【ヒッチコック全作品】 2013.01.23 (Wed)
『マンクスマン (1928英)』

≪感想≫
三者三様の心理描写はとても巧い。奇をてらわず、万人に伝わる喜怒哀楽 (ヒッチ演出はハデだと誤解されがちなのだが、本質は心理の動きに忠実なだけ)。 セリフに頼らず映像だけで語りつくすサイレント技法の完成に近づいているようだ。
今となっては三角関係のお話自体がありきたりだが、実力のある作家がしっかり作った作品なのはよく分かった。
A・ヒッチコック監督第9作 『マンクスマン (1928英)』
出演/カール・ブリッソン (ピート)
マルコム・キーン (フィリップ)
アニー・オンドラ (ケイト)
ランドール・エアートン (ケイトの父シーザー)
≪あらすじ≫
漁師ピートと弁護士フィリップは、イギリスのマン島に暮らす無二の親友どうし。貧しいピートは恋人ケイトとの結婚を認めてもらうため、ひと山当てようと遠洋に乗り出すが、そのまま消息不明に・・・。残されたケイトはほどなくフィリップに傾いていくが、ふたりの前に生きていたピートが現れる。
≪解説≫
英マン島を舞台に男女の三角関係を描くメロドラマ。 ヒッチ最後のサイレント作品。
ヒロイン役のA・オンドラは、ヒッチが次に手掛けるイギリス初のトーキー映画 『恐喝<ゆすり>』 でも主演するポーランド系チェコの女優。当時欧州いちの映画先進国ドイツで活躍していただけあって、さすがに洗練されていて魅力的だ。気高い 「クール・ビューティ」 とはちがう庶民的でキュートな色気があり、最初の重要なヒッチコック・ヒロインと言えるだろう。
≪裏話≫
黎明期のイギリス映画界は伝統ある演劇界より地位が低く、イギリス人女優の質も高くはなかった。最初期のヒッチ作品など、みんな女装したジャック・レモンみたい。 ヒッチ自身、イギリス人女優の中途半端な気取りがイヤで、しごいたり酷評したりしていたので、同映画界では 「女ぎらい」 という評判まで立っていたそうだ。(もともと奥手で女性の扱いがヘタだったこともある。)
撮影直前の同'28年7月7日、ひとり娘のパトリシアが誕生。(のちに父の 『舞台恐怖症('50米)』 『見知らぬ乗客 ('51)』 ほかに出演。)
≪ヒッチはここだ!≫
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『THE MANXMAN』
監督/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/エリオット・スタナード
原作/ホール・ケイン
撮影/ジョン・J・コックス
製作/ジョン・マックスウェル
ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャー社 90分
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