんざりではすまされない戦争と抑圧から解放された戦後10数年目ならではの新鮮な価値観です。

 劇中、何人かが姫の人柄に打たれて死線を共にしますが (百姓コンビはずぅっと欲っ気だけ、だけどね)、熱く歯切れのいい高潔さはさもありなん。
 あのどぎついメイク、大胆な短パン姿とあわせて、並みいる黒澤ガールズの中でも最高レベルのインパクトを残しました。

 そんな上原美佐さん、ほどなくして 「自分には才能がない」 とあっけなく芸能界を引退。 後年のインタビュー記事でも、「黒澤映画」 という威光に呑まれることなく、まるで学生時代の文化祭でも思い出すかのような口ぶりで、のんきに笑っていらした。そのいさぎよさ、後くされのなさは、劇中の雪姫同様さっぱりと気持ちがいい。 ああ、このお方は生まれながらの姫様なんだな、と妙に感服してしまいました。

 ラストシーンの高貴な姫君に戻ったお姿は、百姓コンビならずともひれ伏す威厳と神々しさ。
 あの手折った木の枝でシバかれてみたいという男、けっこういると思います。

 
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