【この本!】 2015.07.29 (Wed)
谷崎恐怖症~『春琴抄』~

今2015年は谷崎潤一郎の没後50年だとか。亡くなったのは1965年7月30日。(1886.7.24生)
とはいえ、ぼくはまともに作品を読んだことがありません。
子供のころテレビで百恵ちゃん&友和さんの映画 『春琴抄(1976東宝)』 を観て、あのとんでもない結末がトラウマになってしまったせい。今でも「針」を見るとこれを思い出します。
谷崎恐怖症。
『春琴抄』 は盲目の令嬢と、それにどこまでも献身的に仕える下男の、倒錯的な愛と主従。
このたび原作小説を読んで不思議な味わいだったのは、「伝記や関係者に取材した」という体裁で、ルポルタージュかドキュメンタリーのような形式で書かれていたこと。
耽美や被虐趣味にひたりきるのではなく、物語当時の社会や事情と照らしながら、ふたりの感情や立場をどこか客観的に論じているのが意外だった。
冒頭からして、例の結末とその後の暮らしがあっさり明かされており、ただの「青春、純愛、異形」に終わらせていない。
もっとも逆に、そういう生活の現実や老い、バッサリ否定される「思い出補正」などのほうが、ずっと残酷で生々しかったりするけど。
行き過ぎた主従・師弟関係は、閉じきった世界でお互いに 「そうあらなければならない」 「そうあることを演じていた」 子供心と芸道ゆえだったか。その意味で、どこにでもある、誰にでもなりそうな物語。
とにもかくにも、ヒロイン春琴の高慢ドSっぷり。ツンデレ好きには辛抱たまらんので、佐助になって夢中で読みましたが、例の目を突くシーンはやっぱり怖くて飛ばしました。
そんなわけで抵抗感はいくらか和らぎましたが、ぼくの 「谷崎恐怖症」 は一生続くでしょう。
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