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【日本映画】 2011.09.07 (Wed)

勅使河原宏・安部公房 『他人の顔 (1966)』


勅使河原宏『他人の顔』2
(勝手に画像を拝借ごめんなさい。)

 『他人の顔 (1966 勅使河原プロ・東宝)』
 監督:勅使河原宏、原作・脚本:安部公房・・・、傑作 『砂の女』 の名コンビが手掛けた先鋭的な心理文学劇。

 事故で顔面に大けがを負った男。 失ったのは顔だけでなく、妻の愛と人間社会における 「仮面」 というべきものだった。
 やがて人工皮膚のあたらしい顔を手に入れた男は、別の人格と生活を演じはじめる・・・。

主演/仲代達矢 (男)
    京マチ子 (その妻)
    平幹二朗 (医師)
    岸田今日子 (看護婦)
    入江美樹 (ケロイドの女)


◆  ◇  ◆


 人間にとって顔とは何なのか、社会の中の 「仮面」 の何たるかを深い洞察でえぐり出すが、主人公たちの議論は理屈っぽすぎ。必要な描写で飽きさせはしないが、安部の脚本は文学をそのまま映画に置き換えただけの 「ト書き」 だ。

 でも、メフィストフェレスのように悪魔的な医師(平幹二朗)の言葉は印象的だった。人工の仮面がうまくいった祝杯のビアホール。 照明が一瞬消え、彼は言い放つ・・・

 「仮面が大量生産されれば、親兄弟も敵味方もない。帰る場所がなくなれば逃げる必要もない。あり余る自由の中で、あらためて自由を求める必要もない。
 孤独と友愛が溶けあう社会。”信頼”が無用の長物となる代わりに、”疑惑”も”裏切り”もなくなる・・・」

 そしてふたりに押し寄せる、顔のない仮面だらけの群衆・・・
 ・・・まさに日本がその理想を実現しているではないか。これだけみんな同じ顔・・・いや顔のない社会、世界でも類を見ない規模のものだ。異形を拒んでそこに生きる人たちは、さぞかし居心地がよいことだろう。

◆  ◇  ◆


勅使河原宏『他人の顔』

 そんな仲代さん、平さんを筆頭に、演技陣の充実が光る。

 本筋と並行して描かれる 「ケロイドの女」 役の入江美樹さんが美しい!(上の写真) すらりと伸びた脚、絶えず風が吹きつける豊かな黒髪、ラストの純白のワンピースのけがれなき透明感・・・。
 「長崎の海を覚えてる?」というセリフがあるが、その傷の原因らしきものがほのめかされる。 彼女の存在にも確かに、人間にとっての 「顔」 の大切な意義が込められている。

 もちろん京マチ子さんも、熟女好きにはたまらないオーラ。たまに地の関西弁が割り込んでくるけど、初めて見た大女優のヌードはこの上なく鮮烈だった。

 会社の秘書役のひとも美人。
 勅使河原監督は女優を撮るのが上手いのか、その腕にかかればあの!岸田今日子さんもゼンゼン 「あり」 だ (・・・失礼)。でもヨーヨーの娘役・市原悦子さんだけは「ない」 (・・・失礼 )。

◆  ◇  ◆

 前衛的な勅使河原映像、不条理の公房ワールドが余すところなく炸裂した野心作、観てもぜったい損はないだろう。 ただ、このブログ記事を読んでも損はないと言いきる自信がないのが恐縮しきりです。
 お好きな方だけどうぞ。

 
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