FC2ブログ

【この本!】 2009.03.29 (Sun)

『源氏物語』 第2部がおもしろい

 
 ≪千年紀≫を迎えたという 『源氏物語』 を読みました。 途中から。
 須磨に左遷されていた光源氏が、中央へ復帰する第14帖 『澪標』 (みおつくし)。このあたりから昔読んだ記憶があやしくなるので。

 世紀のプレイボーイ光源氏も、すでに三十路。もはや新しい恋に燃えることは少なくなり、むしろ政治権力争いにご執心の様子。
 代わって繰り広げられるのが、源氏の息子・夕霧と頭中将の娘・雲居の雁(くもいのかり)の初恋であり、源氏の養女・玉蔓(たまかずら)をめぐる男たちの恋の争い…。
 う~ん、奔放な光源氏ほどのインパクトに欠けるので、今回もあまり印象に残らなかった。


 でもでも、源氏の後半生をあつかう第34帖 『若菜』 から第41帖『幻』 までの≪第2部≫は、抜群におもしろかった!
 子どもたちは立派に巣立ち、自身も天皇位をしのぐ 「名誉上皇」 というべき位へ…。恋と権力の頂点を極めた光源氏。さぁ、これからは愛する妻・紫上と悠々自適の余生を送ろうか…という時に降って沸いた、女三宮の降嫁話。兄帝・朱雀院たっての願いを断りきれず、娘ほどの年齢差の女三宮を、「正妻」として迎えてしまうのです。

 それまで源氏の 「正妻格」 だった紫上は、あくまで「~格」でしかなかった自分の不安定な立場に愕然とし、病の床に伏せます。そこから彼女は、不幸と絶望のスパイラル…。才色兼備、誰からも愛され尊敬され、浮気性の夫にも寛容にふるまう 「完璧な女」 を演じてきた賢女だったからこそ、その反動は計り知れません。

 あぁ、光源氏のバカ!バカ! この期に及んで、紫上ちゃんを泣かせちゃいかんでしょ!
 何かの糸が切れたように、源氏への「千年の恋」が覚める紫の上。源氏自身も、過保護に育てられて幼すぎた女三宮に幻滅します。

 そんな、ただでさえギクシャクする三角関係に決定的な一撃が…。世間知らずの女三宮が、若き貴公子・柏木 (頭中将の長男) と一夜のあやまちを犯してしまうのです。そして不義の子・の誕生…!
 …すべてを知ってしまった光源氏は、女三宮と柏木をネチネチと責めたて、若いふたりを悲劇的結末に追いやります。かつてこの世のあこがれ・尊敬を一身に集めたスーパーアイドルも、いつの間にか相手を委縮させ、恐れられる権力者に。 あぁ、彼も孤独でちっぽけな天上人、裸の王様だったのか…。

 源氏はそんな自らの醜い仕打ちを後悔するも、後の祭り。ついには最愛の紫上にも先立たれ、空虚きわまりない孤独な最晩年のまま、その物語を閉じるのです。華やかに彩られた≪光る君≫ の一生としては、あまりに寂しすぎる結末…。

 しかし『源氏物語』が名作といわれるのは、べつに華やかだから、奥ゆかしいからというだけではなく、スーパースター光源氏の、こういう醜い暗部にまで迫った人間描写あってこそ、なのだと再認識しました。
 ぼくにとって、シェイクスピアやゲーテに出会った時以来の衝撃。この時代にそれをやってのけたのはすごい。「どうせ、千年前の狭い貴族社会の話でしょ」 と甘く見ていたのを打ちのめされました。
 参りました、式部マジック! 千年も読み継がれるわけです。

 
関連記事
23:07  |  この本!  |  コメント(1)  |  EDIT  |  上へ↑

*Comment

■Re: 『源氏物語』 第2部がおもしろい

面白い視点で参考になります。でも、個人的に、やはりこの作品は「生き霊」ここに尽きると思います。魔女でもない普通の人に呪われるというのはセンセーショナル!!海外では生き霊自体あまり無い発想だと思うしね。イギリスなんて幽霊大好きの国民性だし、幽霊屋敷が何も無い家より高く売れるらしいから、きっと超人気(笑)かくゆう私も女性の生き霊が右肩についていると言われ、ユタに除霊してもらいました。(爆)執着怖い、怖い、(爆)誰だろ。。。^^
moon |  2019.01.28(月) 04:44 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する (ログイン不要/コメントは承認後に表示されます)

URL  未記入でもOK
コメント
パスワード  あなたの編集・削除用。適当な文字を。
内緒  管理人だけに表示
 

▲PageTop