【欧州&世界映画】 2017.07.12 (Wed)

不愉快な幸福のカタチ~A・ヴァルダ『幸福('65仏)』

A・ヴァルダ『幸福』
アニエス・ヴァルダ監督 『幸福('65仏)』

 フランスの小さな田舎町。ひまわり咲く野山で憩う若い夫婦の一家。父に抱っこされ、母に手を引かれるヨチヨチ歩きの子供たちの、なんと愛らしいこと!(4人はほんものの家族だそうだ。)

 ボンコツながらも味のある古い型のライトバン。ふたり抱き合ってようやく収まる小さな小さなシングルベッド・・・。そして、時どき挿入されるひまわりの映像。カットバックの瞬間、色が乱れるぶっきらぼうな編集がヌーベルバーグっぽくてかっこいい。
 昔の映画フィルムならではのざらついた、けれど温かみのある画調は、日曜カメラマンの家族アルバムのようで親しみが湧いてきます。

 モーツァルトの室内楽にのせて、絵に描いたようなフランスの田舎の休日が描かれる。まさに絵に描いたような、これでもかとばかりの 「幸福」 にあふれた、アニエス・ヴァルダ監督1965年の映画 『幸福 〈しあわせ〉



 未見の方がいるのを承知でネタバレしますが、この映画はこんなにも温かい一家の愛で始まり、同じように一家の変わらぬ愛で終わります。

 ・・・が、それがたまらなく嫌な気持ちにさせるのです。
 べつに 「他人の幸福に嫉妬して」 なわけではないことは、実際にご覧になって追体験してみてください。怖ろしい映画です。

 はじめはこんなのに何千円も出させやがってと、DVDを割ってやろうかとすら思いました。フェミニストとして知られるアニエス・ヴァルダが、悪びれもせず、臆面もなくこんな映画を作ったことに失望もしました。

 でもふと思い返すと、気になって仕方ありません。少しずつ、不愉快な気持ちが自分自身への罪悪感のようなものに変わっていくことに気づきました。
 自分が幸福であればあるほど、不都合にフタをし、うわべだけの美しさに日々酔いしれている罪悪感。さらにはその罪悪感にすらフタをして、忘れて、あるいは気づきもせず生きている自分自身の姿を鏡で映された。



  
  【YouTube】 Le Bonheur (1965) Trailer


 一家「4人」の幸福をつづった予告編。核心の部分には触れていないのですが、物語を知ってからこれを見た方は“あのこと”に気づくでしょう。本気でゾッとします。(BGMはこのスリリングな 『アダージョとフーガ』 じゃなくて、どこまでものんびりな 『クラリネット五重奏曲』 のほうが、かえって怖いと思うんだけどな。)

 仏映画の “新しい波” ヌーヴェル・ヴァーグを先導したアニエス・ヴァルダ。その術中に見事にはまった、一本取られました。
 参った。
 

【続き・・・】


 ◆制作プロデューサーはマグ・ボダール。ヴァルダやその夫ジャック・ドゥミ監督(『シェルブールの雨傘』)など、のちに巨匠と呼ばれる才能を次々と発掘した名伯楽として知られる。
 ◆撮影のジャン・ラビエは 『シェルブール…』 も手がけた、フランス映画らしいおしゃれな映像手。
 ◆主演は本物の家族ドルオーさんご一家。だから本当に自然で子供たちもなついている。旦那さんだけが本職の役者だそうだ。物心ついたあとの子供たちは本作をどう観たのだろうか。
 ◆ベルリン映画祭銀熊賞。


 
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