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【ヒッチコック全作品】 2013.04.02 (Tue)

『下宿人(1926英)』

(ヒッチコック全作品) 
03.下宿人

 ≪感想≫
 緩と急のつけ方(忍び寄る下宿人とコミカルな一家団らんの対比)、スリルの引っぱり方と落とし方(暖炉の火かき棒を握る下宿人)など、何度観てもハラハラ。

 中盤、下宿人と刑事がひと悶着後、刑事とデイジーが仲直りするシーン。デイジーが抱き合いながら天井に目をやると・・・例の「揺れる電灯」・・・でフェードアウト。
 「揺れる電灯」は下宿人の「記号」になっているから、画面の手前に映りこむだけで怖い。疑惑がふつふつ沸きあがったところでフェードアウトっていうのが、なおのこと怖い。すばらしい構図とセンス、世界中でどれだけマネされてることか! ここはゾクゾクッときた。

 一方、無声映画ソフトの常として、後年つけられたBGMが無神経で作品に寄り添っていないのが大きなマイナス。だからかどうかソフトの中にはまったくの無音バージョンもあるそうで、それはそれで売る側の怠慢だ。



 A・ヒッチコック監督第3作 『下宿人(1926英)』

 出演/イヴォー・ノヴェロ (下宿人)
     ジューン・トリップ (デイジー・バウンディング)
     マリー・オールト (デイジーの母)
     アーサー・チェスニー (デイジーの父)
     マルコム・キーン (刑事ジョー)

 ≪あらすじ≫
 ブロンド女性ばかりをねらう殺人鬼が世を騒がせる中、金髪モデルのデイジーの両親が営む下宿屋に不気味な青年がやってくる。男の怪しげな振る舞いに不安を募らせる両親をよそに、デイジーは次第に男に魅かれていく。果たして下宿人の正体は・・・?

 ≪解説≫
 19世紀末のロンドンを震撼させた 「切り裂きジャック」 事件を題材に、監督3作目にして初めてサスペンスを手がけたヒッチの実質上の出発点。サイレント作品。
 天井をガラス張りにして下宿人の怪をかきたてるシーンが特に有名だが、男への疑惑を積み上げていく話法からしてすでに非凡なものを感じさせる。本作の成功により、若きヒッチコックの名は大きな熱狂をもってイギリス中に響き渡った。(※ただしヒッチひとりの手柄だけではないことは、下の【続き・・・】に裏話。)

 ≪ヒッチ結婚≫
 同’26年12月2日、本作の助監督アルマ・レヴィルと結婚。もとは入社4年先輩のアルマのほうがずっと格上で、監督昇進も期待された俊才だったが、彼女にはそこまでの野心がなかったようだ。 ちなみに誕生日はヒッチ(1899. 8. 13生)の翌14日生まれ。

 ≪ヒッチはここだ!≫
①3分過ぎ、通信社のデスク、電話をかける後ろ姿。
②クライマックスの大騒動、鉄柵から乗り出したヒロインたちの右隣にハンチング帽姿で。
  そのあと「犯人逮捕」の報に驚いた表情。めいっぱい演技しているところがカワイイ。

 ・・・おなじみヒッチ自身のカメオ(チョイ役)出演も本作から始まる。当初は 「エキストラ不足によるスクリーンの空白を埋めるため」 としていたので、イギリス時代は出ていない(または判別できない)作品も多い。 渡米後は彼一流の遊び心から恒例化し、ファンのお楽しみのひとつになった。



  『THE LODGER』

 監督・脚本/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/エリオット・スタナード
     原作/ベロック・ローンズ
     撮影/バロン・ヴェンティミリア
    助監督/アルマ・レヴィル (ヒッチ夫人)
     製作/マイケル・バルコン

 ゲインズボロー社 71分 (上映時間のデータは資料によってまちまち)
 

【続き・・・】

 

 ≪以下ネタバレ・・・≫
 もともとヒッチの構想では、下宿人は真犯人かどうかウヤムヤなまま夜の霧に消えていく・・・というものだったが、当時スターのI・ノヴェロがキャスティングされたため、「じつは無罪」 に変えられたのだとか。
 でもそれで良かったと思う。 「ウヤムヤ」 のほうが深く不気味な余韻が残ったとしても、「疑惑は間違いだった、無実だった」 でシメる方がずっと難しく、結果としてヒッチの才能が引き立つ事になっている。 間違いの疑惑だけで物語をひっぱる技は、誰にでもできるものではない。(誰もが自作の映像をアップできる現代となっては、「真相は観客にゆだねて・・・」というやり方はもう通じない。無責任で、自らの非力をさらけ出しているようなものだ。)


 ≪裏話≫
 本作ははじめ、見る目のない業界内の試写では理解を得られず、「お蔵入り」されかけていた。そこで製作者バルコンが頼ったのが、アイヴァー・モンタギューという気鋭の映画業界人(組合創設や作品の監修・批評などで一目置かれていたらしい)。
 すぐさまヒッチの才能を見抜いたモンタギューは、字幕を減らしてスマートにしたり、三角形を不気味に強調する演出を加えたりとヒッチに的確な助言をほどこし、本作を大ヒットに導いた。
 その効果のほどはヒッチも内心認めるところであったが、のちに本作を振り返る機会が多くあったにもかかわらず、彼はモンタギューの名を出すことはいっさいなかった。それは、他人の功績を認めたがらない 「狭量」 ヒッチコックの負の一面をあらわすものであった。(『白い恐怖('45)』の有名な悪夢のシーンを演出したウィリアム・キャメロン=メンジーズを黙殺したように。)


 
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