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【アメリカ映画】 2012.09.03 (Mon)

ジャームッシュの 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』


 ジム・ジャームッシュ監督の出世作 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』 をはじめて観ました。1984年米・西独。
 ぼく自身、色気づいたお年頃にはジャームッシュはもうオシャレの最先端じゃなくなっていたので、ずっと見そびれたままだったのですが、いや~よかった、評判どおりよかった。


 国を捨て、言葉を捨て、名前も変えてあこがれのニューヨークで暮らすウィリーのもとに、故郷ハンガリーからいとこのエヴァが身を寄せてくる。はじめは迷惑がるウィリーだったが・・・


 乾いたモノクロ画。ぶっきらぼうな沈黙と、映像編集。

 ・・・はオシャレなんですが、ヒロインのロングコート、男たちの帽子やカーディガン・・・、彼らのとにかくダサいファッションからは、東欧っぽいニオイがプンプンしてきます。(終盤の、ヤク中の黒人男のカッコには笑った。「メ~ン、ピース!」
 それに、それにだよ・・・


 ・・・はじめは迷惑がるウィリーだったが、再びエヴァが旅立つとなると、途端にさびしさが込み上げてくる。エヴァ会いたさに、親友のエディとクリーヴランドまで車を飛ばすウィリー。そこですっかり盛り上がった3人は、バカンスを気取って 「パラダイス」 フロリダへと繰り出すのだが・・・。


 ・・・それよりなんだ? アメリカなのにアメリカっぽさゼロのロケーションは!?
 ここがニューヨーク?
 北のエリー湖は一面霧で何も見えず。雪に覆われた駅の操車場は、旧ソ連の労働風景みたい。
 夢のフロリダはというと、「Welcome to Florida」 というペンキ看板だけでフロリダってことになっています。

 「西ドイツ製作」 ともあるし、ぼくはこの日実際に見るまで、ずっとヨーロッパの話だと思っていました。ほんとにここはどこなんだ!?

 ・・・でも、そこに打ち抜かれた。

 それが「パラダイス」と呼ばれる夢の国の、真の正体なのかもしれない。
 よそに生きる 「異邦人<ストレンジャー>」 にとって、自分たちの居場所やアイデンティティが不安定なように、それを受け入れる夢の 「パラダイス」 の側だって、内心ビクビクして足元が危うかったりするのではないか。

 ぼくは 「感覚的なおしゃれ趣味」 だとか 「大胆な編集」 は実はどうでもよくて、「薄っぺらなパラダイス」 をこういう形で表現するのか、というジャームッシュの視点のユニークさにこそハートを打ち抜かれました。


 ・・・3人は 「パラダイス」 フロリダへ向かうのだが、話すこともない長旅、安宿、あげくの果てにギャンブルで有り金をスッてと踏んだり蹴ったり。 退屈な町の退屈な部屋で留守番ばかりさせられるエヴァは、その足でハンガリーに帰る決意をする・・・。


 (以下ネタバレ・・・) 最後、ウィリーはエヴァを追いかけてハンガリー行き飛行機に乗ってしまうのですが、誰よりもアメリカに憧れ、誰よりもアメリカに染まろうとしていた男が一番、故郷に帰りたがっていたのではないか、そう思わせる 「オチ」 が哀しくも滑稽だった。

 一方のエヴァはというと、結局飛行機には乗らず元の安宿に戻ってくる。とくに目的もなく、夢の国アメリカを冷めた目で見ていたこの女は、それでも意外としぶとく、この国で生き抜いていくのだろう。

 見せかけだけのパラダイスに飛び込んできた、孤独なストレンジャーたちの人生の皮肉。
 物語はそこで唐突に終わりますが、センスのいい絶妙の幕切れでした。

 
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