【日本映画】 2018.10.17 (Wed)
『お茶漬けの味('52日)』 はお口に合いまして?

BSで黒澤明と小津安二郎の映画を特集していました。小津の何本かは観たことがなかったので、保存用に録画しました。
その一本、中年夫婦の倦怠期を描く 『お茶漬けの味』。1952年。田舎育ちで無口な夫(佐分利信)と、お嬢様として育った勝気な妻(木暮実千代)のお話。
最初の1時間は、キャラクターが退屈でたまらなかった。
温泉宿での「女子会」の、男の筆が見えるリアリティのなさ。古い日本の女の家庭観・男女観に付き合わされるのはつらい。彼女たちがそれ以上に古い日本の男にうんざりしているように。新憲法からまだ5年、戦前を引きずる社会の幼稚さ未熟さが垣間見える。
小津が造形する若者像も相変わらずつまらない。お見合いをすっぽかした姪(津島恵子)が叔父の家に逃げてくるって、まぁご都合よろしいこと。彼女に自分の世界はないのかしら。お友達いないのかしら。
後半ようやく、積もり積もった妻の不満が爆発してお話が動き出す。
「鈍感さん」とあだ名された夫は自分の野暮無粋を詫び、「君は君のままでいい」と歩み寄る。ところが今度は妻の方が話し合いを拒否、ボタンの掛け違いが重なっていく。
そこで派手な仕掛けを用意するでなく、時間の経過と人間の良識を信じて「雪解け」していくのが小津らしい自然な味つけ。(考えこむ妻のカットに頼りすぎではあるが。)
お手伝いさん(感情がない役なのに重要に映る小園蓉子)に家事いっさいを任せている、生活のリアルに追われる必要のないエリート家庭の物語。だからこそラスト、なんてことない「お茶漬けの味」が格別なものになるのだろう。
ツンの後のデレが小津にしてはくどすぎたのと、「男は中身だ」と説教くさい結び。ようやく小津が分かる歳になったのに、またガクンときた。口直しには何がいいだろうか。
『お茶漬けの味 (1952松竹)』
監督/小津安二郎
脚本/小津安二郎、野田高梧
撮影/厚田雄春 (前後へのドリー<移動>撮影が新鮮な情感!)
音楽/斎藤一郎
主演/佐分利信、木暮実千代、津島恵子、鶴田浩二、淡島千景
(こういう勝気な女性をやらせたら、木暮姐さんの右に出るものなし。もっとも脇の淡島姐さん共々、まだ力をセーブした変身前のフリーザ様って感じ。こんなものではありませんよ。)
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