【日本映画】 2018.07.19 (Thu)
納涼!『東海道四谷怪談(’59)』

暑い夏には映画 『東海道四谷怪談』。
中川信夫監督、1959年、新東宝。
ごぞんじ 「お岩さん」 の悲劇。
子供のころ、雑誌に写真が載っていてめちゃくちゃ怖かった記憶がある。今回初めて観ます――。
どこまでも人生に受け身で簡単にだまされる、古い日本の女性像がまったくおもしろくない。
ようやく、夫・伊右衛門に裏切られ毒を盛られるかの名場面 「この恨み、晴らさずにはおくべきか」 は、それまでの服従と忍耐が一気に爆発して真に迫るものがあった。
しかしそこからの彼女は、お化け屋敷の「おどろかし」に終始。それはそれで畳みかける恐怖、迫力ある映像演出ではあったのだが、女性の内面描写という点では現代ではまったく物足りなかった。お岩を体当たりで演じたのは若杉嘉津子さん。
対する夫・民谷伊右衛門を演じるのは若き天地茂さん。
不実の果てにお岩の亡霊に狂乱する、怒涛のクライマックス! なるほど本作は彼が主役だ。すさんだ生活の中で妻に飽き、疎みながらもいざ殺すとなるとためらいを見せる多層的な人間像。こういう深みをお岩にも与えてほしかった。
ニヒル、ダークな “マダムキラー” 天地さんにとって出世作になったそうだ。伊右衛門をそそのかす直助役・江見俊太郎さんの、軽薄なずるがしこさも強く印象に残った。
撮影はのちにブルース・リー作品など香港映画で重きをなす西本正さん。美術はこれら怪談映画で活躍した黒沢治安さんという方。照明の折茂重男さんや編集の永田紳さんらも併せて、テンポのいい映像は素晴らしかった。
音楽はアニソンの巨匠・渡辺宙明さんだったのか。たしかにマジンガーみたいなティンパニ連打がチューメイさんらしいや。
【続き・・・】
じつはこの前に小林正樹監督の大作 『怪談 (1964)』 を観たのだが、言われているほど美しくなかった。チャチかった。スタジオにスモーク焚いたりカクテル照明当てたりなら、のちの 『ザ・ベストテン』 のほうがずっと洗練・安上がりだろう。その費用対効果は会社を倒産させるほどのものか?? 言葉づかいも妙に現代的だし。
同時期に観た、黒澤 『赤ひげ('65)』、D・リーン 『ドクトル・ジバゴ('65)』、ヴィスコンティ 『山猫('63)』 の、ため息が出るほどの完璧な映像づくりと比べてしまったのも分が悪い。
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