【ヒッチコック米時代】 2011.11.05 (Sat)
『めまい (1958米)』

≪感想≫
子供のころ、淀川長治さんの 『日曜洋画劇場』 で見たはじめてのヒッチコック作品です。 先祖の墓や謎の肖像画・・・、そしてJ・スチュワートの顔だけがウニャウニャする悪夢のシーンがインパクト満点。そのせいで 「奇抜、サイケ、おどろおどろしい」 というイメージがついてしまいました。子供には早すぎた。
個人的に、異性を支配したり自分色に染めたりの願望が薄いので、何度見ても感情移入できない。そういう気持ちがあったとしてもこれは極端すぎる。
主演のJ・スチュワート(当時50歳)が老けすぎていたというヒッチの指摘は合っていると思う。演技は文句なく素晴らしいが、極端にまじめすぎていて引いてしまった。ヒッチの屈折した女性支配願望がそもそもの問題なのだけれど。
A・ヒッチコック監督第45作 『めまい (1958米)』
出演/ジェームズ・スチュワート (ジョニー"スコティ"ファーガソン)
キム・ノヴァク (マデリン・エルスター、ジュディ・バートン2役)
バーバラ・ベル・ゲデス (助手ミッジ・ウッド)
トム・ヘルモア (エルスター)
≪あらすじ (ややネタバレ)≫
高所恐怖症の元刑事ジョニー“スコティ”は、旧友エルスターからその妻の尾行を依頼される。彼は挙動不審の妻マデリンを追って教会の鐘楼に登るが、高所恐怖症によるめまいに襲われ、むざむざとマデリンの自殺を許してしまう。
失意の中、町をさまようジョニーは、マデリンに瓜二つの娘ジュディと出くわす。果たしてジュディの正体とは・・・?
≪解説≫
次第に娘を追いつめる主人公の狂わしき執着心、幻想的な夢の描写・・・ヒッチの作品中もっとも官能的なサスペンス。愛するバーグマンやG・ケリーをその腕に抱けなかったヒッチの女性観が如実に描かれている。
ヒッチにとって理想とする 「正のヒーロー」 がケイリー・グラントなら、暗黒面を重ね合わせた 「負のヒーロー」 はジェームズ・スチュワートだったか。共に4作ずつヒッチコック作品に主演したふたり。次作 『北北西・・・』 と本作は、その明暗両面の集大成的な作品になった。
高所恐怖症はヒッチ作品の重要なキーワードで、らせん階段のめまいのシーンはヒッチを語る上ではずせない屈指の名場面。(レンズをズーム・アウトしながら、カメラを前方へドリー・イン)
グラフィック・デザインの名匠ソウル・バスが、三連作 『めまい』 『北北西に進路を取れ』 『サイコ』 と、彼にとっても代表作になった素晴らしいタイトルデザイン(オープニング映像)を提供している。 めまいのように妖しく渦巻く曲線は、映画のオープニングにコンピューター・グラフィック(CG)を用いた史上初の作品であった。(CG製作はジョン・ホイットニー・シニアというパイオニア。)
ほか、アカデミー美術・装置賞、録音賞にノミネート。
≪ヒッチはここだ!≫
11分ごろ、友人エルスターの造船会社の前を横切る。
『VERTIGO』
製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/アレック・コペル、サミュエル・テイラー
原作/ピエール・ボワロ、トマ・ナルスジャック
撮影/ロバート・バークス
美術/ハル・ペライラ、ヘンリー・バムステッド (アカデミー美術・装置賞ノミネート)
装置/サム・コマー、フランク・マッケルビー (アカデミー美術・装置賞ノミネート)
タイトルデザイン/ソウル・バス (op映像のこと)
音楽/バーナード・ハーマン
録音/ハロルド・ルイス、ウィンストン・レヴェレット (アカデミー録音賞ノミネート)
共同製作/ハーバート・コールマン
パラマウント 128分
【続き・・・】
≪裏話≫
ヒロイン役のK・ノヴァクは、ヒッチ好みの 「クール・ビューティ」 とは逆の、グラマラス・肉感的な女優であった。ヒッチは後々までキャスティングに不満を述べているが、実際はこういうタイプもお嫌いではなかったらしい。男ってそんなもんだ。
もとはヒッチの秘蔵っ子(=心の恋人)ヴェラ・マイルズに用意された役だったが、彼女の結婚・妊娠で破談になっていた。(製作前にヴェラが復帰できたにもかかわらず。)
同'57年、ヒッチは心臓の大手術。
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