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【ヒッチコック全作品】 2012.09.22 (Sat)

『三十九夜 (1935英)』

(ヒッチコック全作品) 
18.三十九夜

 ≪感想≫
 初見が遅めだったのが災いした。あれこれ詰め込んだ割には小ネタばかりでほとんど印象に残らない。 「“巻き込まれ型”の原点」 「イギリス時代の代表作」 と言われるとのちの傑作群と比べてしまい、スケールの見劣りばかりが目立つ。
 そもそも、行きずりの民間人に国家機密をベラベラしゃべる女スパイの設定がバカげている。追われる身となった主人公も、態度や行動がわざわざ事を荒立てる方向ばかり。作為が過ぎて不自然。盛り上げ方・つじつまの合わせ方が無粋だ。(*【続き…】へ)

 何より、主演の男女2俳優は華があってとても魅力的なのに、粗暴な男と軽い女、あてがわれたキャラクターが好きになれずもったいなかった。
 (男女が手錠でつながれるアイディアは色っぽくてワクワクするのに、ヒロインの胸ぐらを締め上げて 「なぜ信じない?俺の言うことを聞け」 って、なんてひどい男だ。 ヒロインもさんざ乱暴されたのに、男が無実だと分かった途端、うっとりとその寝顔をのぞきこむなんて!)

 ラストの 「記憶男」 は個性的でドラマチックだった。本筋がどうにもイマイチなので、あの幕切れで十分いい。



 A・ヒッチコック監督第18作 『三十九夜 (1935英)』

 出演/ロバート・ドーナット (ハーネイ)
     マデリン・キャロル (パメラ)
     ゴッドフレー・タール (ジョーダン教授)
     ルッチー・マンハイム (アナベラ)

 ≪あらすじ≫
 ロンドンで暮らすカナダ人外交官ハーネイは、謎の美女アナベラと知り合うが、悪の陰謀を阻止するスパイだという彼女は何者かに殺されてしまう。殺人犯の汚名を着せられたハーネイは、アナベラ最期の言葉 「39階段」 の意味を解くためスコットランドに向かう。

 ≪解説≫
 イギリス時代の代表作のひとつ。
 普通の人間が事件に巻き込まれ、無実の罪を着せられるという 「巻き込まれ型」 サスペンス。これはヒッチ作品の重要なスタイルで、後の傑作『北北西に進路を取れ』の原型にもなった。
 ヒロインのM・キャロルは、ヒッチコック作品初の“クール・ビューティ” (知的でクール&セクシーなブロンド女優)であったと、ヒッチ自身が公認している。
 また主役のR・ドーナットもハンサムな色気とユーモアがあり、ヒッチお気に入りの俳優であった。(契約の問題やドーナットが病気がちなためこの1本だけに終わったが、のちに 「彼を使いたかった」 「彼を想定した」 としばしば名前を挙げている。)

 原作のバガンはヒッチが最も影響を受けた作家であった。その作品は、冒険の中にも詩的な奥ゆかしさやユーモアをたたえていたという。ヒッチはそれをイギリス的な 「understatement」 (「嫌い」 を 「好ましくない」 、「良い」 を 「悪くない」 と言い換えるような、慎みや皮肉が込められた表現) だと説明している。

 ≪この頃・・・≫
 当時のイギリス映画界は、デヴィッド・リーンやキャロル・リードら名匠が世に出る直前の低迷期。演劇界が強い同国では、映画は労働者階級の娯楽として軽視されていた。その中で36歳ヒッチは孤軍奮闘、イギリス映画界を背負って立つ存在にまでなる。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 6分、ミュージック・ホールの外、やってきたバスの前を通り過ぎる。ゴミをポイ捨て。



  『THE 39 STEPS』

 監督/アルフレッド・ヒッチコック
 脚本/チャールズ・ベネット、アルマ・レヴィル(ヒッチ夫人)
 原作/ジョン・バカン
 撮影/バーナード・ノウルズ
 音楽/ヒューバート・バス
 製作/マイケル・バルコン

 ゴーモン・ブリティッシュ社 81分
 

【続き・・・】

 

 (*)たとえば後の 『北北西に進路を取れ』 では、①主人公は間違えて電話に出たことから悪の組織から狙われるように。②ホテルのメモ帳のペン跡から相手の行き先を知る。③若い女性の病室に逃げ込んだ主役K・グラントの茶目っ気。・・・など、単純なアイディアだが展開に無理がなく、時には息抜きの笑いにもなる。
 その点、古いイギリス時代は無頓着でこなれていない。(農家夫妻との「三角関係」もユーモアに欠ける。) 本作チャールズ・ベネットと 『北北西』 アーネスト・レーマン、脚本家の差もあるだろうか。

 ≪右腕ジョーン・ハリソン≫
 この撮影時、『レベッカ』 などの脚本に名を連ねることになるジョーン・ハリソンを秘書として採用。 ヒッチ家の家族旅行にも必ず同行していたほか、アメリカ定住にも付き従っている。
 ヒッチは 「本気で結婚したいと思った女性は、妻アルマとジョーンだけだった」 とのちに述懐するほどだったが、聡明なハリソンはヒッチの色目をかわしながらアルマ夫人や娘パトリシアとも良好な関係を保ち、賢くふるまい続けた。
 映画製作の上でも有能なブレインで、脚本づくりやキャスティングなどにおいてアルマ夫人と並ぶ発言力・影響力を発揮。最終的にはTV 『ヒッチコック劇場』 シリーズのプロデューサーになっている。


 
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