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【ヒッチコック全作品】 2013.01.13 (Sun)

『恐喝<ゆすり>(1929英)』

(ヒッチコック全作品) 
10.恐喝(ゆすり)

 ≪感想≫
 刑事のやり方がむちゃくちゃなストーリーではあるが、映画史や技法の上では存分に楽しめた。

 冒頭、サイレント形式ですすむ捕り物劇と、終業と同時にドッとしゃべりだす刑事たち。・・・張り詰めた緊張が一気にほぐれるようでとても効果的だった。製作途中でトーキー方式に変わったことの ケガの功名。

 重要な 「ヒッチコック・ヒロイン第1号」 といえるA・オンドラが小悪魔的でキュート。やたら下着シーンが多いけど、映画先進国ドイツから来ただけにサッパリしていて全然いやらしくない。脱ぎっぷりがよくてヒッチも楽しかったことだろう。
 そのヒロインが殺人を犯して悄然と帰路につく場面、すれ違う人々が幻のように消えていく映像編集が丁寧にできていて感心した。

 そして何といっても、先進的なトーキー演出の数々!(下記) 初挑戦から目のつけどころが違うのだからかなわない。



 A・ヒッチコック監督第10作 『恐喝<ゆすり>(1929英)』

 出演/アニー・オンドラ (アリス) ※声の吹替ジョーン・バリー
    ジョン・ロングデン (フランク)
    ドナルド・カルスロップ (トレイシー)
    シリル・リチャード (画家)

 ≪あらすじ≫
 婚約者の刑事フランクとケンカしたアリスは、行きずりの画家に誘われるままそのアトリエに足を運ぶ。ところがそこで襲われそうになった彼女は、もみ合った末にナイフで画家を刺し殺してしまう。フランクの計らいでアリスは容疑を逃れるが、事件の真相を知る男が彼女をゆすり始める。

 ≪見どころ≫
 イギリス映画史上の記念すべきトーキー第1作*。
 後ろ向き・画面外での会話や、カーテンの向こうで叫び声だけで争うシーン、そして「ナイフ」という言葉が次第に強調されるシーンなど、ヒッチはトーキーの実験を的確かつ想像性豊かに試みている。

 主演のポーランド系チェコ女優A・オンドラのなまりが強すぎたため、脇に声の吹き替え女優 (J・バリーは後に『リッチ・アンド・ストレンジ('32)』で主演) を置いて同時録音(!)された。
 撮影中に急きょトーキー化が決まって撮り直されたため、一部のシーンはサイレント形式のまま。それでも、バタバタする会社側をよそに、すでにトーキー時代の到来を見越していたヒッチは意気揚々と撮りあげた。

 ≪*イギリス初の長編トーキー映画≫
 本作の公開は1929年6月29日。その少し前にもイギリスの会社がアメリカで製作したトーキー作品が1、2本あったが、純イギリス映画で、かつ芸術的・興行的に圧倒的な成功を収めたのは本作であったため、この 『恐喝』 が 「イギリス映画初の長編トーキー作品」 とみなされている。
 (なお、ニュース映像や実験映画など短編トーキーはすでに登場しているので、まったくの初めてではない。)

 ≪ヒッチはここだ!≫
 10分過ぎ、地下鉄の中で、子供にいたずらされる。



 『BLACKMAIL』

 監督/アルフレッド・ヒッチコック
 脚本・原作/チャールズ・ベネット
 撮影/ジャック・コックス
 音楽/ジミー・キャンベル&レグ・コネリー
 製作/ジョン・マックスウェル

 ゲインズボロー社 82分
 

【続き・・・】

 

 初の長編トーキー 『ジャズ・シンガー(1927米)』 以来、わずか数年で長足の進歩を遂げたトーキーの演出技法。1930年時には早くも現代映画と遜色ない域に達したが、すべてはヒッチら芸術家たちのあくなき試行と挑戦のたまもの。現代でも「定番」として使われる、数々の音の演出技法を発明したヒッチコックは、間違いなく五本の指に入るトーキー史の功労者だ。(以後の作品参照)


 
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