【ヒッチコック米時代】 2011.09.01 (Thu)
『トパーズ (1969米)』

≪感想≫
まったく熱意が感じられない凡作ではあるが、酷評されているほど退屈ではなかった。 しかし登場人物が入り乱れているのに役者が地味だし、セリフ頼みの政治劇では 「娯楽映像作家」 ヒッチが生きないのも大きな事実。同じキャスティングでじっくり連続TVドラマなら、まだ盛り上がっていただろう。
中盤、キューバ指導者からカバンを盗むシーン。それがどれだけ重要かの説明をはしょっている・セリフの中に埋もれているから、その場限りのハラハラ描写で終わってしまう。 ヒッチが 「マクガフィン」 と呼んだ、物語のカギを極力シンプルにする古き良き冒険劇の手法が、リアル志向のニューシネマ時代にはもうくたびれてしまっている。(声が聞こえない遠くからのショットも、ただ冗長なだけ。)
一方、キューバ指導者が想い人の家に踏み込むシーン。そのカット割りやカメラワークはとても美しかった (四方から糸で引っ張ってスカートを広げたそうだ)。 愛する美女に裏切られた醜男への感情移入は、老いてなお熱い 。
A・ヒッチコック監督第51作 『トパーズ (1969米)』
出演/フレデリック・スタフォード (アンドレ・デベロウ)
ダニー・ロバン (妻ニコル・デベロウ)
カリン・ドール (ファニタ・デ・コルトバ)
ジョン・ヴァーノン (キューバ指導者リコ・パラ)
ジョン・フォーサイス (CIA諜報員ノードストローム)
≪あらすじ≫
アメリカに亡命したソ連の高官の話から、ソ連からキューバへのミサイル配備計画が発覚。フランスの諜報部員アンドレがキューバに飛ぶ。
彼は地下組織の美女ファニタの助力を得て機密情報の入手に成功するが、謎の暗号 「トパーズ」 と呼ばれる裏切りの影が迫ろうとしていた。
≪解説≫
『007』 のブームに乗じたスパイもの。キューバ危機の内幕を描く。
前2作の失敗で力を失いつつあったヒッチが、ユニバーサル社が提案した企画をしぶしぶ丸呑み。単純明快な冒険劇を得意とするヒッチは複雑な本格政治サスペンスを消化しきれず失敗、「ヒッチもこれまで」 とささやかれた。
≪受賞≫
前'68年、名製作者を讃える米アカデミー特別賞≪アーヴィン・サルバーグ賞≫を受ける。渡米第1作 『レベッカ』 のアカデミー作品賞以降は監督賞ノミネート5度で無冠・・・、娯楽作家として長く賞とは無縁だったことへの穴埋めの意味があった。
(監督賞候補は 『レベッカ('40)』 『救命艇('43)』 『白い恐怖('45)』 『裏窓('54)』 『サイコ('60)』 の計5作。 作品賞候補は 『レベッカ('40=受賞)』 ほか 『海外特派員('40、レベッカとW候補)』 『断崖('41)』 『白い恐怖('45)』 の計4作。)
≪ヒッチはここだ!≫
33分ごろ、空港の廊下を車椅子で現れる。知人と出会って立ち上がり、歩いて去っていく。知人は「ヒッチ・・・」と言っている??
『TOPAZ』
監督・製作/アルフレッド・ヒッチコック
脚本/サミュエル・テイラー
原作/レオン・ユリス
撮影/ジャック・ヒルディヤード
音楽/モーリス・ジャール
共同制作/ハーバード・コールマン
ユニヴァーサル 127分
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