【ヒッチコック全作品】 2012.10.05 (Fri)
『暗殺者の家 (1934英)』

≪感想≫
おそろしくまったりと、スピード感のない作品だった。
まずは冒頭、2度もスポーツ真剣勝負の邪魔をする娘にイラッ。「ほほえましい一家」 のつもりなんだろうが、ツカミからくじかれた。
それから、登場する役者たちは皆モッサリと魅力がなく、誰が誰やら区別がつかない。それだけに怪優P・ローレが極端に際立って見える。(ポスターや映像ソフトなどでは、不敵なローレの顔が大きく扱われているが、彼しか 「画(え)」 にならないのだから当然だ。)
クライマックスの銃撃戦ものんびりと、緊張感のかけらもなし。ドンパチが始まってるのに警察は 「ああしましょうこうしましょう」 とノホホンとしたもの。(当時の本物のロンドン警視庁が、暴力的に描かれるのを嫌って検閲をかけてきたのだそうだ。)
・・・ヒッチの出世作とされ、前後には地味に埋もれた作や失敗作もあるが、それらのほうがまだ見どころがある。この時期のヒッチコック作品でも群を抜く退屈さだった。
A・ヒッチコック監督第17作 『暗殺者の家 (1934英)』
出演/レスリー・バンクス (ボブ・ローレンス)
エドナ・ベスト (妻ジル)
ノヴァ・ピルビーム (娘ベティ)
ピーター・ローレ (アボット)
≪あらすじ≫
スイス旅行を楽しむローレンス一家は、ひょんなことから巨大な陰謀の一片を知ってしまう。それがもとで誘拐された娘を救うべく、知りすぎていた夫妻の戦いが始まる。
≪解説≫
後に 『知りすぎていた男('56米)』 としてセルフ・リメイクされたことで有名。(リメイク版の有名な主題歌 『ケ・セラ・セラ』 はここでは出てこない。)
監督として育ててくれた製作者M・バルコンに再び拾われたヒッチ。
それまでメロドラマやコメディも手がけていたヒッチが、以後サスペンスに専念。その名声を不動のものにしたイギリス時代最大のヒット作。数年来のスランプから脱し、イギリス時代の黄金期を迎える。日本初登場作。
何と言っても、墺ハンガリー出身の個性派悪役P・ローレが異彩を放つ。1931年のドイツ映画 『M』 の怪演で名を馳せたが、ユダヤ系の彼はナチスの迫害を逃れて同作の監督フリッツ・ラングと亡命。本作がその英米映画デビューであった。 ヒッチとは素顔も 「怪人」 どうし、ウマが合ったとか。
≪ヒッチはここだ!≫
33分ごろの夜の雑踏の中にいる…という一部情報があるが確認できず。イギリス時代はエキストラ代わりの面もあったので、不明な作品も多い。
『THE MAN WHO KNEW TOO MUCH』
監督/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/A・R・ローリンソン、エドウィン・グリーンウッド
撮影/クルト・クーラン
音楽/ルイ・レヴィ
挿入曲/アーサー・ベンジャミン 作、 カンタータ 『 時化 <ストーム・クラウド>』 (リメイク作と同じ曲。)
製作/マイケル・バルコン
ゴーモン・ブリティッシュ社 84分
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