【画像一覧】 2014.04.30 (Wed)
2014年4月の画像一覧
【この本!】 2014.04.26 (Sat)
シェイクスピアの女たち
シェイクスピア作品の新訳を手がける松岡和子さんの 『深読みシェイクスピア (新潮選書)』 がおもしろい!

『ロミオとジュリエット』 での、「 you」 と 「 thou」 の使い分け。
「 thou」 は 「お前」 「あんた」 「貴公」。 丁寧語の 「 you=あなた」 よりもくだけて親しみのある、下から上には使わない古語。
ロミオのことを、最初は丁寧語の 「You=あなた」 と呼んでいたジュリエットが、口づけを交わして付き合いはじめると 「thou」 に変わるという指摘。ぼくも初めて気付いて目からウロコ!だった。
男の翻訳者は、「おぉ、ロミオさま」 なんてジュリエットに清楚なお嬢様像を求めてしまいがちですが、オトナの色恋に憧れ、中学生で駆け落ちするジュリエットの実像が見えてくる。
結婚を 「考えてくださるなら」 なんて受け身ではなく、結婚 「するなら」 って同等の立場で一緒に考えるのが正しいんですね。そこまで踏み込んだシェイクスピアとその社会の、なんと開けたことか。

『夏の夜の夢』 のダメ女ヘレナ。
もうひとりのヒロイン、「モテ女」 ハーミアとのやり取りがふたりの立場・性格をズバリ。
ハーミア 「嫌えば嫌うほど、追いかけられるの」
ヘレナ 「愛せば愛するほど、嫌われるの」
ヘレナちゃん、恋人に捨てられているのに 「ぶってちょうだい、飼い犬にしてちょうだい」 なんて喜んでいるからダメなんだよ。
松岡さんの本で取り上げられたのは、1幕第1場の最後をしめくくる、ヘレナの長ゼリフ。
――恋人ディミートリアスに、ハーミアを追いかけさせてやろう。私には高くつくけど、そうやって彼を見ていられるだけで幸せ――
――それが 「 enrich my pain = わたしの傷を豊かにする」 という部分。
松岡さんは、この「 蹴って、ぶって」なM女ヘレナを強調して、「・・・あの人の姿を見て、自分の傷に塩をすりこんでやろう 」 と訳し直されたようですが(舞台版)、そこまで行くとどうだろ、Mとかいう以前に人間としてヤバイ。
「enrich my pain」=「わたしの傷はかさぶたにはならない」・・・いや、「わたしは傷をなめていられる」 くらいでも伝わるんじゃないかな。自分の不幸に酔うばかりで何の解決にもなっていないヘレナの屈折が表れていませんか?
・・・ぼくは20世紀までは、男たちに振り回されるヘレナが可哀想すぎると思ってたけど、「喪女」 「腐女子」 「こじらせ女子」 が立派に?市民権を得た現代では、哀しくもおかしいダメ女の生態が実にリアルに映えて、これも目からウロコ!でした。ヘレナを見る目が変わった。
いま、『夏の夜の夢』 を松岡訳で読みなおしているところです。

ほか、自分の言葉を持たず、親の言うなりをなぞって生きてきた(『ハムレット』の)オフィーリア、その言葉づかいのメカニズム。ぼく自身、お人形さんのような彼女を好きになれなかったその背景がなるほど判明し、これも得心がいった。
シェイクスピアの翻訳は、生の息づかいが伝わる言葉の面白さ、実際にお芝居・読書として楽しむなら定番の小田島雄志版なんだけど、松岡和子さんの訳はひとつひとつの英語にとても丁寧に寄り添っていて、本当に発見がある。勉強になる。
でも 『ロミジュリ』 は、(松岡さんもびっくりしてらした、)ジュリエットが 「わし」 「お前」 と言ってる古い坪内逍遥の訳に再発見がありそう。松岡監修の歌舞伎バージョンかなんかでやってくれないかな?
(――ところで、道化のボトムを演じる松岡さんの学生時代の写真、イモトみたいで可愛かったですよ。)
【アカデミー賞全作品】 2014.04.23 (Wed)
『我等の生涯の最良の年 (1946米)』

≪感想≫
ちょっとしたきっかけで喜怒哀楽が変わる、人間生活の機微の描写はさすがに上手いです。
軍服を脱いだ途端に平凡な男に戻ってしまうフレッドと、それを一瞬で見抜く妻マリーの表情。 大量復員で仕事のイスは奪い奪われ(*)、国の英雄も企業にとっては宣伝材料でしかない現実。そして生活力のない色男にほれる優等生の娘・・・。
今回(2014年)はこの生活力のない、ちっぽけなプライドばかりで爆弾落とすことしか能のないフレッドに最後の最後まで!共感できなかったのがマイナス。まぁそういう 「戦争の英雄」 も多かっただろうから、それも含めての応援歌か。
(*)機上から見える、空港にびっしりと並ぶ用済み戦闘機が暗示的。この様子じゃ軍需産業は早く次の「消費」がしたくてたまらないだろうな、と背筋が寒くなった。終盤にまた出てきたので驚いた。
オスカー度/★★★
満足度/★★★ (今回、若い頃ほど感動はしなかったけど、やはり良心的な秀作なので。)
『我等の生涯の最良の年 (1946米)』
監督/ウィリアム・ワイラー
主演/フレドリック・マーチ (アル・スティーブンソン)
ダナ・アンドリュース (フレッド・デリー)
ハロルド・ラッセル (ホーマー・パリッシュ)
マーナ・ロイ (アルの妻ミリー)
テレサ・ライト (アルの娘ペギー)
ヴァージニア・メイヨ (フレッドの妻マリー)
≪あらすじ≫
第2次大戦が終結し、故郷に復員したアル、フレッド、ホーマーの3人。しかしフレッドと新妻マリーの心は離れ、戦場で両腕を失ったホーマーは家族や恋人を悲しませる。そして幸せな家庭におさまったアルですら、社会の急激な変化に直面する。
≪解説≫
戦勝国アメリカにも例外はない戦争の傷跡。さまざまな問題を抱えながらも、希望を胸に生きる帰還兵たちを描いた秀作ヒューマン・ドラマ。困難な状況でも、明るく希望を忘れないアメリカの国民性がよく表れている。
娘役のT・ライトは、終戦直後の日本でアイドル的人気を博した。同じワイラー監督の'42年作品賞 『ミニヴァー夫人』 で助演女優賞を受賞している。
≪受賞≫
アカデミー作品、監督、主演男優(F・マーチ)、助演男優(H・ラッセル)、脚色、音楽、編集賞の計7部門を受賞。(候補9部門中) またH・ラッセルに特別賞(Special Award=のちの「名誉賞Honorary Award」)。
(他の作品賞候補 『素晴らしき哉、人生!』 『小鹿物語』 『ヘンリー5世』 『剃刀の刃』)
実際に腕を失いながらも義手で熱演したH・ラッセルが、助演賞のほか特別賞も受賞。演技経験は初めてだったそうだ。あの「窓ガラス」のシーンは心に突き刺さるものがあったし、ラストの結婚式も本当に素晴らしかった。
監督賞ワイラー(『ミニヴァー夫人('42)』) と主演賞F・マーチ(『ジーキル博士とハイド('31)』)は2度目の受賞。
国内興行収入1000万ドル越えの大ヒットを記録。アカデミー作品賞としては別格作 『風と共に去りぬ ('39)』 以来で、この大台に乗るようになるのは、授賞式のTV中継が始まる 『地上最大のショウ ('52)』 あたりから。(ちなみに『風…』はさらに1ケタ多く稼いでいる。)
『THE BEST YEARS OF OUR LIVES』
製作/サミュエル・ゴールドウィン (↓ 以下、ハリウッド映画史上の大・王道のビッグネーム!)
監督/ウィリアム・ワイラー
脚本/ロバート・E・シャーウッド
原作/マッキンレー・カンター
撮影/グレッグ・トーランド
音楽/ヒューゴー・フリードホーファー
編集/ダニエル・マンデール
ゴールドウィン・プロ/170分
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- 『紳士協定 (1947米)』
- 『我等の生涯の最良の年 (1946米)』
- 『失われた週末 (1945米)』
【 NBA】 2014.04.20 (Sun)
NBAプレイオフ2014 ≪ウェスト中堅組≫

米バスケNBAは、2013-14レギュラー・シ-ズンが終わり、いよいよ今季の王者を決めるプレイオフが始まります。
今季も極端な西高東低。負け越しチームが出場するイースタン・カンファレンスなんか無視して、し烈な 「ワイルド・ワイルド・ウェスト」 だけ観ていました。史上五指に入る高レベルだそうで、勝率5割台では上位8枠に入れないのが恨めしい。(西9位サンズは東なら3位タイ!)
その過酷を極めたウェスト最終枠争いほかのまとめです。もっと上に勝ち上がれそうなスパーズ、サンダー、クリッパーズの3強は、また次の回戦の時に書きます。(サンダー残るかなあ・・・。)
※54勝28敗で並んだロケッツとブレイザーズは、直接対決の成績でロケッツがホームコート権を獲得。西4位vs.5位として1回戦で激突――
現役最高のセンター、D・ハワード(リバウンド4位)が加わったヒューストン・ロケッツが、上4位シード内を守った。
ただ、J・ハーデン(得点5位)を筆頭にした猛攻撃(チーム得点も2位)はとても魅力的だが、失策<ターンオーバー>が多く守備が心もとない。また、分析・対策が極み尽くされるこの短期集中決戦、ファールが多くフリースローが下手なハワードが手玉に取られる場面を何度も見てきた。彼らを着実に勝ち上がれるチームと呼ぶには疑問符がつく。
今季の台風の目、意外な伏兵ポートランド・トレイルブレイザーズは、けっきょく西5位に落ち着いた。
エースのL・オルドリッジ(得点8位)と昨季の新人王D・リラードを軸に、先発5人が固定してほぼ全出場。シーズン前半はウェスト首位を争う快進撃で驚かせた。しかし先発以外で見るべきはモー・ウィリアムズのみ(他は出場15分にも満たない)。主力の酷使がたたって後半戦失速し、激戦ウェストの中位に埋もれてしまった (オルドリッジの一時離脱が大きく響いた)。
それでも得点力はリーグ3位。1回戦ロケッツ相手なら、楽しい試合を繰り広げて勝てるかもしれない。
昨季いきなりの大躍進ゴールデンステイト・ウォリアーズは、今では「万年ドアマット」の20年がウソのような堂々たる強豪に。西6位。(vs.西3位クリッパーズ)
その立役者、S・カリー(得点7位)とK・トンプソンの長距離砲ブラザーズは今季もスプラッシュ!(3ポイント成功数は1位と2位でまた記録更新。) さらに万能選手A・イグドラやJ・オニールほか、開幕後も積極的な補強を重ねて戦力をしっかりと固めた。
ただインサイド陣、今プレイオフこそ主軸のD・リーは万全・・・なんだけど、今年はセンターのA・ボーガットが肋骨骨折、1回戦出場はムリときた。
相手は優勝候補の難敵クリッパーズだが、苦手とする堅守型チームよりはまだ良かったか。(このNBA2大ドアマット・チームが、いまやドル箱カードになるなんて! しみじみ・・・)
・・・長くなったので、ウェスト最終枠争いについては次の記事へ。
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- NBAプレイオフ2014 ≪ウェスト3強~サンダー&クリッパーズ≫
- NBAプレイオフ2014 ≪ウェスト中堅組≫
- NBAプレイオフ2014 ≪ウェスト最終枠争い≫
【 NBA】 2014.04.18 (Fri)
NBAプレイオフ2014 ≪ウェスト最終枠争い≫

いよいよ始まるNBAプレイオフ2014。
≪ウェスト中堅組≫の続き、激戦のウェスタン・カンファレンス最終枠争いについてです。
昨季は球団初のプレイオフ4強(カンファレンス・ファイナル進出)メンフィス・グリズリーズ。
注目された今季、M・ガソールら主力の故障でプレイオフ出場すら危ぶまれていたが、選手総動員の地道な底上げと故障者の復帰で持ち直し、何とか上位8枠内に食い込んだ。
しかし肉弾ディフェンス(失点3位)は相変わらず強力な反面、得点力不足は解消されないまま(下から4番目)。得失点差はかろうじて黒字というあやうさが、このチーム成績を物語っている。
プレイオフでは手堅い守備力が重要視されるので、今季も上位食いが期待できるかもしれない。選手層が薄い2位サンダー相手ならなおさらだ。相手にとってはスパーズやヒートと同じくらい当たりたくない、隠れたジョーカーだろう。が、とにもかくにも、計算できる点取り屋がほしかった。
西7位。(vs.西2位サンダー)
2011年の覇者ダラス・マーベリックス。昨季は 「燃え尽き症候群」 だったのか、名物オーナーのM・キューバン体制になって初めてプレイオフを逃した。
明けて今季、大黒柱D・ノヴィツキーが通算得点歴代10位に乗せて完全復調をアピール。黒子に転じたV・カーターやS・マリオンといった元スターたちがこれを支え、新加入の点取り屋M・エリスや長距離砲手J・カルデロン(3p%5位)もいいカンフル剤に。キューバン兄ちゃんの豪勢なスター買いは一時期ほどではなくなったが、それなりのメンバーが揃っている。インサイドの層がやや薄いかな。
西8位。(vs.西1位スパーズ) ・・・決して悪くはないが、攻守・選手層すべてに充実した全体首位スパーズにはやはり見劣り。今季0勝4敗。
・・・これらウェスト最終枠をめぐる三ッ巴は、フェニックス・サンズが最後の最後に脱落。西9位。
それでも、'90年代の名手J・ホーナセックが新監督として古巣に復帰、チームのお家芸であるガード主体の速攻をよみがえらせ、無印からの大健闘を見せた。「48勝34敗、最終勝率.584」 は立派立派、低レベルなイーストなら3位タイなんだから。(つくづく理不尽だなあ。)
G・ドラギッチ(追記…MIP急成長選手賞)、E・ブレッドソー、M・ゴーダットらはまだ若く脂が乗ってきたところ。来季以降にぜひ期待したい。
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- NBA2013-14、西!前半戦メモ
【 禁煙物語】 2014.04.15 (Tue)
禁煙物語・第6夜 『回想』

≪禁煙6日目 (※2005年3月6日)≫
ほんの少しだが昨日より楽になった。
時々吸いたくなるが、「吸いたい吸いたい欲求」 というより 「吸えたらいいな願望」 という感じ。
実際、無謀にも放置されているタバコが目に入ると、吸いたいなと思う。もちろん、手を出すつもりはこれっぽっちもない。
何かに集中しなくても、タバコを意識しない時間があった。
なお、胸の痛みも忘れていたが、こうして回想すると何だかまだ苦しいような・・・。
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- 禁煙物語・第7夜 『ピエロ』
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- 禁煙物語・第5夜 『ひとりにして』
【全世界音楽】 2014.04.11 (Fri)
バート・バカラック、Myベスト3!

作詞ハル・デヴィッドとの名コンビで、今も歌い継がれる名曲の数々を作曲。そのメロディ・ラインと美しい編曲は、のちの世界の、日本のポップスにどれだけ影響を与えたか。かならず名前が挙がる大ヒットメーカーです。
一番のお気に入りは、バカラック・ソングの名歌手ディオンヌ・ワーウィック、その出世作となった 『ウォーク・オン・バイ~Walk On By~』。1964年。
「通りで私を見かけても 涙は見せたくないから そのまま通り過ぎて」 という歌。
♪
静かに淡々と、だけど少し早足に刻まれるリズムがせつない。 「Don't!Stop!」
大人のジャズっぽくラテンっぽく・・・。
そしてバカラックといえば 「♪パ、パ、パ」 と入るフリューゲルホルン! トランペットの大きいやつです。
ぼくが子供のころは、ワーウィックさんは大人すぎてよく分からなかった。「清水アキラのセロテープものまね」 に似てるし(ゴメンナサイ)。でも今聴いたら絶対いいよね、子供には分からないよね。
「バカラックのミューズ」 と呼ばれた彼女、ご自身のための曲はもちろん、他のバカラック作品もほとんどカバーしています。(記事上のCD 『バカラック・コレクション』 が一番いいベスト盤。)
ジャッキー・デシャノン 『世界は愛を求めてる~What The World Needs Now Is Love~』
1965年。
直訳するなら 「世界がいま求めているものは、愛だ」。
歌いだしは 『遥かなる影(Close To You)』 と似てる。
♪
大きな歌だから、朗々と余裕で歌い上げるワーウィックほか大御所のバージョンもいいけど、このJ・デシャノンは切々と訴えるところがいいんだ。「♪everyone~」 で音が弾むところが好き。
この曲は名コンビ、ハル・デヴィッドの作詞の力が光ります。
「私たちにはもうじゅうぶん畑はある、光も川もある
だから誰かのため、ではなくみんなのための愛を」
でもバカラック作品でも一番親しまれているのはやっぱり、カーペンターズ 『遥かなる影~Close To You~』 でしょうね。1963=1970年
♪
今さら何をいわんや。 カーペンターズ作品でもやっぱり、一番好きなんだな。
編曲はリチャード兄さんだそうですが、バカラック編曲とはまた違ったきらめきで聴かせてくれます。でも間奏にはちゃんと、フリューゲルホーンふうの「♪パ、パ、パ」が入ってる!
鳥や星や女の子たちを魅きつける、素敵な 「あなたに寄り添って」 という歌。なのになぜこんな邦題なのか、名前を言われても一瞬ピンとこないのが不満なところです。
(※下の【続き・・・】に、バカラック作品の「My王道ベスト」)
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【アカデミー賞全作品】 2014.04.08 (Tue)
『失われた週末 (1945米)』

≪感想≫
残念ながらさほど心に残らなかった。 当時は画期的だったのだろうが、日常生活の中の絶望をリアルに描くのは現代映画では普通なので。
(以下ネタバレ・・・取ってつけたような希望あるラストは、バッド・エンドを認めない当時のハリウッドの慣習に従ったのだろうとは、容易に想像できます。)
オスカー度/★★☆
満足度/★☆☆
『失われた週末 (1945米)』
監督/ビリー・ワイルダー
主演/レイ・ミランド (ドン・バーナル)
ジェーン・ワイマン (ヘレン)
フィリップ・テリー (ドンの兄ウィック)
ドリス・ダウリング (グロリア)
≪あらすじ≫
売れない作家ドンは、兄ウィックや恋人ヘレンの忠告の甲斐なく、酒におぼれる日々を送っていた。酒がなくなれば兄から預かった金を酒代にし、あげくの果てに商売道具のタイプライターまで質に入れようとする始末。ついにアル中患者の更生施設に収容されたドンは、人生に絶望して自殺を図る。
≪解説≫
後のコメディの名匠B・ワイルダー監督による社会派ドラマ。それまでは喜劇の道化役にすぎなかったアルコール中毒の実態を、初めて真正面からとらえる。
スタジオ内のセットを飛び出し、実際のニューヨークの街角や酒場でロケしたことも当時はまだ珍しかった。ワイルダーが好んで舞台にしたニューヨーク。東海岸系・社会派ニュー・シネマのはるか源流と言えるか。
≪受賞≫
カンヌ映画祭グランプリ、主演男優賞(R・ミランド)
アカデミー作品、監督、主演男優(R・ミランド)、脚色賞の、計4部門を受賞。(候補6部門中)
(他の作品賞候補 『白い恐怖』 『錨を上げて』 『聖メリーの鐘』 『ミルドレッド・ピアース』)
第2次大戦が終結したこの年、本作やヒッチコック監督の 『白い恐怖』 など、人間心理の奥底に迫ろうとする作品が目立った (「ニューロティック<神経症>映画」と呼ばれ、実際に心理学ブームが起こったそうである)。 圧倒的な戦力を誇示して勝利したアメリカも、やはり心身ともに疲弊していたのだろう。
アカデミー賞において、心身にハンディキャップを抱える人物の演技がもてはやされる最初の例にもなった。
ワイルダー監督にとっては、前年のフィルム・ノワール 『深夜の告白』 が大きな出世作。その成功と注目が本作の受賞の勢いになった。『深夜の告白』 は作品賞 『我が道を往く』 に阻まれてオスカー獲得はならなかったが、代わりに本作で、『我が…』 の続編 『聖メリーの鐘』 を完全に退けて雪辱を果たす格好となった。
この1946年に正式に始まったカンヌ映画祭、その最初の最高賞(当時は「グランプリ」)受賞作でもある。(ほか『無防備都市』『田園交響楽』『逢びき』など全11作品が選ばれた。)
『THE LOST WEEKEND』
製作/チャールズ・ブラケット (共に出世街道を駆け上がったワイルダーとの名コンビで知られる。)
監督/ビリー・ワイルダー
脚本/チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー
原作/チャールズ・R・ジャクソン
撮影/ジョン・サイツ
音楽/ミクロス・ローザ
パラマウント/101分
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【 禁煙物語】 2014.04.05 (Sat)
禁煙物語・第5夜 『ひとりにして』

≪禁煙5日目 (※2005年3月5日)≫
(土曜日で休み。)
体がだるいのは深酒のせいか。慢性的に吸いたい気分だが、昨夜の苦しみに比べればぜいたくは言えない。
もはや 「肺にガツンと刺激」 欲求は消え、「どんより低空飛行」 というイメージ。
タバコはまずいと思えるようになった。
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【『ガラスの仮面』全巻】 2014.04.01 (Tue)
ガラスの仮面500巻≪四月の馬鹿≫レビュー
発売延期に延期を重ね、第49巻からちょうど100年後の 2112年9月3日 に光子コミックス配信。

(ヤフーアバター)
【サイボーグ月影千草】
一度は絶命しながら、遺伝子サイボーグ技術でよみがえった月影千草。不死身の体を得た彼女の脳裏に、「『紅天女』 はだれにも渡さない・・・!」 という野心が芽ばえはじめる。
「わたしの名前は 『紅天女』・・・!」
「科学」 の力を借りて 「神話」 と一体化していくサイボーグ月影。「オーホホホ・・・!」 と笑う最強の紅天女に戦慄を禁じえない。そして裏で糸を引く、鷹通グループ総帥・鷹宮紫織の影・・・!
【亜弓の秘策】
北島マヤと姫川亜弓、ふたりの紅天女候補に対して日に日に冷淡になる月影。マヤは師の豹変にショックを受けるが、その野心に気付いた亜弓はあせりを隠せない。このままでは自分の存在意義が失われてしまう・・・。そんな折、ある雑誌の広告が亜弓の目に留まる。
「すごーくおもしろいんだ! すごーくゆかいなんだ! でも、どんなお話かは、正月号のお楽しみ!」
狂いだす歴史の歯車。そのとき亜弓が見つけた雑誌の広告・・・。今後どんな展開につながるんだろう??
なお、作中に登場する 「マツシバ・ロボット工場」 は、トーキョー・シティに実在する大手ロボット・メーカー。ネコ型の子守りロボットやタイムマシンを製造しているそうだ。
【速水真澄、還暦】
速水真澄が還暦を迎え、大都芸能で盛大なパーティが催される。
聖唐人は、先に糖尿と骨粗しょう症と便秘で亡くなった水木秘書のためにも、マヤとの愛を成就するよう重ねて真澄にうったえる。
真澄 「愛しているだと・・・? 相手は11も年下の49だぞ・・・。おれともあろうものが・・・!」
通算147回目の「おれともあろうものが・・・!」。および8722回目の「白目」。(筆者調べ)
還暦でも若々しい真澄。 一方、すっかり薄くなった聖唐人の頭髪が、時の流れを感じさせる。
・・・連載中断・発売中止がもはや恒例となった 『ガラかめ』。前巻から100年待たされたことで、またしてもファンの賛否両論で紛々。
ちなみにすっかり出番がなくなった桜小路優。『別冊ヤング花とゆめ増刊号ふろく』 (2112年春)の雑誌連載時では 「初孫が生まれてそれなりに幸せにやっている」 そうだが、コミックスでは削除されて無かったことにされている。
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