【ニュース&カルチャー】 2020.07.14 (Tue)
放送大学の日仏交流番組

たまたまテレビで見たBS放送大学の番組に心打たれた。
フランスの高校生たちが、日本に体験留学する密着取材ルポ。
「たまたま」なので、番組名など詳細は分からなくてごめんなさい。
フランス側の高校は、貧しい移民家庭が主体の、お世辞にも学力が高いとは言えない学級クラス。
「個人主義」の国で育った彼らは、「集団」を重んじる日本の堅苦しいルールに戸惑いを見せる・・・
・・・が、ごもっとも。日本人はあいさつや時間のマナーだけならともかく、
シーツの折り目の方角まで(!)決めないと気が済まないらしい。
なぜ規律を重んじるのか、なぜ時間に正確なのか、なぜ清潔を心がけるのか、
ひとつひとつに論理的な説明がなされないため、ひどくバカバカしく映った。
上意下達への無批判・服従という国民性――
――日本人は相手との価値感の違いを知り、我彼の立場をすりあわせる発想がつくづく足りない。
一方で日本人とのふれあいは、フランスの若者たちに大きな刺激をもたらす。
移民出身の女子生徒のドレッドヘアーが「かっこいい」「美しい」 と目を輝かせる日本の高校生たち。
初めてそんな言葉をかけられたというフランスの女の子の、何ともいえない照れた表情・・・。
そう、「移民の子」 にとって民族のファッションは、差別の中でも自己を保つアイデンティティの象徴。
地球の裏側の人たちに自分自身を表現し、みずからの国や社会を伝えるうちに、
ドレッドヘアーであることも立派な 「フランス代表」 なんだということに気づいていく。
そんな生徒たちの心の動きを、そのつど丁寧に解説してくれたフランス側の先生には大きく教えられた。
ほか、地震や茶道の体験など。
地面が揺れたり、地震研究官の真剣な仕事ぶりは相当なカルチャーショックだったようだ。
茶道は・・・これじゃ伝わらないだろうな。チャンバラ体験のほうがずっとやさしいだろうに。
人と人との交流は、やはり遠隔操作だけでは通じあわないものがある。
必ずや病禍を克服して、自由に羽を伸ばせる世界をふたたび。
【ニュース&カルチャー】 2019.07.21 (Sun)
≪ニュース&カルチャー≫書庫もくじ
放送大学の日仏交流番組
アポロ月面着陸50周年
NHKドキュ『カンボジアに医療の灯を』
昭和の社会教育フィルム (人におすすめするにはクセが強かった動画集その3)
行かないで、放送大学・・・
秀作ドキュ③『ラーマのつぶやき (NHK)』
秀作ドキュ② 『マザーズ“特定妊婦”(中京テレビ)』
秀作ドキュ①『えん罪弁護士 (NHK)』
日本国憲法施行70年
聖地メッカのライブストリーム
「特別養子縁組」を知る
NHKドキュ『生理用ナプキン製造機を作った男』
特定秘密保護法案に断固反対します。
キャパをかじる
キング牧師 「I have a dream」 50年
「一票の格差」、選挙無効判決!
高橋和利さんとジョン・ガードンさん
世界とたたかう『ザ・イエスメン』!
ベニシアさん
チリ鉱山事故、全員生還!
地球帰還!≪はやぶさ≫
ベルリンの壁崩壊20年
真のノーベル物理学賞’09
あの人に聞く(第3回)
金大中氏を悼む
あの人に聞く(第2回)
オバマ大統領誕生へ
『首相戦士ガンダム』劇場
ノーベル物理学賞・南部陽一郎さん
あの人に聞く(第1回)
よみがえれ、レブロン・フレックス・シャンプー!
たたえよ赤塚不二夫!
巨人・阿久悠さん逝く
青島幸男さん追悼(追従)作品
さらば、青島幸男
ノーベル平和賞ムハマド・ユヌス
尊敬する人、周恩来
ムッシュ村上信夫
久世光彦さん、恐れ入りました
【ニュース&カルチャー】 2019.07.20 (Sat)
アポロ月面着陸50周年

1969年7月20日(UTC標準時)、アポロ11号が人類初の月面着陸に成功。
それからちょうど50年、あちこちのメディアで特集が組まれにわかに再注目されているが、
その船長ニール・アームストロングの人柄と人生に惹かれた。
飛行機にあこがれ、空軍を経てNASAにテストパイロットとして入ったこと。
大空を駆ける命知らずな猛者たちの中で、冷静沈着・技術者肌の異色な存在だったこと。
幼い娘を病で亡くし、失意の日々・・・。 宇宙飛行士の試験に応募しそこねるが、
NASAのほうが待ちかねて声を掛けてくるような逸材、
「最初の男<ファースト・マン>」 になるべくしてなった逸材だったこと。
――そして、月着陸の瞬間へ。
「アメリカの誇り」 を強調するニクソン大統領からの電話通信に対し、
「ただアメリカ一国だけではなく、平和を望むすべての人類を代表して」 と返した場面は、
米ソ冷戦やベトナム戦争の時代を超えて、普遍的な視野の高さを教えてくれる。
(ひるがえって、東京五輪開会式の晴れ舞台でこう明言できる日本国民はたったひとりでもいるか??)
後年は英雄視されることを嫌い、いち技術者として現場に立つことを望むも世の“人類”が許さず、
名声から逃れるかのように第一線を退き、静かな余生を送った。2012年、82歳で没。
歴史的偉業から50年のいま、自国の利益や民族の血だけにとらわれ破壊と分断を広げる人類は、
飛躍どころか停滞、後退すらしているように映る。
破壊され手遅れになるのはオゾン層だけではない。危機に瀕した人類の良心と自由も守られることを
望む。
(下の 【続き・・・】 に、有名な「宇宙計画もの映画」の感想いろいろ。)
【ニュース&カルチャー】 2019.03.28 (Thu)
NHKドキュ『カンボジアに医療の灯を』

少し前だが、NHK-BSでやってたドキュメンタリーがよかった。
カンボジアのNPO病院で責任者をつとめる日本人医師・嘉数真理子さんを取材したもの。
ウンザリするほどテレビにあふれる「世界で活躍する日本人バンザイ」ものなので期待せずにいたが、いくらか客観的なつくりだったので好感が持てた。
極端な共産主義を掲げたポル・ポト政権下、知識人が根こそぎ虐殺されたカンボジア。本を一冊持っていただけで殺されたその狂気は(『キリング・フィールド』など)映画やドキュメンタリーで有名だが、医師にいたっては全国で数十人しか生き残れなかったというから言葉も出ない。
そんな恐怖政治を覆した同国はいま、急速な経済発展を遂げて活気にあふれているが、一度失った医師の不足、教育システムの脆弱さは深刻。
そこで嘉数さんは、同じく焦土から復興した故郷の沖縄と重ね合わせ、その医師育成システムをカンボジアにも導入しようという。積極的に新人を問診の現場に立たせ、それを2年目が教え、さらに3年目がその面倒を見て・・・と順に教え教わっていくことから「屋根瓦方式」というらしい。
カンボジアのエリート新人たちははじめ、嘉数さんではなく経験の浅い先輩に教わることに不満を抱くが、身近な先輩と議論を重ねることで自分には見えなかった答えを知ることになる。頼りなさげな先輩も自分の力に気づき、人に教えることでさらに経験を深めていく。
陰で優しく見守る嘉数さんの、自分が英雄になるのではない、あくまでカンボジア人同士で教え教わっていく環境をつくるのだという信念には、大きく心を打たれた。くだんの「日本人バンザイ」ものとは一線を画すところだ。
1時間弱の番組はあっという間。また違った編集で再構成して、深く掘り下げてほしい(最近のNHKドキュは臆面ない「二番煎じ」も多いから、たぶんやってくれるだろう)。あと、大根役者やお子様タレントではなく本職のまともなナレーターに替えて。
こういう国内外の骨太番組は、放送時間じたいが削られているので心配しています。
【ニュース&カルチャー】 2019.02.18 (Mon)
昭和の社会教育フィルム~人におすすめするにはクセが強かった動画集その3
お気に入りのマニアックなYouTube動画集のラスト第3弾。本当はこれが本番です――。
⇒第1弾:ソ連映画『戦艦ポチョムキン』
⇒第2弾:“猪木問答”モノマネ

「下水処理 昭和」 - YouTube検索ページ (YouTubeへ。※たくさんあるので動画は貼らずリンクだけ。)
その昔、自治体などでつくられていた啓発映画。学校の体育館なんかに集められて見せられてたやつです。
中でもぼくのお気に入りは、よりによって「下水処理」について。題材が題材だけに、あの鼻がもげるようなニオイまで伝わってきそう。
でも、ただ キタナイ と言うなかれ。
汚水が自然や微生物の力で浄化され、排泄物が「資源」「エネルギー」として社会のサイクルに還元されていく様は、りっぱな先進科学。ぼくには油田だ金鉱だ以上の、宝の山にすら見えるんです。
理系だったらこっち分野の研究やってたかも。
富士山など極地のトイレはどうなってるのか。(処理技術より処理後を下界に降ろす手間が大変らしい。)
レアメタルなど「都市鉱山」は眠っていないか。
し尿から出るガスは生活燃料として使えないか。(実際そういうトイレ設備があって、途上国の山村への支援として送られているらしい。)
・・・興味は尽きません。
あと建物、看板、街ゆく人の姿なり、色あせたフィルムの質感、味のある(そしてよく訓練された)ナレーション・・・。これら画面の奥に丸ごと焼き付けられた、昭和レトロな佇(たたず)まいや設(しつら)えにもぐっときます。
自治体や関係者のみなさん、こういう貴重な映像資料が眠っていたら、ぜひ広く再公開してください! 絶対「池の水」みたいにブームが来ると思う。
【ニュース&カルチャー】 2018.09.07 (Fri)
行かないで、放送大学・・・

(東京大学・安田講堂)
テレビの放送大学で『歴史からみる中国』という講座番組をやっていたので録画しました。
中国四千年の歴史を、3人の講師が10数回にわたってリレー。2013年の再放送らしい。
最初の講師は華の古代史の激動を、気候変動や農工業の変遷などの視点を交えながら読み解く。
(採れなかった作物が採れる、採れていた作物が採れなくなる、といった気候変動や環境破壊――)
単なる英雄譚に終わらせず興味深かった。
2人目、中世担当の講師はウィキペディアに載ってるレベル。これで金取られるならかなわん。
3人目、近現代担当は「自分はそう思わないが」「必ずしも成功したわけではないが」などと
中途半端な主観が一言多くて嫌味たらしかった。
そのくせ日本やイギリスなど侵略者への舌鋒はずいぶん甘いし。
放送大学はこの9月いっぱいでBS放送だけになるらしい。
ラジオのFM放送は朝の目覚ましがわりにしていたので残念です。
しゃべりの素人がボソボソ棒読みするだけなので、穏やかな目覚ましにはピッタリだったのになあ。
いま海外の大学を先頭に、“授業”のスタイルが変わりつつあるらしい。
教師の授業はインターネット動画にして、学生はそれを自宅で見る。学校の教室ではそれに対する宿題や質問、議論などに充てる――。
「学校の授業は先生が一方的にしゃべるだけの居眠りタイム。家での宿題は適当にこっそり丸写し」という、今までの退屈なお勉強の風景。だったら図式・役割を逆にしたらいいじゃないかという、まさに逆転の発想。
インターネットの導入は学校・学生にとっていくらか負担増になるかもしれませんが、高い授業料払って居眠りするよりはずっと有意義。
日本の大学のあちこちでも講義の動画をオープンで無料配信しているので、みなさんも学問の秋にどうぞ。「OCW (オープン・コース・ウェア)」 で検索を。
放送大学さんの棒読み講義を観ていると、彼らはこの変革の波の先頭に立てるのか、生き残れるのか。余計なお世話ながら気になっているところです。
【ニュース&カルチャー】 2018.05.07 (Mon)
秀作ドキュ③『ラーマのつぶやき(NHK)』

このところ、社会派の優れたテレビ・ドキュメンタリー番組を観たので、その最後3作目です。
ETV特集 『ラーマのつぶやき (NHK)』
週末深夜の骨太ドキュ枠から。
内戦のシリアから日本に「難民」として逃れてきた一家に密着。16歳の長女ラーマさんの目線で、ようやく得た命の平穏と、異国の地に生きる不安の日々が描かれる。
明るく屈託のないラーマさん。来日して数年、友達とカラオケで歌い、友達に宿題を教えてあげる姿はどこにでもいる女子高生そのものだ。
しかしその胸中は・・・。自分と家族が抱える問題に押しつぶされそうになりながらも、ひとつひとつ率直に丁寧に語る姿からは、とても聡明な人だと伝わってきた。
無知無責任に「俺たち日本人の税金で養われている」と浴びせかけるほど、彼らが置かれた環境は甘くない。難民とて生計を立てて自立していかねばならないのはどこも同じ。
日本語が覚えられない夫に代わって、衣料店で働く自分の収入で一家を支えなければならないお母さんにのしかかる重圧。普段はほがらかなお母さんから唐突にあふれだす涙には心が痛んだ。
また、「日本人家庭に1泊ステイしたい」というお母さんの提案に、かたくなに反対するお父さん。娘ラーマさんから、女性の外泊を認めない母国の文化が語られる。
このお父さんは、決して封建的な専制家長などではない。心を閉ざし、家に引きこもる彼ら難民の深い喪失感・絶望感も、ラーマさんの代弁なくして知りえなかっただろう。異邦人の苦難に何となくは同情できても、個々の環境や価値観の違いにどこまで気づき、寄り添えるか。
それでも周囲の日本人たちはごく自然体で優しい。料理教室の講師として招かれ、大好評を得た元・5ッ星総料理長のお父さん。少しずつ日本社会に心を開いていく様子にひとまず、ほんのひとまずながらホッとした。
ラーマさんの 「難民指定されたからといって幸せとは限らない」 という言葉には、受け入れる側の国民としてじくじたる思いがした。
難民認定されるのが年に1ケタ、ようやく10数人に乗せた程度の「難民鎖国」日本。彼らを受け入れる意欲・能力の貧しさだけでなく、世界に出たい人を送り出す手続きも煩雑だ。
せめて世界に難民を生む元凶となったり、この国から逃げたくなるような国づくりの無きよう。
・・・本放送からすでに1ヵ月、遅くなってごめんなさい。NHKだからいつかまたやってくれるかな。