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【ヒッチコック米時代】 2012.02.17 (Fri)

『山羊座のもとに (1949英)』

(ヒッチコック全作品) 
35.山羊座のもとに

 ≪感想≫
 大時代的で魅力のないセリフ語り。合間に奇抜なキャラクターと 「未開の地」 のおどろおどろしさを挟んだ、旧世紀の見世物小屋のような映画。
 何よりバーグマンは、いかにも 「演技してます」 という感じ。骨太で凛とした彼女に、ここまで受け身の役は似合わない。この弱く愚かなヒロインのいちいちがもどかしい。 夫サムはだんだん単純・短絡的なキャラクターに。 そして屋敷を支配する陰険な家政婦は、有名なダンヴァース夫人 (『レベッカ('41)』) の小モノ版・二番煎じとしてどうしても比べてしまう。

 上の写真の国内DVDは、大昔のカラーテレビ放送のようなひどい色彩で、日本語訳もお粗末。 観賞を急ぐ必要なし。



 A・ヒッチコック監督第35作 『山羊座のもとに (1949英)』

 出演/イングリッド・バーグマン (ヘンリエッタ)
      ジョセフ・コットン (その夫サム・フラスキー)
      マイケル・ワイルディング (チャールズ・アデア)
      マーガレット・レイトン (家政婦ミリー)
      セシル・パーカー (提督)

 ≪あらすじ≫
 イギリスの植民地化が進む19世紀前半の豪州シドニー。 新総督のいとこで一攫千金を夢見る青年チャールズは、この地で成功を収めたフラスキー夫妻と知り合う。彼は、夫の冷たさに心を痛める妻ヘンリエッタの力になろうと献身的に尽くすが、上流階級への劣等感に取りつかれた夫サムの不興を買ってしまう。

 ≪解説≫
 歴史ロマンに男女の愛憎をからめた、ヒッチ久々の時代劇。
 しかしヒッチが愛するバーグマンのためだけに作ったような内容。情欲にもだえ狂う奇抜な役をやらせて喜んでいるふうで、観客には理解されなかった。 250万ドル以上の製作費を投じ、久々に故郷ロンドンで撮影した大作だが興行は大失敗、ヒッチの独立プロT.A.P社は2作目にして倒産した。 日本劇場未公開。
 タイトルは南半球・オーストラリアの比喩。(TV放送時の旧邦題 『ヒッチコックの南回帰線』)

 ≪裏話≫
 ヒッチは妻アルマと険悪になるほどバーグマンに惚れこんだが、演技のリアリズムを極めんとするバーグマンに対し、あくまでスクリーン上の楽しさ美しさを優先したヒッチ。(「イングリッド、たかが映画じゃないか」)。 3本のヒッチコック作品(ほか『白い恐怖』『汚名』)は彼女の代表作とは言いがたく、ヒッチの完全な片思いに終わった。(・・・バーグマンは後年、ヒッチの米映画協会AFIの功労賞受賞式('79)に駆けつけるなど、「友情」としては途絶えていなかったようだ。)
 この撮影直後、バーグマンは家庭を捨ててイタリアの映画監督ロベルト・ロッセリーニと駆け落ち。映画界を揺るがす大スキャンダルになる。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 13分ごろ、総督の屋敷に馬車が着くシーン、話をしている3人のうち真ん中の小さな男。(スチール写真でしかと確認。)



 『UNDER CAPRICORN』

 監督・製作/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ジェームズ・ブライディ
     撮影/ジャック・カーディフ、ポール・ビースン、イアン・クレイグ
         デヴィッド・マックスニーリー、ジャック・ヘイスト
     音楽/リチャード・アディンセル
   スクリプター/ペギー・ロバートソン (※旧姓シンガー。後にヒッチの個人秘書となり生涯支えた陰の功労者。)
     製作/シドニー・バーンスタイン

 トランス・アトランティック・ピクチャーズ社 117分
 

【続き・・・】

 

 冷酷で支配的な夫の下でもだえ苦しむ従順な妻・・・。本作のヒロイン像は、バーグマン'44年のオスカー受賞作 『ガス燈 (J・キューカー監督)』 と驚くほどそっくり。 北欧出身の大柄な体格に似合わない役だとは、『ガス燈』 の時にも言われたそうだ。

 バーグマンの自伝によると、ヒッチのカメラ長回し演出にほとほとウンザリして、さんざんヒッチに怒鳴り散らしたのだとか。そうでなくともこんな古い男目線の 「かよわい女」 ばかり演らされたら、そりゃロッセリーニ世界が輝いて見えるはずだと改めて同情した。


 
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