【ヒッチコック全作品】 2013.03.12 (Tue)
『ふしだらな女 (1927英)』

≪感想≫
古い時代の古い道徳話なのでまったくおもしろくない。 悪女・妖婦好きのヒッチは「女の不貞」に比較的寛容なはずだが、本作に限ってはすべてが中途半端。 言葉の奥の情感にうったえる原作カワードと、建築的な職人気質のヒッチとはそもそもの作風が合ってない。
それでも前半の裁判シーンは、トリッキーな撮影を試みたり、裁判と回想を交錯させたりとヒッチらしい工夫が出ている。また後半、電話でのプロポーズのシーン、交換手の表情だけで成り行きを伝えるサイレント演出が上手いという評も。
A・ヒッチコック監督第5作
出演/イザベル・ジーンズ (ラリータ)
フランクリン・ダイオール (その夫フィルトン)
エリック・ブランズビー・ウィリアムズ (画家クロード)
ロヴィン・アーヴィン (新しい恋人ジョン)
≪あらすじ≫
美しい妻ラリータと、乱暴な夫フィルトンの離婚裁判が開かれている。
ラリータは晴れて離婚を勝ち取るが、愛人の画家クロードがフィルトン殺害未遂の果てに自殺していたことから、ラリータは男を惑わす悪女の汚名を着ることに。
南仏にのがれた彼女は名家の御曹司ジョンと出会い再婚するが、その隠してきた過去が暴かれる時が来る。
≪解説≫
社会の冷たい風にさらされる女の悲劇。サイレント作品。
原作は、当代随一の人気作家N・カワードの舞台劇。 恋や生活の悲喜こもごもを繊細に紡いだカワードの喜悲劇は、世界大戦や大恐慌で前世紀的な価値観が崩壊した時代に爆発的な人気を集めていた。(カワードもヒッチと同じ1899年生まれの 「ロスト・ジェネレーション」 組。世相をどこかナナメに見るふしは似ているか。)
≪この頃・・・≫
「労働者階級の娯楽」 とされ、伝統ある演劇界より地位が低かった初期のイギリス映画界。良作も少なく、芸術面ではドイツに、興行面ではアメリカに押されて低迷していた。政府の保護政策も焼け石に水。
数少ない売れっ子のヒッチはこのあと、新興会社ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャーズに引き抜かれて移籍。育ての親のプロデューサーM・バルコンのもとを離れる。
≪製作年について≫
海外の映画サイト 「IMDb」 などでは 「1928年製作」 とあるが、'27年時点でヒッチはゲインズボロー社からB.I.P社に移籍している。ドナルド・スポトー著のヒッチ伝記にも、本作の興行失敗後に移籍して 『リング('27)』 を作ったとあるので、従来どおり 「1927年製作」 としました。
≪ヒッチはここだ!≫
15分、南仏のテニスコート、汗をふきふき出ていくステッキの男。
『EASY VIRTUE』
監督/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/エリオット・スタナード
原作/ノエル・カワード
撮影/クロード・マクダニエル
製作/マイケル・バルコン
ゲインズボロー社 最長109分 (上映時間のデータは資料によってまちまち)
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