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【この本!】 2013.09.18 (Wed)

ハイジ10のなぞ

森やすじ『ハイジ』
森康二さんによるパイロット(試作)版ハイジ
(無断で載せてごめんなさい)

 BSで再放送中のアニメ 『アルプスの少女ハイジ』、いよいよクララが立ち上がります。
 前にアニメと原作の感想は記事にしたのですが、今回は書ききれなかった 「ハイジ」 のひみつ情報をまとめてみました。


 ≪1.おじいさんは人殺し!?≫
 アニメの第1話でも 「おんじは人を殺したことがあるらしい」 と触れられていますが、原作ではおじいさんの過去が詳細に語られます。

 おじいさんはとある町一番のお金持ちの息子だったが、遊びほうけて家をつぶし、くにを出てナポリの軍隊に入る。そこでケンカをして人を殴り殺した・・・というのです。
 その過程でどこかの女性と結ばれたのだろう、やがて幼い息子ひとりだけを連れて帰郷するも、悪い噂が立ってふるさとを追われ、このデルフリ村に流れ着いた・・・というのがおじいさんの知られざる過去。

 ちなみに、産業に乏しく貧しかった昔のスイスでは、周辺国への 「傭兵」 がごく一般的な出稼ぎの手段でした。現代でもバチカンの衛兵はスイス人から、と決められています。



 ≪2.ハイジ出生のひみつ≫
 ・・・こうしてデルフリ村に流れ着いたおじいさん。成長したひとり息子は大工になってアーデルハイトという娘と結婚、娘ハイジをもうける (母と同名)。しかしハイジが生まれてすぐに父は事故死、母もショックで急逝してしまう。これでおじいさんはキリスト教への信仰を捨て、山に引きこもってしまった・・・。
 その後ハイジは母の妹デーテ (おんじとデーテに直接の血縁はない) に引き取られていたが、このたび出稼ぎに出るデーテに代わって、祖父のアルムおんじが5歳のハイジを預かることになった・・・というのが物語のはじまり。

 親子3代にわたる壮大?なストーリー、なんだか 『スター・ウォーズ』 みたいです。おんじスカイウォーカー。アルプスの逆襲。



 ≪3.「デルフリ村・アルムおんじ」では手紙は届かない≫
 「アルムおんじ」 と呼ばれているおじいさん。しかし 「アルム」 はアルプスの 「アルプ」が変化した言葉で、「山」 という意味の普通名詞。 人の名前ではありません。
 おじいさんの姓名、ハイジの姓は不明です。

 また、山のふもとにある 「デルフリ」 村も、「村っこ」 という普通名詞で固有名詞ではない。

 だから 「デルフリ村・アルムおんじ」 は 「村っこの山じいさん」 という意味で、スイスだけでも何千何万人といることでしょう。ここに手紙を出したって何やら分からないことに。
 ただもしかしたら、現地の観光業界の粋な計らいで、ハイジ財団か人気観光スポット 「ハイジの山小屋」 に届けてくれるかもしれません。



 ≪4.「ハイジ」 と 「アリス」 は同一人物?≫
 「ハイジ(Heidi)」 という名前はドイツの女性名 「アーデルハイト(Adelheid)」 の愛称。これが英語では 「アデレード(Adelaide)」 になり、その通称が 「アリス(Alice)」。だから 『アルプスの少女アリス』 『不思議の国のハイジ』 と呼んでも正解と言えるかも??

 「アーデルハイト」 の意味するところは 「貴婦人」。日本名にするなら 「貴子ちゃん」 ?
 なお、アニメのロッテンマイヤーさんは 「アーデルハイド」 と発音しているが、語尾は 「ト」 と濁らないのが正しい。



 ≪5.ペーターの屈折≫
 原作のハイジはもともと、フランクフルト帰りのハイジと再会したおじいさんが、過去を悔いて再び信仰心を取り戻したところで終わっていました。しかし小説がヒットしたのでクララが立ち上がるまでを続編として追加し、今のかたちに。

 ただし物語のハイライトは 「クララが立った!」 の名シーンではありません。自分からハイジを奪っていったクララに嫉妬したペーターが、クララの車椅子を壊してしまう。(アニメではわざとではなくアクシデントという描写に。) しかし罪の意識にさいなまれたペーターが正直に謝って許されるという、「文部省推薦、神様はお見通し」 な内容。
 まだ幼いペーターの屈折と罪悪感、それを温かく見守る大人たちのまなざしが、とても丁寧に描かれていて巧かったです。



 ≪6.その後のハイジ≫
 ヨハンナ・シュピリの原作の後にも、他の作家が書いた続編があるそうです。多くは大人になったハイジをあつかうもの。ハイジとペーターが結婚しているとか(安直だなあ)、学校の先生になったとか・・・。テレビの雑学番組では、チャーリー・シーンが青年ペーターを演じた映画版なんかも紹介されていました。
 う~ん、でも見る気しないなあ。



 ≪7.伝説のアニメーター森やすじ≫
 アニメの 『ハイジ』 でぼくが一番好きな絵は、「はじめの歌」 の最初と最後、ハイジとユキちゃんのスキップと、ハイジとペーターが手を取り合って踊る2つのシーンです。
それぞれの表情と動きになんともいえない素朴な温かみがあって、それだけで幸せな気分になる。この2つのシーンを手がけたのは、森康二さんという日本アニメ創成期からの大ベテラン。あの日本初の長編カラーアニメ映画 『白蛇伝』 も手がけた人です。

 小田部羊一、大塚康生、高畑勲、宮崎駿、富野喜幸といったそうそうたるアニメーターが手がけたアニメ 『アルプスの少女ハイジ』。そういう現代の巨匠たちに、雲の上の人として尊敬されていたのが森さんでした。
 (ちなみにopでハイジのパンツが見えるのは、大塚さんの趣味嗜好…イヤ志向だろう。)

 画集 『もりやすじの世界』 に収録されたパイロット・フィルム版のハイジは、涙が出るほど優しさと温かさにみちています。もっと広く流通して、もっと身近に手に取れるようになってほしいなあ。



 ≪8.衝撃のアラビア語版ハイジ≫
 以前の記事でも採りあげましたが、アニメの 『ハイジ』 アラビア語版は、とんでもないことになっています。とにかく、まずはご覧あれ! (ともにリンクはYouTube)

   「はじめのうた」
   「おわりのうた」

 ・・・どこの国かは分かりませんが、ここまで我が道を貫き通すとかえってエライ。それに日本の西洋ものアニメにだって、演歌・歌謡曲調の音楽がついていたりする。実は人のことを言ってられないのかもしれません。



 ≪9.『ハイジ』 は盗作!?≫
 ヨハンナ・シュピリが1880年に発表した原作小説 『ハイジの修行と遍歴時代』。しかしその50年前に別の作家が書いた 『アルプスから来た少女アデレード』 という物語とそっくりであったことが近年報道され、地元スイスでは 「ハイジは盗作か?」 と大きく騒がれました。
 お話は、アルプスの山でおじいさんと暮らしていた少女アデレードが、町に出て教育を受けるが、ホームシックにかかって山のおじいさんの元へ帰る・・・という、『ハイジ』 そのまんまな内容。

 ただし古典文学は往々にして過去作品のアレンジがまかり通っていたこと、シュピリの宗教観や追加の物語(「クララが立った」)など、シュピリなりのオリジナリティがあることなどから、「それはそれ」 として一応の決着がついて騒動は終わりました。



 ≪10.本場スイスでは未放送≫
 ドイツ、フランス、イタリア、スペイン・・・ヨーロッパ各国で放送されて人気を博した日本のアニメ版 『ハイジ』 ですが、本国スイスではいまだ放送されていないんだとか。

 彼らが長く親しんできた原作から宗教・道徳色を抜いて、ただの天真爛漫な少女にしてしまったこと。 また原作にはない犬のヨーゼフの、「スイスといえばすぐセントバーナード」 という発想が気にくわないらしい。
 たしかに日本人だって、『一休さん』 から仏教色と とんち を抜いて、新右ェ門さんをニンジャにされたら怒るだろう。 そんなスイス人の気持ち、分かってあげたい。
 それでも少しずつは、アニメ版 『ハイジ』 への理解がすすんでいるそうです。やっぱり抜群に面白いもんね。


 ・・・有名な 「クララが立った!」 シーンもいいけど、やっぱり最終回、歩けるようになったクララが父や祖母と再会する場面が感動的。今回ばっちり永久保存して、末代までの宝にします。

 
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