【ヒッチコック米時代】 2012.04.05 (Thu)
『白い恐怖 (1945米)』

≪感想≫
開いていく心の扉、飲み干すミルク、ラストのピストル・・・、一般受けする凝った映像表現の多用は、ヒッチコック初心者のころは感心させられました。 ダリと作った悪夢のシーンは、さすがに今見ても色あせることなく刺激的です。
半世紀前の古いフロイト心理学なので、謎解きが夢診断のゲームっぽすぎるのが弱い。
しかし何と言っても 「バーグマン3部作」 の最初。 バーグマンは(ヒッチの趣味で)愛にもだえ苦しむ後2作より、このくらい気丈で健康的なほうが伸び伸びしていて美しい。 こっちが 「spellbound (うっとり、呪縛)」 です。
一方のペックは・・・好きな人は好きだろうけど、ヒッチコック的な色気や器用さがないんだよなあ。
なおこの主役ふたりについては、すぐに失神する男と 「私がついているから」 と励ます力強い女・・・。従来の男女像が逆転しているという指摘 (山田宏一、和田誠) がおもしろかった。
A・ヒッチコック監督第31作 『白い恐怖 (1945米)』
出演/イングリッド・バーグマン (コンスタンス・ピーターソン)
グレゴリー・ペック (アンソニー・エドワーズ院長)
レオ・G・キャロル (マティソン博士)
ミケル・チェーホフ (ブルロフ博士)
≪あらすじ≫
女医コンスタンスの勤める精神病院に、新院長エドワース博士が赴任する。やがてふたりは恋に落ちるが、白いシーツの縞模様を見たエドワース博士は突然恐怖に震えだす。果たして、「白」 と 「縞」 が意味するものとは・・・?
≪解説≫
『レベッカ』 以来、久々に契約主の製作者セルズニックと組んだ、ロマンティックな心理学ミステリー。
公開は終戦直後の'45年12月、戦勝国とはいえアメリカもまた心身ともに傷ついていた。精神分析を本格的に取り入れたストーリーが話題になり、「ニューロティック(神経症)映画」 と呼ばれてアメリカに心理療法ブームを巻き起こした。
シュルレアリスムの奇才サルバドール・ダリが、悪夢のシーンの美術を担当。なおこのシーンの演出は、『風と共に去りぬ』や『海外特派員』 を手がけたウィリアム・キャメロン・メンジーズという高名な美術監督で、ヒッチは直接関わっていない。
当初の構想では悪夢のシーンは約20分ほどあり、バーグマンが石像を破って現れるなど凝りに凝った内容だったらしい。 実際に撮影されたものの、難解すぎるという理由でお蔵入り。バーグマンはその出来の良さを惜しんだという。(ヒッチの性格からして、他人の才能をあまりよく思っていなかった?)
またバーグマンの紗がかかった美しさは、「当時ハリウッドで女優を最も美しく撮るキャメラマン」 とヒッチも認めたJ・バーンズの腕によるところが大きい (アカデミー白黒撮影賞 『レベッカ』 も彼。)
≪受賞≫
世界初の電子楽器テルミンを用いた妖しいテーマ曲が、アカデミー音楽賞受賞。
ほかアカデミー作品、監督、助演男優(M・チェーホフ)、モノクロ撮影、特殊効果賞にノミネート。(同年の主要賞はビリー・ワイルダー監督『失われた週末』。この作品も「心の病」を描くものだった。)
≪ヒッチはここだ!≫
35分ごろ、「エンパイア・ステイト・ホテル」のエレベーターから出てくる。タバコをぷかり。
『SPELLBOUND』
監督/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/ベン・ヘクト
原作/フランシス・ビーディング
撮影/ジョージ・バーンズ
美術/ジェームズ・バセヴィ、サルバドール・ダリ
第2班監督/ウィリアム・キャメロン・メンジーズ (悪夢のシーンの監督。失敗作だと思った本人の希望でノンクレジット。)
特撮/レックス・ウィンピー
音楽/ミクロス・ローザ (アカデミー音楽賞受賞)
製作/デヴィッド・O・セルズニック
セルズニック=ユナイト 111分
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