【ヒッチコック全作品】 2012.07.19 (Thu)
『巌窟の野獣 (1939英)』

≪感想≫
C・ロートンの人を食った悪役ぶりや、美しいM・オハラの気丈なヒロイン像はハマっていて上手かったが、せまい仲間うちだけでスッタモンダやってる物語自体にまったく緊張感を感じない。
ヒッチにすれば心はすでにハリウッド。先にロートンと交わしていた、共同制作の約束を果たすためだけの仕事だったのだろう。(ヒッチの渡米が決まり、ロートン側があわてて持ってきた企画だそうだ。)
A・ヒッチコック監督第23作 『巌窟の野獣 (1939英)』
出演/チャールズ・ロートン (ペンガラン卿)
モーリン・オハラ (メアリー)
ロバート・ニュートン (ジェム・トレハーン)
レスリー・バンクス (叔母の夫ジョス)
マリー・ネイ (叔母ペイシャンス)
≪あらすじ≫
19世紀初頭のイギリス、海賊が横行する港町コーンウォール。母を亡くしたメアリーは、この地で宿屋“ジャマイカ亭”を営む叔母のもとに身を寄せる。そこで叔母の夫が海賊の首領だと知った彼女は、判事のペンガラン卿を頼るのだが、このペンガランこそ海賊を陰であやつる悪の黒幕だった。
≪解説≫
ヒッチのイギリス時代最後の作品。
主演・製作者C・ロートンの秘蔵っ子で、のちにジョン・フォード監督に重用される女優M・オハラの出世作。 ヒッチとフォードは同じアイルランド系で女優の好みが似通っていた(マデリン・キャロル、M・オハラ、グレース・ケリー、ヴェラ・マイルス…)こともあってか、ハリウッドではフォードがよくスタジオに遊びに来ていたそうだ。
撮影のH・ストラドリングは、のちにハリウッドで 『イースター・パレード』 『マイ・フェア・レディ (オスカー受賞)』 など数々の傑作ミュージカルを手がけた名手 (『愛情物語('56)』 が素晴らしかった!)。 ヒッチ作品も 『スミス夫妻』 『断崖』 を担当。
≪ヒッチ渡米≫
'37年の初アメリカ旅行で、映画文化を尊重するアメリカ社会に触れたヒッチ一家。 各地で歓待され、ハリウッド各社によるヒッチコック争奪戦もはじまる。
すでにイギリス映画界の頂点を極めていたヒッチは、母国の居心地に満足していたのだが、アルマ夫人には 「映画より演劇」 意識が露骨なイギリス階級社会が我慢ならないものになっていた。また、ヒッチが孤軍奮闘する同映画界の惨たんたる低迷や、第2次大戦前夜の不穏な情勢 (--ドイツのポーランド侵攻はヒッチ渡米直後の'39年9月1日、英仏の対独宣戦布告は同3日--) もヒッチの渡米を後押し。
そしてヒッチは、もっとも熱心に働きかけてきたハリウッドの辣腕プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニックと契約を交わし、1939年3月1日、アルマ夫人とひとり娘パトリシアを伴ってアメリカに移住する。
その記念すべき第1作は、はじめ冒険ロマンス 『タイタニック』 が予定されていたが、ヒッチ側の意向により文芸ミステリー 『レベッカ』 に決定。
≪ヒッチはここだ!≫
不明。(時代劇なので、わざわざ衣装をあつらえてまで出ていない?)
『JAMAICA INN』
監督/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/シドニー・ギリアット
ジョーン・ハリソン (ヒッチのブレイン。各証言からヒッチの代理クレジットと思われる。)
原作/ダフネ・デュ=モーリア
撮影/ハリー・ストラドリング、バーナード・ノウルズ
音楽/エリック・フェンビー
製作/エーリッヒ・ポマー (ヒッチの監督デビュー作 『快楽の園』('25英独)のドイツ側製作者。)
チャールズ・ロートン (メイフラワー社は彼の会社。)
メイフラワー・ピクチャーズ 98分
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