【このアート!】 2008.08.14 (Thu)
『対決-巨匠たちの日本美術』 展
東京国立博物館の 『対決-巨匠たちの日本美術』 展に行ってきました。
小学校の教科書にも載っているような、超メジャーな名宝オールスターが一堂に会するだけあって、めちゃめちゃ混んでいました。
ライバル、師弟、似た作風…。巨匠ひとりひとりを「対決」という形で比較した趣向もおもしろい。そこで、せっかく「対決」と銘打っているので、おもしろ半分に勝敗をつけてみました…
参考資料リンク≪asahi.com公式HP≫ (↑画像の無断拝借ごめんなさい)
鎌倉仏像対決! 運慶 vs 快慶
同門の名コンビでありながら、好対照の作風の 『地蔵菩薩像』 2体。もっちりと肉付きがよく精悍な運慶作は、りりしさとあどけなさを併せ持つ鎌倉の健康優良児。一方の快慶作は、男性的な武家社会らしからぬ繊細で内省的なたたずまい。こんな大舞台で「対決」させられて、どこか所在なさげです。
このオープニング・ゲームは、主役として絵になる運慶の圧勝。
水墨画対決! 雪舟 vs 雪村
雪舟は水墨画最大のビッグ・ネームでありながら、その作風は奔放でアナーキー。至宝 『秋冬山水図』 の一本筋の通った大胆不敵な線は、すごいのかやりすぎなのか、慣れるまで戸惑ってしまう。一方の雪村は、権力に束縛されない自由な感じ。中国の有名な仙人を描いた 『呂洞賓図』 のタッチは、鳥山明 「アラレちゃん」の表紙絵のようなポップさ。この雪村という人、偉大な雪舟にあやかって「雪」の字をもらったが、特にゆかりはないらしい。
圧倒的なインパクトで雪舟の貫禄勝ち。
御用絵師対決! 狩野永徳 vs 長谷川等伯
「対決」展にふさわしいガチのライバル対決。天下人秀吉の「御用絵師」の座を賭けた両者の争い…。永徳は自らの寿命を、等伯は跡取り息子の命を縮めるほどの熾烈なものでした。今回展示されたそれぞれの代表作 永徳 『檜図屏風』 と 等伯 『松林図屏風』は、その闘争の前後に生まれた、まさに命がけの名画。
永徳作は、ヒノキなのに松のような異形の荒々しさ (死の直前だったので、実際は門弟たちの作という説が有力だとか)。一方の等伯作は、戦国の余韻を残す当時では異色ともいえる幻想のリリシズム。王覇を競った両巨匠の代表作が、アウトローの魅力にあふれているというのは、なんだか皮肉です。
この対決は例えるなら「財閥vsベンチャー」。判官びいきで一代のベンチャー等伯の勝ち。
黒楽茶碗対決! 本阿弥光悦 vs 長次郎
一度この目で見たかった長次郎の黒楽茶碗 『俊寛』! 古今東西を問わず 「ほしい美術品」 のひとつです。ほどよくツヤ消しされた、温かくも厳格な黒光りの表情。手のひらにしっくり収まりそうな柔らかい風合い(想像)。彼こそ利休イズムの体現者。今回、マルチタレント光悦の黒楽茶碗 『時雨』、この洗練された「さび」にも大いに魅了されたが、長年の個人的な憧れと欲望にはかなわず。大健闘およばず長次郎の勝ち。
(・・・でも 「マルチ」 すぎてイマイチあやふやだった光悦の魅力が、ズビビーン!と分かりました。ファンになった。今回ダントツのベストバウト。)
風神雷神対決! 俵屋宗達 vs 尾形光琳
一時代前の宗達を深く尊敬していた光琳が、心の師の代表作 『風神雷神図屏風』 を模写。そのふたつの 『風神雷神』 が一堂に観られるなんて! あなうれしや!あえて勝敗づけるならオリジナルの宗達だが、ここではそんなヤボは抜き。「対決」 とは一味違う、時代を超えた師弟愛がほほえましい 「エキシビジョン」 の一戦でした。
(なお、日本美術史上最大の名画は光琳の『紅白梅図屏風』だと思っています。)
京焼対決! 野々村仁清 vs 尾形乾山
仁清といえば、変幻自在の色づかいと艶かしい「ろくろ」さばき。一方の乾山は造形こそ無骨だが、むしろ絵付けの意匠に心を砕いた人。華やかに踊る貴婦人のドレスが仁清なら、乾山は定番だけに着こなしがものをいう紳士のタキシードといったところ。千の技が冴える仁清の勝ち。
…ほか、
会期中、展示替えもあったので結局3度も足を運びました。それくらい楽しかった。またやってほしいなあ!
池大雅 vs 与謝蕪村
伊藤若冲 vs 曽我蕭白
円山応挙 vs 長沢芦雪
富岡鉄斎 vs 横山大観
…が「対決」されていましたが、江戸ものはあまり知識や審美眼がないのでここでは割愛します。会期中、展示替えもあったので結局3度も足を運びました。それくらい楽しかった。またやってほしいなあ!
- 関連記事
-
- ピカソ展とフェルメール展
- 『対決-巨匠たちの日本美術』 展
- 東大寺の四天王
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
| このページの上へ↑ |