【ヒッチコック米時代】 2012.05.15 (Tue)
『逃走迷路 (1942米)』

≪感想≫
後の 『北北西…』 のようなスケール感はないが、アイディアに富んだ冒険に次ぐ冒険。 スリルの焦らし・はぐらかし・・・ひとつひとつが上手い。 何と言ってもラスト、「自由の女神」 はヒッチコック作品でも指折りの名シーン。あの生々しい叫び声は、今でも耳にこびりついて離れません。
単純に面白い大好きな娯楽作。
ヒッチほか多くが指摘しているように主演の男女が軽量級ではあるが、それもまたチャーミングに思えてきた。 敵の富豪パーティーに封じ込められたふたりのダンス・シーンは、ヒッチお得意の 「スクリーン・プロセス(背景合成)」 撮影。 ぼやけた背景に浮かび上がるふたりの表情は、たとえば一眼レフ写真のようなみずみずしい効果。
無実の主人公の窮地を救うのは、盲目の老人や無垢な赤ちゃん、荒野をゆく芸人たち。清く正しい心は黙っていても伝わるという、理屈抜きの 「勧善懲悪」 が時代だなあ。また、悪党にとって邪魔な主人公が監禁されるだけでずっと生かされておくのも、古き良き冒険娯楽映画のお約束。それもまたまたチャーミング。
・・・その一方で、悪党の側にも主義主張があり、それぞれ家族や生活、社会貢献を大事にしているという描写は、ただのアメリカ的プロパガンダに終わらないところだ。
A・ヒッチコック監督第28作 『逃走迷路 (1942米)』
出演/ロバート・カミングス (バリー・ケイン)
プリシラ・レイン (パトリシア・マーティン)
ヴォーン・グレイザー (盲目のマーティン翁)
オットー・クルーガー (牧場主トビン)
ノーマン・ロイド (フランク・フライ)
≪あらすじ≫
軍需工場が破壊工作員によって爆破された。犯人と間違われて追われる身となった工員バリーは、逃避行の中でパトリシアという娘に出会う。彼女は戸惑いながらもバリーの無実を信じ、運命を共にすることに。真相を知る男フライを捜して、ふたりの逃走迷路は果てしなく続く・・・。
≪解説≫
イギリス時代の 『第3逃亡者』 を練り直した、「平凡な市民が犯人に間違われ、追われる身になりながら真犯人を捜す」 というヒッチお得意の 「巻き込まれ型」 サスペンス。後の『北北西に進路を取れ』で結実する、このテーマの折り返し地点といえる。ラスト、自由の女神像での攻防が見もの。
製作のフランク・ロイドは、アカデミー賞初期の常連だった監督 (『カヴァルケード ('33)』『戦艦バウンティ号の叛乱 ('35)』)。フライ役の俳優ノーマンはその息子。
≪ヒッチはここだ!≫
65分ごろ、主人公たちの車が夜のN.Y.に着くシーン。通りの向こうで女性とショーウィンドウをのぞいている・・・が、暗いので言われないと気付かない!(スチール写真で確認)
難易度は最高クラス。
『SABOTEUR』
監督・原案/アルフレッド・ヒッチコック
製作/フランク・ロイド、ジャック・H・スカーボール
脚本/ピーター・ヴィアテル
ジョーン・ハリソン、ドロシー・パーカー
撮影/ジョセフ・ヴァレンタイン
音楽/チャールズ・プレヴィン
ユニヴァーサル 108分
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