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【日本映画】 2011.12.02 (Fri)

小林正樹×橋本忍 『切腹 (1962)』

切腹
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 『切腹』 1962年松竹
 監督:小林正樹
 脚本:橋本忍
 主演:仲代達矢、三國連太郎、石濱朗、岩下志麻、丹波哲郎

 江戸の大名屋敷に、ひとりの素浪人が 「武士らしく切腹したいので玄関先を貸してほしい」 と訪ねてくる。 そういう無理を言っては小金をたかる、このごろ流行りの手口だ。
 それを見透かした家老たちは、ならばと聞き入れて切腹を迫るが、浪人は動じる気配もない。トツトツと身の上を語りだした男の真意とは・・・?



 江戸初期、世の中が天下泰平を享受する中で生まれた格差社会の暗部を鋭く衝く。
 「切腹」 という武士のしきたりをテーマに、うわべだけの美意識への皮肉、硬直した官僚主義への批判はよどむことを知らない。 弱者の側のさもしさを直視しながらも揺るぎなき告発。 何十何百年たった21世紀の今日でも、そのまんま通じてしまう現実に少なからずショックを覚えた。

 日本映画史上最高の脚本家・橋本忍大先生によるシナリオは完璧!
 素浪人と家老、それぞれが回想を広げるたびに驚くべき真相が明かされ、次の展開が開けていくスリル。 これこれこうだからこうなる・・・、プロットを緻密に論理的に積み重ね、物語を盛り上げる巧さは 「映画史にこの人あり」 たるゆえん。そんな橋本忍的思考がいかんなく発揮された、橋本忍脚本の真骨頂だ。
 ちなみにかの代表作 『七人の侍 ('54)』 はもともと、平凡な侍が切腹にいたる一日を描くつもりだったが資料が揃わず頓挫、あれほどの大作に発展した。本作はそのリベンジだったのだろうか。そういう話を聞いたことあるような無いような・・・。

 演技陣も充実。当時30歳という仲代の不気味な迫力。対する家老役・三國の鉄仮面は、そのまま昭和の閣僚か高級官僚のようで実に憎々しい。そして、冷たく据わったまま動かない丹波の目の演技・・・。 所作や発声がしっかりしていて時代劇ができる昔の役者さんはいいなあ。
 クライマックスの殺陣が、段取りのお遊戯みたいだったのが惜しまれる。(あの腕クロスは何なの?)

 しかし何と言っても、竹光での切腹シーンは凄惨のきわみ。
 海外では息をのむ緊迫感と高い芸術性が絶賛されると同時に、「ハラキリ野蛮」 という日本のイメージも植えつけてしまったいわくつきの作品だとか。 外国からの評価に弱い当時の(今も)日本では、自分たちの言葉でなくそんな借り物の評価ばかりで語られていたようだ。

 今回、何度目かの観賞でさすがに感動や興奮は薄れていたけど、あの切腹シーンは怖かったし目が離せなかった。 軽々しくおすすめはしません。

 
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