FC2ブログ

【日本映画】 2012.07.16 (Mon)

黒澤映画の山田五十鈴

≪シリーズ・黒澤映画のヒロイン④≫

 黒澤明監督作品で最大の悪女といえば、文句なしで山田五十鈴さんです。 『蜘蛛巣城』 『どん底』 そして 『用心棒』 の3本。
 いずれも物語を裏であやつる妖婦・毒婦の役ばかりなのは、大女優の面目躍如。例によって悪役好きにはたまらないところです。


黒澤×山田五十鈴『用心棒』
(写真は勝手に拝借ごめんなさい。(c)東宝)

 傑作 『用心棒 ('61東宝)』 では、宿場町に巣食うヤクザ一家のおかみ。
 「1人斬ろうが100人斬ろうが、縛り首になるのは1ぺんだけだよ!」
 虚勢だけで腰抜けぞろいの手下たちにハッパをかける。 おめおめ逃げ帰ったバカ息子をぶっ叩いて 「なんで舌噛み切って死なないんだッ!」 は、あまりに身もフタもなくて笑ってしまった。
 それでいて形勢不利と見るや、ミフネ”三十郎”に 「あら、センセ~」 と色目を使ったりと、転んでもただでは起きない図々しさ。 自分で裏切っといて 「いじわるン」 はないでしょ 「いじわるン」 は。
 情けなく斬られていく男どもの中にあって、最後まで敵の一家に 「噛みついて」 死んでった。 ある意味、主役ミフネの次にカッコよかったのが五十鈴さんでした。



黒澤×山田五十鈴『どん底』

 ゴーリキー原作の 『どん底 ('57)』 では、貧乏長屋の大家の女房。
 ここでも弱い者いじめばかりしている心底憎ったらしい役ですが、ほつれた前髪、はだけた胸元、つやっぽく伸びたうなじ・・・。好いた男にせまる女の 「すご味」 というか、みにくい性根と同じところから匂いたつ、おんなの情念。
 美人だからとか着飾っているとかじゃない、ほんものの 「色気」 とはこういう事か、というものを見せつけてくれます。



黒澤×山田五十鈴『蜘蛛巣城』

 マクベスを翻案した 『蜘蛛巣城 ('57)』 になると、いよいよド悪女の真骨頂。野心家の夫をそそのかす 「マクベス夫人」 役。
 主君を殺せと迫る、暗闇に消え、また現れるシーンのうすら寒さ。 悪行の末、手についた血が落ちないとうろたえる狂乱の場は、原作にはないこの物語独自のハイライト。 悪趣味に一歩手前の壮絶さは、黒澤×五十鈴のコンビだからこその気迫と説得力があります。
 能面のような白塗りの無表情は、哀しみを背負った狂女の面 「曲見 (しゃくみ)」 を参考にしたのだとか。


 黒澤作品以外でも、成瀬巳喜男監督 『流れる (1956東宝)』 では、田中絹代、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子、栗島すみ子・・・、恐ろしいくらいの新旧大女優そろい踏みを、真ん中でどっしり支えていたのが五十鈴さんでした。 (その恐れ多さの何割かは五十鈴さんのせいだけど。)
 また、子供だったぼくには、TV 『必殺!』 シリーズでの仕事人たちの元締め役・・・、貫禄たっぷりの特別出演も忘れられない。ウルトラマンでいうゾフィー登場のような、もうけもんのうれしさがあった。


 ――7月9日没。 朝日新聞の訃報には 「美しき怪物」 との見出し。言い得て妙。合掌。

 
関連記事
00:56  |  日本映画  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

*Comment

コメントを投稿する (ログイン不要/コメントは承認後に表示されます)

URL  未記入でもOK
コメント
パスワード  あなたの編集・削除用。適当な文字を。
内緒  管理人だけに表示
 

▲PageTop