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【アメリカ映画】 2017.10.01 (Sun)

ビリー・ワイルダー作品の脇役おじさんたち

B・ワイルダー『深夜の告白』
『深夜の告白(1944米)』

 ビリー・ワイルダー監督初期の映画 『深夜の告白(1944米)』 を観ました。
 「保険金殺人サスペンス」 の先駆けになった、フィルム・ノワールの古典。保険セールスマンが富豪の美しき後妻にそそのかされ、その夫殺しに加担してしまうお話――このあと世界中で何百何千と作られるこの手のサスペンスのひな型になりました。

 しかし犯人が保険のプロなら、周りにいるのもその道のプロ。主人公の上司が富豪の変死をあやしんで、周到に仕組まれた計画をズバズバと暴いていくのです。もちろん上司はまさか部下が真犯人だとは知らないわけだから、観客は主人公と一緒に隣りでハラハラさせられる、という構図。

 主人公を狂わすヒロイン、バーバラ・スタンウィックの 「魔性の女(ファム・ファタール)」 っぷりもたまらなかったけど、この上司を演じたエドワード・G・ロビンソンがいい。金に細かくていつもセカセカしていて、だけど憎めなくて、最後には主人公とのアツい見せ場まで――どんどん魅力的になっていきました。

 ワイルダー監督作はコメディにしろサスペンスにしろ、脇役のおじさんが潤滑油になったり飛び道具になって、物語を豊かにふくらませてくれるのが魅力のひとつです。




B・ワイルダー『第十七捕虜収容所』
『第十七捕虜収容所('53)』

 『第十七捕虜収容所('53)』 では、ワイルダーとは同郷オーストリアの映画監督オットー・プレミンジャーがドイツ軍の所長を怪演。
 その始めのあいさつ、「アーヴィング・“ベルリン”のホワイト・クリスマス――Just like the ones I used to know」 に思わず吹いた。ねちねちとイヤミったらしい言い方もおかしい、この映画で一番印象に残っているギャグです。


B・ワイルダー『あなただけ今晩は』
『あなただけ今晩は('63)』

 『あなただけ今晩は('63)』 の、ピンチの主人公を助けるカフェのマスター(ルー・ジャコビ)が大好き! 起死回生の策をひねり出すたびに自身のとんでもない経歴を語って、「それは別の話 (But that's another story)」 とはぐらかすナゾの?男。 バカバカしいけどつい引き込まれてしまう飛び道具タイプ。


 また、『サンセット大通り('50)』エーリッヒ・フォン・シュトロハイム 『昼下がりの情事('57)』モーリス・シュヴァリエなど名匠名優は、脇役と呼ぶにはもったいない第三の主役として物語を重厚に軽妙に支えます。
 『情婦('57)』チャールズ・ロートンも表向きは主役だけど、狂言回しとして物語を支えるという点では同じ。(※でもぼくは、先にA・クリスティ原作のほうに衝撃を受けたので、コミカルな好々爺ロートンの主人公役はイメージが違って好きになれない!)


 しかしワイルダー作品最高の脇役おじさんといえば、やっぱり文句なしで 『お熱いのがお好き('59)』 のオズグッド3世(ジョー・E・ブラウン)で決まりだ!

B・ワイルダー『お熱いのがお好き』
『お熱いのがお好き('59)』

 金持ちも頂点を極めると、マリリン・モンローよりコッチ↑のほうが 「Zowie !」 になってしまうのか!!? 映画史上に燦然と輝く名ラストの名ゼリフ 「完璧な人間はいない (Nobody's perfect)」 は、混迷の現代社会を差し照らすひとすじの真理といえるでしょう。
 (向井真理子、広川太一郎、愛川欽也の名・吹き替え版もおもしろかった! 珍富豪役のJ・E・ブラウンも吹き替え・坊屋三郎さんも、名コメディアンとして鳴らした方だそうです。坊屋さんのテレビ機器のCM 『クイントリックス』 は見たことある。)


  ほか、『七年目の浮気('55)』 のエロ家主(ロバート・ストラウス)や、『アパートの鍵貸します ('60)』 のガンコ医師(ジャック・クラッシェン)など、クセが強い隣人たちも忘れがたい。
 もっと言うなら、師匠エルンスト・ルビッチの下で脚本を手掛けた 『ニノチカ('39)』 などにも面白おじさんの源流が。そんなおじさんたちの姿を借りて、敵国の体制も自らの正義も、性の不純も倒錯(とされること)もすべて、笑いで包み込む批判精神の伝統が見て取れます。
 21世紀になっても褪せることなどない、色あざやかなビリー・ワイルダーの世界。思い出すなあ、ぼくがワイルダー先生の一番弟子についていた時・・・おっと、それはまた別の話。

 
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*Comment

■Re: ビリー・ワイルダー作品の脇役おじさんたち

 はじめまして。

 私もビリー・ワイルダー大好きです。
 特にジャック・レモン、シャーリー・マクレーンの「あなただけ今晩は」と「アパートの鍵貸します」が大好きで、数十年前に録画した愛川欣也さんの吹き替えをいまだにVHSビデオで観ています。
 共感がもてて、なんだかとても嬉しかったです。
しんのじ |  2017.10.06(金) 21:59 |  URL |  【コメント編集】

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