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【アメリカ映画】 2018.09.13 (Thu)

『大いなる西部 (1958米)』、対立の構図


大いなる西部(ポスター)


 名匠ウィリアム・ワイラー監督、グレゴリー・ペック主演の映画 『大いなる西部』。1958年。

 西部開拓時代のテキサス。ふたつの大農場の争いに巻き込まれた東部出身の男が、静かなる闘志と強固な精神によって困難に立ち向かっていく物語。
 西部劇といっても撃ち合いやアクションはあまりなく、雄大な自然の下での人間模様をスケール豊かに描く、ワイラー円熟の逸品です。
 有名なテーマ曲(ジェローム・モロス作)は、日本のテレビ番組でも「大いなるアメリカ西部」のイメージでよく使われていますね。カッコいい! 

 主人公の婚約者 「テリル」 という姓は初めて聞いたので調べたら、アングロサクソン系の苗字なんだとか。 つまり先祖はイングランドで、宗教はプロテスタント。
 その立ち居振る舞いから分かるとおりエリート志向が強く、「WASP (ホワイト、アングロ・サクソン、プロテスタント)」 といえばアメリカ保守派の代名詞になりました。
 もっともらしい正義を掲げて 「私的な戦争」 を始める独善は、21世紀のブッシュまったくそのまま。 理不尽であっても主人の後を1人2人と部下が続くシーンは、感動的な演出のようでいてゾッと寒気がした。

 一方、敵対する 「ヘネシー」 家はアイルランド系の苗字。(かの有名なコニャック・ブランデーを始めたリチャード・ヘネシーも、アイルランドから渡仏した移民。)
 アイルランドの宗教はカトリック。 イングランドとは領土や宗教問題で根深い対立を抱えているのはご存知の通りです。アメリカの観客にすれば、この両家の名前・風貌・言葉のなまりなどから、憎しみあっていることがひと目で分かる構図になっているのでしょう。
 アイルランド系の「負」のステレオタイプである、無教養な荒くれ息子たちはどうしようもないバカですが、親父さんは物事の道理が分かるひとかどの人物であることから、観客は両家を公平に見ていられるようバランスがとられています。(演じたバール・アイヴスがアカデミー助演男優賞を受賞したことから、アメリカ人観客もじゅうぶん彼らにシンパシーを感じたのだろう。)


 そして主人公 「マッケイ」。 あたまに 「Mac、Mc」 がつくのは 「~の子」 という意味の、典型的なスコットランド系の苗字。スコットランドではカトリックとプロテスタントが拮抗しており、両派の仲裁役としてまさにうってつけ。
 そもそも演じるG・ペックその人も、イングランドとアイルランド両方の血を引いているのだから、これ以上ないハマリ役です。(あと主人公は船長だというから 「海vs.大地」の気質という比較もできる。)

 ほか 「東部の人間=上品、教養、ずるがしこい、冷酷・・・」、「西部の人間=勇敢、義理人情、無知無学、野蛮・・・」 という対立構図もアメリカ映画の定番だし、ジーン・シモンズ演じるもうひとりのヒロイン 「マラゴン」 はスペイン系みたいなので、これも国境地帯テキサスでは大きな意味を含んでいます。

 ちなみにワイラー監督は、長く仏独が領有を争ったアルザス地方出身のユダヤ系。彼が生まれたときはドイツ領でしたが、現在はフランス領という複雑さ。ワイラーもまた、相容れない宿敵どうしの争いを肌に感じて育った人でありました。
 
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