【ヒッチコック全作品】 2012.09.08 (Sat)
『間諜最後の日 (1936英)』

≪感想≫
目的が定まらず盛り上がりに欠く冒険・・・。ヒッチ自身の 「主人公は任務に消極的なうえ、その失敗は不愉快で度が過ぎた」 という指摘がすべて。(邦題の意味はそういうことなのね。)
ただ、スパイがチームで暗躍するという設定は、現代アクションにも通じていて楽しかった。それぞれの 「温度差」 も心理スリルとして利いていた。 とにかく好色のメキシコ人スパイを演じたピーター・ローレ! その存在感で、中途半端な主人公と軽いヒロインをカバーしてくれた。
雪山の暗殺シーンで、離れた場所にいる愛犬が主人の危機を察して騒ぐというアイディアも面白い。 またチロリアン・ショーの場面、ヒロインの不安感をコインのガラガラ音があおったり、明るいヨーデルはミスマッチのショック効果をもたらしたりと工夫が見られた。
A・ヒッチコック監督第19作 『間諜最後の日 (1936英)』
出演/ジョン・ギールグッド (ブロディ/アシェンデン)
マデリン・キャロル (エルサ)
ピーター・ローレ (モンテスマ将軍)
ロバート・ヤング (マーヴィン)
パーシー・マーモンド (ケイファー)
≪あらすじ≫
第1次大戦下、敵スパイ暗殺の命を受けたイギリス諜報部員ブロディは、アシェンデンと名を変えてスイスに飛ぶ。そこでアシェンデン夫人役のエルサや“将軍”と呼ばれる男と合流し、謎の紳士ケイファーを追いつめるのだが・・・。
≪解説≫
風光明媚なスイスを舞台にしたスパイ・サスペンス。自身も諜報員だったモームのスパイ短編集が原作で、主人公「アシェンデン」はいくつか映像化されているらしい。
本作は出演俳優とそのキャラクターに特長が見られる・・・
① 若き日の名優ギールグッドが映画初挑戦。
② ヒッチコック作品初の 「クール・ビューティー」(ヒッチ公認)のM・キャロルが、
前作 『三十九夜』 に続いて登場。
③ 本作の悪役は、ヒッチ作品の重要な傾向のひとつである 「上品で紳士的な
魅力ある悪役」 の第1号であった。(のちの 『ダイヤルMを廻せ!』 のR・ミラ
ンド、『北北西に進路を取れ』 のJ・メイソンなど。)
・・・が、その肝心のキャラ作りがことごとく軽い。 救いは個性派P・ローレ、彼の怪演に尽きる。
≪裏話≫
ヒッチは理想の女優像 「クール・ビューティー (知的でクール&セクシーなブロンド女性)」 であったマデリン・キャロルに対し、かしずかんばかりに尽くしたかと思えば、サディスティックにしごいたり、わざと奇抜で醜い演技をやらせたりと、病的なまでにご執心だったという。
のちのI・バーグマンほかお気に入り女優にも同様の態度で接しており、中にはあからさまでマズいセクハラ・エピソードも。
醜く太った自分への嫌悪と、それでも絶世の美女を支配したいという攻撃的な欲望・・・、その欲望を芸術に叩きつける偉大な才能があり、それが許された時代ではあったのだが。
≪ヒッチはここだ!≫
不明。
序盤、船を降りる主人公の前のヒゲの男かもしれない・・・という情報があるが別人では?
『THE SECRET AGENT』
監督/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/チャールズ・ベネット
原作/サマセット・モーム
撮影/バーナード・ノウルズ
音楽/ルイ・レヴィ
製作/マイケル・バルコン
ゴーモン・ブリティッシュ社 83分
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