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【このアート!】 2020.02.02 (Sun)

大空の画家ブーダン

ブーダン『大空と海』
ブーダン 『大空と海』(1860)

今この寒空の下、19世紀フランスの画家ウジェーヌ・ブーダンの風景画に魅せられています。

人呼んで「空の王者」。キャンバスいっぱいに広がる大空を描かせたら、右に出る者はなし。

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画面の下に薄く押し込められた人間の営みなど、プッチンプリンの底のカラメルみたいなもの。

雲の合い間に遠く小さく描かれた鳥になって、そんな下界のひしめきを見下ろしながら、

誰にも邪魔されることのない大空の散歩を楽しんでいます。


産業革命で都市部の環境が汚染され、手つかずの「自然」が再評価され始めた19世紀ヨーロッパ。

緑ゆたかな郊外へのバカンスは、このころ形成された中間所得者層のあこがれとなり、

風景画は手軽な「癒やし」のアイテムになりました。

また画家にとっても、携帯に便利な「チューブ入り」絵の具の発明によって活動範囲が広がったことも、

風景画の発展を後押し。


そんな時代、北フランス・海の玄関口「ル・アーヴル」に生まれたブーダン (1824-1898)は、

パリ中央画壇の出世競争に浸りきることなく、地元ノルマンディーの海岸をのんびりと描き続けました。


ほんとうに誰にも邪魔されることのない、画面いっぱいの快活さと穏やかさ。

同じ風景画でも、写実的なコローやクールベのような堅苦しさはありません。

いっときの空気の移ろいを感覚的にとらえた画風で、続く「印象派」への大きな橋渡しを務めました。


地元ル・アーヴルの港は、かのモネ作 『印象・日の出』 (1872)で有名ですね。

じつはブーダンさん、記念すべき 「第1回印象派展」 にもささやかながら出品。・・・いや、

・・・と言うより、この地で育った少年クロード・モネに風景画を教えた師匠こそ、彼ブーダンその人。

ブーダンがいなければ、風刺漫画ばかり描いていたモネは風景画に目覚めることなく(モネ本人の弁)

当然 『印象・日の出』 もなく、「印象派」 は別の名前で呼ばれていたかもしれません。


「印象派の父」 とすら称される隠れた名匠が、このウジェーヌ・ブーダンなのです。
 
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