【ヒッチコック米時代】 2011.12.25 (Sun)

『裏窓 (1954米)』

(ヒッチコック全作品) 
40.『裏窓』

 ≪感想≫
 マイ・フェイバリットです。ヒッチのテイスト&カラーが過不足なく詰めこまれた、これぞ 「ヒッチコック・タッチ」 ! (ベートーヴェンに例えるなら5番運命…よけい分かりにくい?)
 声が聞こえそうで聞こえない、分かりそうで分からない隣人たちの生活描写や、主人公の人となりがすべて分かる冒頭のパン撮影(※)など・・・。、立体的な空間の隅々までをコントロールし、映像だけで物語を雄弁に語ってみせる。

   (※温度計・・・暑いから住人は窓を開けっぱなしている。
    ものものしいカメラ・・・主人公の職業が分かる。のぞき見の武器にもなる。
    カーレースの写真・・・主人公はこの事故でケガをした。
    女性のネガ写真・・・たぶん恋人だろう、どんな女性なのか?と期待させる。
                素直に飾れない 「ひねくれた愛情」 も感じさせる。)

 何よりヒッチコック究極の ”クール・ビューティ” G・ケリーの美しいこと! 引退作 『白鳥』 以上の、彼女史上最高。 ハリウッド史を代表する名デザイナー、イーディス・ヘッドのエレガントな衣装もすてき。
 ほか、クライマックス、双眼鏡越しにニラまれるシーンはビビッた! 「主人公目線」 に入り込んでいたので、あれは思わず背筋が寒くなった。



 A・ヒッチコック監督第40作 『裏窓 (1954米)』

 出演/ジェームズ・スチュワート (L・B・ジェフリーズ)
     グレース・ケリー (リザ・フリモント)
     セルマ・リッター (看護師ステラ)
     レイモンド・バー (ラーズ・ソーウォールド)
     ウェンデル・コーリー (ドイル刑事)

 ≪あらすじ≫
 事故で足を骨折したカメラマンのジェフは、アパートメントの自室で退屈な療養生活を送っていた。そんな彼の暇つぶしは、裏窓から見える隣人たちの生活をのぞき見すること。恋人リザや看護婦ステラの忠告もどこ吹く風、ひとり嬉々とするジェフ。ところがある日、向かいの男ソーウォールドの不審な行動を目撃する。

 ≪解説≫
 ヒッチの優れた演出とユーモアを随所に散りばめた、最も人気の高い傑作のひとつ。
 ギプスで動けない主人公の視界にあわせ、彼の部屋から一歩も出ないカメラ。(『救命艇』や『ロープ』などで試行錯誤を重ねてきた) 「制限された舞台設定」 の集大成にして最高の到達点になった。
 アカデミー監督、脚色、カラー撮影、録音賞にノミネートされたが無冠。ヒッチは娯楽映画の職人と見なされていた時代、ほとんど無視されて終わった (主要受賞作はE・カザン監督の 『波止場』)。

 ≪裏話≫
 原作はミステリーの詩人ウールリッチの短編小説。 無名作品の発掘とアレンジに長けていたヒッチは、このマイナー作を思う存分に料理して、第一級のエンターテインメントに仕上げてみせた。
 その一方で、プロデューサーとしてのヒッチはドケチとして知られ、ウールリッチにはスズメの涙ほどの著作権料しか支払われなかった。 ウールリッチはその微々たる額より、招待のチケットを送ってこなかったことが不満だったという。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 25分ごろ、売れない作曲家の部屋にいる黒髪のハゲたおじさん。難易度やや高し。



 『REAR WINDOW』

 製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ジョン・マイケル・ヘイズ
     原作/コーネル・ウーリッチ
     撮影/ロバート・バークス
     音楽/バーナード・ハーマン
     衣装/イーディス・ヘッド (本作からヒッチの遺作まで、計9作の衣装を手がける常連に。)

 パラマウント 112分
 
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10:42  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【クラシック音楽】 2011.12.22 (Thu)

クレンペラーの『荘厳ミサ曲』

クレンペラー『荘厳ミサ曲』

ベートーヴェン 『荘厳ミサ曲 (ミサ・ソレムニス)』

オットー・クレンペラー指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団・合唱団
エリザベート・ゼーダーシュトレーム
マルガ・ヘフゲン
ワルデマール・クメント
マルッティ・タルヴェラ

録音1965年/CD発売1996年/EMI


 巨星の指揮による歴史的名演だが、オケには特別な厚みを感じないし、ソロ歌手たちは声をこねくり回しすぎ。有名な大曲 『グローリア』 などは他の演奏の方がいい・・・。
 ・・・でもこの、ハラにどしりとくる振動は何なんだろう!? 無我の境地からズバッと斬り込む剣豪のような、殺気にも似た異様な圧力。緊張感。

 録音エンジニアのお手柄なんだろうか。良かったのは1996年発売の2枚組CDで、「アビーロードなんとか技術」でリマスターされたという2002年発売の新盤は、音がシャリシャリと安っぽかった。 あるいは音が良すぎて等身大があらわになったか。

 ぼくが最初に買ったバーンスタイン&コンセルトヘボウ版(1978)は、厚み・風格・完成度の高さ・・・どこをとってもどこからも文句が出ないであろう歴史的名演。壮麗な 『グローリア』 を聴くならこっちだ。 ただ完璧・優等生すぎたのかどうか、ぼくはさほど魅かれなかった。

 ベートーヴェン晩年の大作 『ミサ・ソレムニス』 は、「交響曲第10番」 とも呼べるような交響楽的な構築力をきかせる一方で、『ファウスト』 第2部のゲーテそっくり!な、自身の内的・外的世界の集大成を複雑緻密に極めすぎていて、今までなかなか取っつきにくいところがあった。
 そんなもともと興味のない曲を惹きつけたのは、「もう古いよ」と思っていた老匠の、厳格なカリスマでぐいぐい引っ張る もうひとつの 「歴史的名演」 だった。
 合唱団に☆×5。

 
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21:09  |  クラシック音楽  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【きょうのごあいさつ】 2011.12.19 (Mon)

三日天下のお殿さま

 
お店で豆乳コーヒーの 「ソイラテ」 を飲みました。

豆乳でのどがイガイガして、せきが止まらなくなりました。


でも風邪をひいたのと間違われて、みんなに心配してもらいました。

気分はお殿さまです。


ごほんごほん、誰かビールとおつまみ買ってきて。 ぼくしんどいねん。

ついでに仕事もやっといて。お医者に止められてますのん。


こんな調子なもんで、あっという間にほろぼされてしまいました。

次はわさびと唐辛子入りラテで天下をめざしてみます。

病弱王子(40)

 
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08:56  |  きょうのごあいさつ  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック米時代】 2011.12.16 (Fri)

『泥棒成金 (1955米)』

(ヒッチコック全作品) 
41.『泥棒成金』

 ≪感想≫
 「太ももと胸、どちらがお好き?」…実はチキンの話でした。そんなオトナの火遊び<アバンチュール>にうっとり。
 水面に映えるG・ケリーが最高に美しい! それから濃厚で色鮮やかな南仏の風景も。そして花火とキス! ・・・この時代のカラー映像は、太陽の下に惜しげもなく広げた油絵のようです。オスカー獲るだけのことはあります。
 この際ストーリーは二の次。アメリカもハリウッドもヒッチも黄金期、幸福な時代の幸福な娯楽作。 大好きな作品のひとつです。

 パラマウント社の最新DVDパケは色調が下品。上のポスターのような古式ゆかしさのかけらもない。FOXドラマと一緒にしないでほしい。



 A・ヒッチコック監督第41作 『泥棒成金 (1955米)』

 出演/ケイリー・グラント (ジョン・ロビー)
     グレース・ケリー (フランシー・スティーヴンス)
     ブリジット・オーベール (ダニエル)
     ジェシー・ロイス・ランディス (母スティーヴンス夫人)
     シャルル・ヴァネル (ベルタニ)

 ≪あらすじ≫
 “怪盗キャット”ことジョン・ロビーは、今ではすっかり足を洗い、風光明媚なコート・ダ・ジュールで悠々自適の生活を送っていた。ところがキャットの手口を真似た泥棒が現れ、警察からにらまれる羽目に。不当な容疑を晴らすべく、富豪スティーヴンス母娘の警護を買って出るロビー。やがて彼は美しき令嬢フランシーと恋に落ちる。

 ≪見どころ・裏話≫
 美しい南仏の風景をバックに、ハリウッドきっての美男美女が交わす軽妙な会話…おしゃれこのうえないロマンティック・サスペンス。ヒッチ初のワイドスクリーン作品。
 ヒッチは以後すべての作品をグレース主演で撮りたいとまで惚れこむが、グレースはこの撮影の前後にカンヌ映画祭に出席、そこで後の夫君になるモナコのレーニエ公と出会うことになる。

 アカデミー・カラー撮影賞受賞 (ほか美術、衣装賞ノミネート)。撮影のR・バークスは、『見知らぬ乗客('51)』 から(『サイコ』をのぞいて)『マーニー('64)』 まで、ヒッチの黄金時代を支えた最高の右腕。
 豪華な南仏ロケをしているのに、車の運転シーンはわざわざいつもの 「スクリーン・プロセス(背景合成)」 撮影。 ヒッチコックといえばスクリーン・プロセス。 本人は大の旅行好きだったが、ロケのリアル感より、作りものであっても銀幕の夢世界を追求するヒッチの、昔かたぎのこだわりがうかがえる。

 ≪この頃・・・≫
 1955年4月20日、ヒッチはアメリカ国籍を取得。 渡米後まもなく帰化した妻アルマと娘パトリシアから遅れること10余年。本人は 「裁判所に出向いて宣誓するのがめんどくさかった」 とはぐらかしている。
 同年10月、TVドラマ 『ヒッチコック劇場』 シリーズが放送開始。ヒッチは演出および番組ホストとしてお茶の間の人気者に。

 ≪ヒッチはここだ!≫
 10分、バスの中、K・グラントの横にちゃっかりと!ふたりの仏頂面がおかしい。
 (※技ありから超難問まで、いろんなチョイ役出演がありますが、これが一番好き!)



  『TO CATCH A THIEF』

 製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ジョン・マイケル・ヘイズ
     原作/デヴィッド・ドッジ
     撮影/ロバート・バークス                    (アカデミー撮影賞受賞)
     美術/ハル・ペレイラ、ジョセフ・マクミラン=ジョンソン   (美術賞候補)
     衣装/イーディス・ヘッド                     (衣装賞候補)
     音楽/リン・マーレー

 パラマウント 106分
 
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19:12  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【エンタメ&テレビ】 2011.12.14 (Wed)

ウルトラセブン第37話≪盗まれたウルトラ・アイ≫


ウルトラセブン(仮png60)
っぽい自作

 市川森一トリビュート②
 ウルトラセブン 第37話 ≪盗まれたウルトラ・アイ≫


 未確認飛行物体を調査中のダン隊員は謎の美少女に襲われ、変身アイテム 「ウルトラアイ」 を盗まれてしまう。その少女マゼラン星人マヤは、地球侵略を企む宇宙人一派の先兵だったのだ。
 しかし少女は見捨てられていた。地球は侵略の価値なしとみなされ、彼女を残したまま星ごと爆破されそうになる。よみがえったセブンの活躍で地球は救われるが、「この星で一緒に生きよう」というダンの呼びかけも空しく、少女はみずからの命を絶つのだった。


 侵略者の少女とモロボシ・ダンの、人間には聞こえないテレパシーでの対話。異国に取り残された者とすでに異国に生きる者・・・、都会の喧騒の中でも孤独な異邦人の葛藤が浮き彫りにされる。
 『ウルトラセブン』 は「祖国」 と 「よそ者」 の矛盾・隔絶にせまった名エピソードが多いが (メインライター金城哲夫さんの 「沖縄観」 が影響しているとかしないとか)、脚本の市川森一さんもその意向を受けての着想か。

 「自分は祖国に裏切られた」 と知った少女は、驚いたり取り乱したりすることなく、ただ静かに、盗んだウルトラアイをダンの目にかけてやる。 変身音とともに飛び立つウルトラセブン・・・。
 ダンが他人の手によって変身したのはこれっきりではないか。 ダン目線で装着されるおなじみのカメラ演出が、いつもとは違った情感で切なかった。

 ラストは、にぎやかな夜の歓楽街を後にするダン。
「なぜ、他の星ででも生きようとしなかったんだ。ぼくだって、同じ宇宙人じゃないか・・・」
 たしかに少女の最期は悲劇だが、じゃあモロボシ・ダン、あんたは幸せなのか? ・・・そんな、自問自答しながらも前に進むしかない異邦人の苦悩を、誰がくみ取ってやれるだろう。

 まがまがしい怪獣や宇宙人はいっさい登場しない、セブンの格闘も必殺技もない一編。
 おそらく予算節約のための作りで、当時の子供たちからは間違いなく好かれなかっただろう。だが同様の手法で描かれた第43話 『第四惑星の悪夢』 (川崎高・上原正三脚本) や、名作として名高い第42話 『ノンマルトの使者』 (金城脚本) と並ぶ、大人になった今だからこそ心に残る名作になった。
 1968年。

 監督/鈴木俊継
 脚本/市川森一

 
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00:26  |  エンタメ&テレビ  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【エンタメ&テレビ】 2011.12.10 (Sat)

太陽にほえろ!第20話≪そして愛は終った≫

 市川森一トリビュート①
 太陽にほえろ!第20話≪そして愛は終った≫


 第1シーズンのマカロニ刑事編。 1972年。
 殺人犯の青年役として沢田研二がゲスト出演。マカロニ刑事こと萩原健一との“GS”2大スター共演が大きな話題になった。ふたりとも生き生きとした脚本を得て、等身大の繊細な若者像を好演している。

 実の叔母との愛を守るため殺人を犯した青年が、偶然マカロニ刑事と出会う。お互いの素性を知らないふたりの間には友情が芽生えるが、やがて殺人犯と刑事としての対決の時が・・・。
 わざとマカロニを挑発し、その銃弾に斃れる青年。はじめて人を殺してしまったマカロニの絶叫が響く。

 「起きてください、起きてください・・・おれ刑事なんかやめたあ!」


 このシーン、半分はマカロニ=ショーケンのアドリブだという。寄り添う「長さん」こと下川辰平の狼狽も伝わってくる。のちに番組名物となる刑事たちの殉職シーンに匹敵する大熱演!
 ラストは、一度は刑事をやめようと旅路に就くが、追っていた犯人を見つけて思わず走り出すマカロニ。それでも刑事として生きようという復活の描写もまた胸を打った。

 脚本の市川森一さんはこれが 『太陽』 初登場作だったが、近親相姦という衝撃的な性を扱った内容から、長くスタッフの間では悪い見本とされたシナリオだったとか。 この程度で?とも思うが、前後作と比べれば一目瞭然。ほかは年寄りが作った古臭い話でまったく見ていられない。
 マカロニ刑事のアドリブ 「刑事なんかやめた!」 は、この半年後に番組降板するショーケンの本音でもあったのだろう。 「正義」 に名を借りた警察権力と父性を傍若無人に振りかざすこの頃の七曲署の連中なんて、若者にはとてもじゃないが我慢ができない。

 はじめ身内からは散々だった市川さんだが、この後も何話か 『太陽』 の脚本を手掛けている。出来が違うのだから当然だ。 「市川森一はやっぱり破格」 と思わせた一編だった。


 監督/金谷稔
 脚本/市川森一

タイトル(50)
っぽい自作

 
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23:42  |  エンタメ&テレビ  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【東京ずまい】 2011.12.07 (Wed)

秋ときどき冬のクリスマス

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早いもので、今年もクリスマスの季節がやってきました。

ここ東京は、時々思い出したように寒くなりますが、まだまだ秋の延長戦といったおもむき。

温暖化の時代、「ホワイト・クリスマス」 だなんて、もはやノスタルジーの彼方でしょうか。


きょうは手袋はいる・・・いやいらない。

外に飛び出してから、時にほっとひと安心し、時に 「しまった」 とうなだれる毎日です。


街路樹の多くは、いまだに緑色を身にまとったまま。

雪になれない冷たい雨が、冬はまだ先だと水を差しているようです。

寒いのが苦手なぼくとしては、いっそこのままでも構わないのだけれど。


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電気不足とか言っときながら、丸の内はずいぶんなお大尽。


 
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22:49  |  東京ずまい  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【ヒッチコック米時代】 2011.12.04 (Sun)

『ハリーの災難 (1956米)』

(ヒッチコック全作品) 
42.『ハリーの災難』

 ≪感想≫
 やりたいことは分かるのだけれど、コメディとしては笑えないし、サスペンスとしてもハラハラしない。登場人物や舞台がのんびりしているのはいいが、映画作品としての躍動感までのんびりする事とは違う。
 でも、あっちを立てればこっちが立たず、七転八倒の騒動は三谷幸喜ふう。まだ脂が乗っていた頃の三谷さんにリメイクしてほしかったです。



 A・ヒッチコック監督第42作 『ハリーの災難 (1956米)』

 出演/エドマンド・グェン (“船長”アルバート・ウィルズ)
      ジョン・フォーサイス (サム・マーロウ)
      シャーリー・マクレーン (ジェニファー・ロジャース)
      ジェリー・マザーズ (息子アーニー・ロジャース)
      ミルドレット・ナトウィック (ミス・グレイヴリー)
      フィリップ・トリュクス (ハリー・ウォープ) =ノンクレジット

 ≪あらすじ≫
 紅葉美しいバーモントの森に、3発の銃声が響き渡った。そして山中に男の死体が・・・。男の名はハリー。禁猟中の森で狩をしていた“船長”ウィルズ、ハリーの前妻ジェニファーら、それぞれ思うところのある村人たちは、事件を隠そうとあれこれ策をめぐらせる。

 ≪見どころ≫
 少々ブラック&シュールな、ほのぼのミステリー。 美しくのどかな田舎に不釣り合いな死体のアンバランスと、死体を前にしてなおのどかな人々のアンバランス。 死体さんにとってはまったく災難なタイトルにもクスリとさせられる。
 後の名優S・マクレーンが若い母親役で映画デビュー。コメディエンヌとして当時から抜群にカンが良かったそうだ。
 また音楽のB・ハーマンがヒッチコック作品初参加。ヒッチ黄金時代を支える最大の盟友に。

 ≪裏話≫
 1955年、ヒッチは本作の宣伝のため初来日 (自身は本作を気に入っていたが、興行の成功には自信がなかったからという話も)。このとき和食の名店に招待されながら、大好物のステーキを店に出前させたという。(・・・宣伝や会議にはまじめに参加していたそうだが、食に関しては世界の行く先々に好物を空輸させるほど、とにかくうるさかった。)

 ≪ヒッチはここだ!≫
 20分ごろ、露店のサムの絵に見入る老人の高級車の向こうに。難易度高し。



  『THE TROUBLE WITH HARRY』

 製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック
     脚本/ジョン・マイケル・ヘイズ
     原作/ジャック・トレヴァー・ストーリー
     撮影/ロバート・バークス
 タイトル・イラスト/ソール・スタインバーグ (ノンクレジット)
     音楽/バーナード・ハーマン

 パラマウント 99分
 
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23:26  |  ヒッチコック米時代  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【日本映画】 2011.12.02 (Fri)

小林正樹×橋本忍 『切腹 (1962)』

切腹
センスないDVDパケ

 『切腹』 1962年松竹
 監督:小林正樹
 脚本:橋本忍
 主演:仲代達矢、三國連太郎、石濱朗、岩下志麻、丹波哲郎

 江戸の大名屋敷に、ひとりの素浪人が 「武士らしく切腹したいので玄関先を貸してほしい」 と訪ねてくる。 そういう無理を言っては小金をたかる、このごろ流行りの手口だ。
 それを見透かした家老たちは、ならばと聞き入れて切腹を迫るが、浪人は動じる気配もない。トツトツと身の上を語りだした男の真意とは・・・?



 江戸初期、世の中が天下泰平を享受する中で生まれた格差社会の暗部を鋭く衝く。
 「切腹」 という武士のしきたりをテーマに、うわべだけの美意識への皮肉、硬直した官僚主義への批判はよどむことを知らない。 弱者の側のさもしさを直視しながらも揺るぎなき告発。 何十何百年たった21世紀の今日でも、そのまんま通じてしまう現実に少なからずショックを覚えた。

 日本映画史上最高の脚本家・橋本忍大先生によるシナリオは完璧!
 素浪人と家老、それぞれが回想を広げるたびに驚くべき真相が明かされ、次の展開が開けていくスリル。 これこれこうだからこうなる・・・、プロットを緻密に論理的に積み重ね、物語を盛り上げる巧さは 「映画史にこの人あり」 たるゆえん。そんな橋本忍的思考がいかんなく発揮された、橋本忍脚本の真骨頂だ。
 ちなみにかの代表作 『七人の侍 ('54)』 はもともと、平凡な侍が切腹にいたる一日を描くつもりだったが資料が揃わず頓挫、あれほどの大作に発展した。本作はそのリベンジだったのだろうか。そういう話を聞いたことあるような無いような・・・。

 演技陣も充実。当時30歳という仲代の不気味な迫力。対する家老役・三國の鉄仮面は、そのまま昭和の閣僚か高級官僚のようで実に憎々しい。そして、冷たく据わったまま動かない丹波の目の演技・・・。 所作や発声がしっかりしていて時代劇ができる昔の役者さんはいいなあ。
 クライマックスの殺陣が、段取りのお遊戯みたいだったのが惜しまれる。(あの腕クロスは何なの?)

 しかし何と言っても、竹光での切腹シーンは凄惨のきわみ。
 海外では息をのむ緊迫感と高い芸術性が絶賛されると同時に、「ハラキリ野蛮」 という日本のイメージも植えつけてしまったいわくつきの作品だとか。 外国からの評価に弱い当時の(今も)日本では、自分たちの言葉でなくそんな借り物の評価ばかりで語られていたようだ。

 今回、何度目かの観賞でさすがに感動や興奮は薄れていたけど、あの切腹シーンは怖かったし目が離せなかった。 軽々しくおすすめはしません。

 
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