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【ヒッチコック米時代】 2012.06.27 (Wed)

『レベッカ (1940米)』

(ヒッチコック全作品) 
24.レベッカ

 ≪感想≫
 現代人からすれば、もとが浮世離れしているマンダレーの住人より、終始オドオド・ペコペコしているヒロインのほうに問題を感じてしまう。日本娘ならともかく、アメリカ娘がここまでオドオド・ペコペコはないだろう。(実際、当時新進のフォンテーンは、ヒッチやオリヴィエら母国イギリスの大物に厳しくされて怯えていたのだそうだ。そう望んだヒッチの責任ではあるが、アルマ夫人や脚本J・ハリソンは 「びくびくしすぎ」 と起用に消極的だったという。)
 ヒッチ自身、「英米映画の違いは、女性にも受けるよう作らなければならないかどうかだ」 と言及しているが、これでは当時から古臭かったことだろう。 まだ 「イギリス・コンプレックス」 が (辛うじて!) 生きていた時代の、高貴な身分に嫁ぐことが無条件の幸福とされた時代だからこそのおとぎ話だ。21世紀にはもう通じない。



 A・ヒッチコック監督第24作 『レベッカ (1940米)』

 出演/ローレンス・オリヴィエ (マキシム・ド・ウィンター公)
     ジョーン・フォンテーン (公爵夫人)
     ジュディス・アンダーソン (ダンヴァース夫人)
     ジョージ・サンダース (ファヴェル)

 ≪あらすじ≫
 イギリスの貴族ド・ウィンター公と結婚したアメリカ娘が、謎の死を遂げた公の前妻レベッカの影に脅かされる。何かにつけレベッカの名を口にする家政婦ダンヴァース夫人。レベッカの死の真相をめぐってマンダレーの森に戦慄が走る…!

 ≪解説≫
 ヒッチが記念すべき渡米第1作に選んだ、ロマンティック・ミステリーの名作。端麗なモノクロ映像が織りなす美しくも恐ろしき世界。
 足音なくすぅーっと現れるダンヴァース夫人の冷たさ生気のなさ。 名前もなく肩書きだけで呼ばれる自己の否定と喪失感。そして死せるレベッカがすぐそばに生きて(--レベッカ目線のカメラワーク!--)、自分を飲み込んでいくような錯覚・・・。そんな 「まぼろしの存在感」 が怖い。
 モンスターや鮮血など視覚で怖がらせることは簡単だが、恐怖の対象を最後まで 「見せない」 ことの怖さを知り、それで実際に物語をもたせてしまうヒッチの確かな手腕。遺品や署名など、亡きレベッカの 「存在感」 が次第に増していく小道具使いも巧い。

 ヒッチコック作品を代表する悪役で、陰湿な 「嫁イジメ」 を見せるダンヴァース夫人は、「米映画協会AFIが選ぶ歴代悪役」 の第31位にもランクされている。(ちなみに同2位が 『サイコ』 のノーマン・ベイツ。)
 製作のセルズニックは、前年の 『風と共に去りぬ』 の歴史的成功で絶頂を極めた大物プロデューサー。 ヒッチのアメリカ進出を画策した (当時ヒッチ41歳、セルズニック38歳)
 アカデミー作品賞、モノクロ撮影賞受賞。(下の追記にセルズニックとオスカー裏話)

 ≪ヒッチはここだ!≫
 終盤、電話ボックスを出たファヴェル氏が警官とからんでいる後ろを通り過ぎる。
 ・・・とされているが後ろ姿なので確信は持てない。 スチール写真は残っているが、実際の登場場面はカットされたという話もある。



  『REBECCA』

 監督/アルフレッド・ヒッチコック
 脚本/ロバート・E・シャーウッド  (最終的な仕上げ。実際はマイケル・ホーガンが主筆。)
     ジョーン・ハリソン (ヒッチの個人ブレイン。ここではヒッチの代理クレジットと思われる。)
 原作/ダフネ・デュ=モーリア
 撮影/ジョージ・バーンズ (アカデミー白黒撮影賞)
 音楽/フランツ・ワックスマン
 製作/デヴィッド・O・セルズニック

 セルズニック・インターナショナル・ピクチャーズ 130分
 

【続き・・・】

 

 ≪ヒッチとアカデミー賞≫
 アカデミー作品賞、モノクロ撮影賞受賞。
 ヒッチいわく 「オスカーの栄誉は製作者セルズニックのもの」 とずいぶん素っ気ない。たしかに受賞に至った政治力と本作が醸し出すエレガントな風格は、ロマンチックな独裁者として知られたセルズニックの意向が大きい。

 もともとは本命視されたジョン・フォード監督の 『怒りの葡萄』 やチャップリンの 『独裁者』 こそ、オスカーにふさわしい社会派の力作であった。
 しかし日米開戦前夜という不穏な時勢 (授賞式は真珠湾攻撃を12月に控えた1941年2月)とあって、当たりさわりのない娯楽作を選ぼうとする心理が働き、ヒッチコックというイギリスのビッグネームを引き抜いたことで話題の本作に多くの票が集まったのである。

 また、当初ヒッチ側が仕上げた脚本は、(なんと!) 笑いも交えた俗気たっぷりのメロドラマだったそうだ。それを一刀両断に切り捨て、荘厳なゴシック・ロマンに作り直させたのがセルズニック。
 こういう本格派作品での米デビューがなければ、ヒッチコック生涯の評価も変わっていただろう。 現場への口うるさい介入で悪名高いセルズニックだったが、感情的だが開けっぴろげなアメリカ人からすれば、ヒッチの皮肉屋で意地悪めいた態度にも問題があったという。

 ちなみにヒッチは本作を筆頭に、『救命艇』 『白い恐怖』 『裏窓』 『サイコ』 とアカデミー監督賞に5回ノミネートされたが、当時の彼は娯楽映画の職人監督と見なされており、一度も果たせなかった。その穴埋めとして'68年、名プロデューサーを讃える 「アーヴィング・サルバーグ特別賞」 が贈られている。


 
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21:31  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(1)  |  EDIT  |  上へ↑

*Comment

■Re: 『レベッカ (1940米)』

ヒッチコック本当に面白いですね レベッカなんて壮大なスケールで感動です
takao mizumoto |  2016.10.11(火) 16:06 |  URL |  【コメント編集】

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