【このアート!】 2015.05.26 (Tue)
光琳の「燕子花」と「紅白梅」

(MOA美術館ver.)
尾形光琳の2大傑作、『紅白梅図屏風』(こうはくばいずびょうぶ) と 『燕子花図屏風』(かきつばたずびょうぶ) を一緒に並べた展覧会がありました。
それぞれを蔵する、MOA美術館(熱海)と根津美術館(東京)にて。
日本美術史上でもツートップ、「超」がつくほどの2大傑作。 またとないチャンスなのに、東京を離れていたので行けませんでした。 花の数だけ叫びたい。
晩年の大作 『紅白梅図屏風』 は、何といってもあの大胆かつドラマチックな構図!
まずは左右の梅の枝ぶり。「あうん」の金剛力士のように大地からほとばしるオーラ。かっこいい!
左の「白梅」の太い幹はあえて見せないことで、端正な右の「紅梅」とのバランスを取っている。画面の外にはどんなたくましい体躯がそり立っているのだろう? 『ミロのヴィーナス』 のように想像する楽しみもあるかも。なんてぜいたくな演出。
そしてそして、その真ん中に無遠慮なくらいどんと広がる水の流れ。この勇気。
21世紀に入ってからも、あれは金箔なのか金泥(という絵具)なのか、これは銀箔なのか銀メッキなのかなどとカンカンガクガクだそうですが、その際CGで再現された「銀色の波」のあざやかさ、ソリッド感には目が覚めるものがありました。
・・・ぼく認定、日本美術史上最高傑作。
あぁ、今はもうMOAに帰ってしまったのか。 熱海だよ、熱海。だれか熱海に連れてって。
一方の 『燕子花図屏風』 は、その名のとおり一面に並んだ壮観のカキツバタ。 センスがものをいう絶妙の配置からは、音楽すら聞こえてきそう。 究極のコピペ芸術。
ただ、真上に伸びる葉っぱの筆づかいには即興的な勢いを感じるのだけれど、花のもったり感にはあまり魅かれない。それは「豊かなボリューム」と言い換えるべきなのか・・・。
また、「かきつばた」といえば「八つ橋」がセット(お菓子じゃないよ)。 『伊勢物語』 の有名な
「から衣 着つつ慣れにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ」
の場面ですね。 でも、ここに八つ橋はない。光琳の別のかきつばた図 には、ちゃんと描かれているのに。何か別のアイテムや事象で補完せよ、ということなんだろうか。
東京でいつでも見られるという気持ちがあるからこそ、まだありがたみが分からないのかも。だからと言って、都に残した妻を偲ぶ 「からころも・・・」 になってからでは遅いんだろうな。
今ごろになって逃したチャンスの大きさに気づきました。展覧会は5月半ばで終了――。
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