【ヒッチコック米時代】 2011.10.10 (Mon)
『サイコ (1960米)』

(白黒映画)
≪感想≫
例のシーンが有名になりすぎて、公開当時の衝撃を体験できないのが残念です。
ヒッチ本来の狙いは・・・
・・・スター女優演じるヒロインが逃げる。しつこく付きまとう警官のスリル。彼女は逃げ切れるのか?・・・たどり着いたモーテルでシャワー。「あぁ、明日自首してサッパリやり直そう」。一件落着・・・で、あれ。 そりゃ予備知識なく見た人はびっくりだ。
だから、ベイツ荘の不気味さに最初から注目しすぎるのは、あらすじ解説としてよろしくないと思う。(・・・本人出演の「予告編」では堂々と解説しているけど。)
「事件」後、ベイツが部屋に駆けつけるシーンなどなど――。カメラを長回しして行動や心理をじっくり丁寧に描写しつつ、「床に落ちる額ぶち」の短いカットを挿入してメリハリやスピード感も出す。こういう熟達した職人センスが随所に散りばめられていて上手い。
あと、ガラスを引っかいたようなB・ハーマンの音楽が最高に怖い! コワイ、コワイ、コワイ。淀川長治さんになった気分。それくらい、コワイネー。
A・ヒッチコック監督第47作 『サイコ (1960米)』
出演/ジャネット・リー (マリオン・クレイン)
アンソニー・パーキンス (ノーマン・ベイツ)
ヴェラ・マイルズ (マリオンの妹ライラ)
ジョン・ギャビン (サム)
マーティン・バルサム( 私立探偵アーボガスト)
≪あらすじ≫
出来心から会社の金を着服したマリオンは、罪悪感に駆られながら逃走、片田舎のモーテルにたどり着く。そこの主人ノーマン・ベイツは陰気だが親切な青年。部屋を借り、ようやく我に返ったマリオンは自首を決意する・・・。
≪解説≫
戦慄のサイコ・スリラー。ヒッチの代表作のように目されているが、むしろ前作の 『北北西…』 でひと段落つけたヒッチが、文字通りサイコ・スリラーに転じた異色作といえよう。
今日ではこの分野に先鞭をつけた作品として名高いが、当時はあまりにも猟奇的なストーリーにスポンサーが尻込みしたという。それでも 『ヒッチコック劇場』 で培ったTVスタッフとの縁で、80万ドルの低予算で3600万ドルの大ヒットを記録した。
劇場予告編にはヒッチ自身が登場、「決してストーリーは話さないでください」「必ず最初から観てください」と観客に念を押し、以後アメリカの映画館では途中入場が禁じられるルールが定着した。
アカデミー監督、助演女優(J・リー)、モノクロ撮影、モノクロ美術装置賞にノミネートされるも無冠。(主要受賞作は、ビリー・ワイルダー監督『アパートの鍵貸します』)
≪ヒッチの発明≫
逃走中のマリオンの脳裏によぎる人々の会話や、ラストの役者が口を動かさず別録りの音声をかぶせて内心を語る 「独白(モノローグ)」 の手法。これらの「声」の使い方は、ヒッチコックその人が発明した映画技法である。(それぞれ『ジュノーと孔雀(1929英)』、『殺人!(1930)』)
≪ヒッチはここだ!≫
6分ごろ、マリオンが勤めるオフィスの窓の外に立っている。ツバ広のウェスタン帽。
『PSYCO』
製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/ジョセフ・ステファーノ
原作/ロバート・ブラック
撮影/ジョン・L・ラッセル
タイトルデザイン/ソウル・バス (オープニング映像のこと)
音楽/バーナード・ハーマン
パラマウント 109分
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≪裏話≫
ヒッチ自身が解説する有名な劇場予告編で、シャワールームで悲鳴をあげているのは妹役のV・マイルズ。彼女が殺されるのだとカモフラージュするため。
マリオンの同僚役は、ヒッチの実娘パトリシア。父の 『舞台恐怖症('50)』 『見知らぬ乗客('51)』 にも出演。
シャワー・シーンのたたみかける映像編集のアイディアは、タイトル・デザイン(オープニング映像)の名匠ソウル・バス。 彼は 「決してナイフが刺さる瞬間は見せない」 よう場面を構成し、ヒッチはその絵コンテに忠実に映像化した。(ヒッチはそのナイフや流れる鮮血の2カットだけ追加し、バスの意図よりも残酷さが直接的になっている。)
バスは 『めまい』 『北北西に進路を取れ』 『サイコ』 と、代表作といえる素晴らしいop映像をヒッチコック作品に提供している。
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