【欧州&世界映画】 2016.10.17 (Mon)

大人の香港 『花様年華 ('00)』

王家衛『花様年華』


 ウォン・カーウァイ監督の香港映画 『花様年華』。2000年。
 同じアパートメントに越してきた、妻ある男と夫ある女が恋に落ちる――。
 舞台は1960年代。時代がかった大仰なタイトル・クレジット、雑然とした街並みやヒロインたちの美しいチャイナドレスが、熱く沸騰するノスタルジーをさそう。あぁ古き良き香港!


 主演はマギー・チャントニー・レオン
 この大人のふたりにうっとり!もう、このふたりを見てるだけで満足。(日本でリメイクするなら間違いなく高峰秀子と佐田啓二だ。・・・昔の人だけど。)

 何と言っても、日替わりで魅せてくれるマギー・チャンのハイカラーのチャイナドレス! 侵しがたい高雅な気品と、それでもぶち破ってみたい濃密なエロティシズムと。(ぼくにその「勇気」があるだろうか。)
 タイトルの 「花様年華(かようねんか)」 は、女性の花盛りの年ごろを表す言葉だそうだ。 もちろん、まだ10代のお嬢ちゃんなんかのことを指すわけではありません。彼女が 「愛する人に裏切られるリハーサル」 で見せるあの失望の表情は絶品!


 扉や壁で空間を切り取り、あまり全景を映さない画面。男女それぞれのパートナーも最後まで姿を見せない。肝心のふたりだって、肉体関係をほのめかすような描写すらない。

 ――何かが起こるわけではない、すべてを見せるわけではない物語。
 ふたりはせわしい生活の中で、交差する時間に身を置くだけ。それだけで満足だったかもしれない。しかしそうやって人は年を取り、失ってはじめてあの時代はもう戻らないことに気付く。
 感情の爆発はなかったことに出来るかもしれない。しかし現実の人生に 「リハーサル」 はないと気付いたとき、人ははじめて愛の痛みを知る--。


 監督ウォン・カーウァイ(王家衛)、撮影クリストファー・ドイル、そして美術&衣装ウィリアム・チャン(張叔平)
 1990年代、ポップな映像感覚で香港映画に革命をもたらした名トリオが、ミレニアムの年にオトナのムードをまとって「旧世紀」の愛をつづる。

 真紅のカーテンを揺らす真っ赤なコートの鮮烈は、これぞウォン・カーウァイ光線<ビーーム>!
 あぁ、こんな大人にあこがれる・・・。

 

タグ : 映画 香港映画 ウォン・カーウァイ マギー・チャン トニー・レオン  テーマ : 香港映画  ジャンル : 映画

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【欧州&世界映画】 2016.07.10 (Sun)

≪欧州&世界映画≫書庫もくじ

  ≪欧州&世界映画≫もくじ (※クリックすると新しいウィンドウで開きます。)

  大人の香港 『花様年華 ('00)』

  ブラジル映画『シティ・オブ・ゴッド』
  ルコント×ブラームス 『仕立て屋の恋』
  ソビエト映画 『ざくろの色』~亜欧の交差点にて
  甘ぁい『ロシュフォールの恋人たち』(だけどほろ苦い)
  続・夕陽の「良い奴、悪い奴、汚ねェ奴」

  ジャン・ルノワール 『ピクニック (1936仏)』
  クルーゾー×モンタン 『恐怖の報酬』
  『ひまわり(1970伊)』
  『男と女』、フランス冬の海
  ルイ・マルふたたび

  ジャッキーの強敵ベスト5!
  ブルース・リー、感じろ!
  ぼくの好きなラッセ・ハルストレム
  『黄金の七人』~イタリア版ルパン3世
  ギャバン&ドロンの『地下室のメロディー』

  新旧 『美女と野獣』
  『太陽がいっぱい』の名人芸
  ドイツ古典映画が好きです。
  ヴィスコンティにおぼれて
  死刑台のルイマルとマイルス

 

タグ : ヨーロッパ映画 アジア映画  テーマ : ヨーロッパ映画  ジャンル : 映画

22:46  |  欧州&世界映画  |  EDIT  |  上へ↑

【欧州&世界映画】 2016.07.09 (Sat)

ブラジル映画 『シティ・オブ・ゴッド』

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 '02年のブラジル映画 『シティ・オブ・ゴッド』 はすばらしかった。
 リオのスラム街に生きる少年ギャングたちの20余年をギラギラと描く、衝撃のバイオレンス。

 監督はCM出身のフェルナンド・メイレレス。 冒頭の、ニワトリをさばいていく短いカットの連続からして、どこか非凡なリズム感。
 つづいて最初のエピソード・・・主人公の兄世代の物語をまずじっくり見せておいて、そこから怒涛のエネルギー速射砲。ここからがすごい!

 エピソードごとに主役を入れ替え、時間軸を大胆に巻き戻し&早送りしながらも、明快な語り口と卓越した構成力で混乱もなく飽きさせない。 (物語が頼りなく漂流する北野武監督とはまったく対照的。)

 一方で、ストレートな血なまぐささを和らげるユーモア。 映画の結末もずいぶん皮肉めいていて背筋が寒くなる半面、哀れな道化のようなおかしみがあった。
 そしてエンド・ロール、出演者の顔写真でもうひと驚き。そうだったんだ・・・! (リトル・ゼぶさいく)

 少年どうしが殺し合う映画なのでハナっから拒絶反応の人もいるだろうし、観るにしてもそれなりの気合が必要。 だが映画的には、一時の感情で人を殺す子供だからこそ、次の展開が読めずハラハラさせられた。
 広くおすすめはしないけど、新興国からここまで完成度の高い作品が出てきたことは、とても感慨深い喜びを感じます。


 ・・・最後に (何かで読んだ指摘の受け売りだが、) 年間3万人が銃で命を落とすというブラジル。この残酷な物語を 「ひどい、信じられない」 と誰もがおどろき悲しむだろうが、かくいう日本だって年間3万人が自殺する国なのだ!
 ブラジル人にすれば、日本こそ 「信じられない」 社会だろう。 人のことを言ってる場合じゃない現実が、地球の裏表で動いている。

 

タグ : 映画 ブラジル  テーマ : この映画がすごい!!  ジャンル : 映画

09:52  |  欧州&世界映画  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【欧州&世界映画】 2016.01.18 (Mon)

ルコント×ブラームス 『仕立て屋の恋』

『仕立て屋の恋』

 ラジオからブラームス『ピアノ四重奏曲第1番』 が流れてきました。
 官能的な第4楽章が 「ジプシー風ロンド」 と呼ばれて有名。そして同時に、パトリス・ルコント監督1989年の出世作 『仕立て屋の恋』 を思い出させます。


 【YouTube検索ページ】 『仕立て屋の恋』 予告編


 向かいのアパートメントの美女に恋をした孤独な男。彼は声をかけるでも触れるでもなく、ただ窓から彼女の姿をのぞき見するだけ。やがて、自分を見つめる視線に気づく女――

 ――始まりはとんだ変態ストーカー話だったのですが、そこから物語は狂おしいほど切ない方向に動きだします――

 ――あろうことか、みずから男に接近する女。からかいか、自分も求めているのか、それとも・・・?


 女のそれがいつわりだと分かっていても、何とかして想い人をつなぎ留めたい男の訴え、すごく分かります。あの「2枚のチケット」はぼくも人のこと言えなかったから。
 むしろ「偽り」だからのめり込んでしまったのかもしれない。はた目には叶うはずのない愚かな期待に酔ってしまうように。

 そしてクライマックス、あの一瞬のスローモーション! 今でこそよく見るカメラ演出になったけど、当時はしびれまくったものだ。
 主人公目線で動くカメラ。(それまでとは逆の立場になって)窓から自分をのぞく顔。なんて残酷で切ない結末だろう。


 匂いや指先の愛撫などルコント監督らしいフェティシズムを交え、官能美薫るサスペンスとして忘れがたい名作に。
 そして、印象的なブラームスの 「ジプシー風ロンド」。はじめはタンゴか何かラテンの調べだと思ってた。クラシック曲でも指折りの扇情的な旋律を、真面目で保守的と言われたあのブラームスが作ったというのも驚きです。



 『仕立て屋の恋 (1989仏)』

 監督/パトリス・ルコント
 原作/ジョルジュ・シムノン (古典推理小説の大家)
 主演/ミシェル・ブラン
     サンドリーヌ・ボネール
 音楽/マイケル・ナイマン
 挿入曲/ブラームス 『ピアノ四重奏曲第1番』


 

タグ : パトリス・ルコント フランス映画  テーマ : フランス映画  ジャンル : 映画

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【欧州&世界映画】 2015.08.29 (Sat)

ソビエト映画 『ざくろの色』~亜欧の交差点にて


ざくろの色  セルゲイ・パラジャーノフ - Google 検索(40)


 ソビエト時代の映画 『ざくろの色 (1968-71)』 を初めて観ました。
 監督はセルゲイ・パラジャーノフという旧ソ連アルメニア人。

 オリエンタルな色彩・装飾と平面的な構図は、ちょうどこの辺りを支配していた古いビザンチン絵画のよう。ほとんどセリフもストーリーもない、イメージだけが連続するシュールな世界。

 なんだか分からないけど、なんて美しい!! ひとつひとつの絵を切り取って、そのまま壁に並べたい!

 むかし洋酒のCMで、怪異な大道芸人たちが砂漠に並ぶ名作 (「サントリー・ローヤル/ランボー編」) がありましたが、もしかしてその元イメージはこれ? これだよ!? (ずっとフェリーニあたりが元ネタだと思ってた。)


 黒海とカスピ海に挟まれ、かの 「ノアの箱舟」 がたどり着いた地であるというアルメニア。その末裔が一大王国を築き、ミラノ勅令(313年)に先駆けて世界で初めてキリスト教を国教とした由緒ある国。

 そんな、ごく初期のキリスト教文化をそのまま保存したような映像世界からは、そのあと西隣のトルコや南のペルシャ、さらには北のロシア=ソ連といった歴史強国に蹂躙されつづけながら、しぶとく自らの文化と信仰を守り通した 「アルメニア」 という民族の、無言の矜持を感じます。 (少し北には、独立紛争で知られるチェチェンがあることからも、この地がいかに複雑な歴史の火種を抱えているかが分かるだろう。)

 パラジャーノフ監督自身、ソビエト共産政府の支配下にあってはこのような作風が理解されるはずもなく、何度も弾圧・投獄されたという「生と魂を苛まれている男」
 前に観た、代表作とされる悲恋劇 『火の馬』 (1964) も美しくて分かりやすいのですが、ぼくは本作のイメージのほうにこそ、電撃が走るような感動をおぼえました。
 

タグ : セルゲイ・パラジャーノフ ロシア映画 アルメニア  テーマ : ロシア映画  ジャンル : 映画

17:25  |  欧州&世界映画  |  コメント(1)  |  EDIT  |  上へ↑

【欧州&世界映画】 2015.02.07 (Sat)

甘ぁい『ロシュフォールの恋人たち』(だけどほろ苦い)


ロシュフォールの恋人たち

 1966年のフランス映画 『ロシュフォールの恋人たち』
 こんなにもピンクと黄色と白が似合う、お菓子のように甘ぁい恋のミュージカル。


 何といっても、仏米からのキャストが超豪華!
 アメリカからは、『ウェストサイド物語('61)』で当時人気絶頂のジョージ・チャキリスと、御大ジーン・ケリー先生! (『ウェストサイド』からモロ影響の、街中での規律正しい群舞。せまいカフェの中で踊らされたチャキリスはなんだか気の毒だった。場面構成をしっかり計算して作りこむ米ハリウッドと、おしゃれで感覚的なフランス映画の違いがよく出ていた。)
 一方のフランス代表、ベッカムふうの二枚目水兵はジャック・ペラン。今回初めて気がついた、『ニュー・シネマ・パラダイス』の大人時代トトだ! こんなにイケメンだったのか。


 そして主役はカトリーヌ・ドヌーヴとその実姉フランソワーズ・ドルレアック。当時20代前半だそうだけど、ふたりとも老け顔なのがウ~ンなとこ。(セリフのないウェイトレスの女の子のほうがタイプ。)
 お姉さんはこの撮影直後に交通事故で亡くなられたそうです。ドヌーヴは30~40過ぎたらまたぐっとたまらなくなるので、ふたり一緒に見てみたかった。

 そんな彼女たちの、'60年代王道のボックス・ワンピース。胸元のカットがさすがおしゃれ。顔立ちに華があるから大きな帽子も似合う。このファッションがほんとすてきだったなあ!


 制作は名伯楽マグ・ボダール、監督・脚本ジャック・ドゥミ、音楽ミシェル・ルグラン、美術ベルナール・エヴァン・・・、かのフランス・ミュージカルの名作 『シェルブールの雨傘('64)』で名を成した黄金チーム。

 ミシェル・ルグランのジャジーなダンス・ナンバーはどれも粒より・充実していて、彼の生涯最高の仕事じゃないだろうか。日本では 『シェルブール』 ほど知名度がないのが不思議。
 冒頭の群舞曲はテレビCMで使われて有名ですね。
 姉妹の歌「♪ミファソラ~ミレ」も耳なじみ。
 G・ケリー(声は吹き替え?)の、古い面影を追いかけるメランコリックな旋律にもうっとり。

 ・・・この機にサントラCDも買おうっと。どの盤がいいかな? ♪アマゾン試聴ページ .


 フランス西海岸の町ロシュフォールは、時代に取り残された古い軍港だとか。 『シェルブール』 もまさにそうだったけど、フランス人にすれば、そういうさびれゆく町にファンタジーを託したことに無常のノスタルジーをおぼえるのだと思う。
 お菓子のように甘ぁいだけではない、「明るい町おこし映画」の裏に見え隠れする必死さ、わびしさ。今も昔も、本当のこの街に映画のような恋はどれくらいあっただろう?

 

タグ : フランス映画 ミュージカル  テーマ : フランス映画  ジャンル : 映画

20:10  |  欧州&世界映画  |  コメント(0)  |  EDIT  |  上へ↑

【欧州&世界映画】 2014.08.30 (Sat)

続・夕陽の「良い奴、悪い奴、汚ねェ奴」

Good Bad and the Ugly


 マカロニ・ウェスタン最高傑作のひとつ 『続・夕陽のガンマン』!! 1966年イタリア映画。
 アメリカ南北戦争を舞台に、「The Good, the Bad and the Ugly」 ・・・「良い奴、悪い奴、汚ねェ奴」 の3ガンマンが、隠された軍資金を手に入れようと三ツどもえの化かしあいを繰り広げる。

 監督は御大セルジオ・レオーネ、音楽は巨匠エンニオ・モリコーネ、そして・・・

   良い奴=クリント・イーストウッド
   悪い奴=リー・ヴァン・クリーフ
   汚い奴=イーライ・ウォーラック

 ・・・のオールスター、マカロニ最強チーム!

 「アァアァア~!(ワ~♪)」
 あの挑発的なテーマ曲に乗せて、男くさい男だけの男どうしの闘いを3時間! 濃すぎて胃もたれ必至の大傑作です。
 (前'65年の 『夕陽のガンマン』 と監督・演者が同じことから 「続」 とつけられているが、実際はなんら関連なし。ほんっとつまらない邦題だ。また水野晴郎の仕事だろうか。)


 【日本語吹き替え】
 とくに吹き替え版はその歴代でも指折りの、伝説の名演。 1973年 『日曜洋画劇場』 バージョン。
 
  C・イーストウッド=山田康雄
  L・V・クリーフ=納谷悟朗
  E・ウォーラック=大塚周夫

 ・・・言うまでもない 『ルパン三世』 初代メンバーそろい踏み! 次元役の小林清志さんも脇役で出ています。 (ちなみにルパン開始は'71年。)

 それぞれが最高にシビれる男の真髄を演じてくれるのだけど、白眉はやっぱり大塚周夫さん。
 初代ねずみ男からC・ブロンソン、初代石川五エ門まで・・・。ここではねずみ男路線のこすっからい小悪党ぶりがおかしくて、さすがの芸の幅でうならせてくれます。 イーストウッドに命乞いする 「ごめんなさぁ~い!」 は、吹き替え史に残る珍セリフとしてその筋では有名。

 ・・・'66年の劇場公開時には、もう下火になりつつあった 「マカロニ・ウェスタン」 映画の人気。それが'80年代の 「声優ブーム」 に乗ってまずこの吹き替え版から再評価され、今のカルトな評価確立に至りました。



(公式の宣伝用だから勝手に載せるね。)

 公式サイトでも「吹き替え版収録」が売りの目玉みたいだ。女ウケなんか無視した、作品愛が感じられる実にいい作り。ただしこの「吹き替え完全版」、声の追加収録はやはり違和感があるらしい。もっともぼくにはテレ東『午後のロードショー』の録画ぶんがあるからいいんだけどね。(TV用にカットされてはいるけど。)


 【三ツどもえのクライマックス!】
 見せ場は何といってもクライマックス、三ツどもえの決闘!
 3人向かい合って誰を撃つのか、誰から撃たれるのか、「三すくみ」 のにらみあい探りあいが延々と続く。延々5分・・・長げーよ! ジリジリするよ!
 そうやってさんざん焦らされ、もてあそばれたところで高らかに歌い上げる、モリコーネ哀愁のトランペット! ・・・もうたまんねーよ!鳥肌モノだよ! (♪『The Trio』.

 墓地にこだまするピストルの残響音。 それは屍肉をあさるカラスの叫びのようでもあり、死にそこねた亡霊の断末魔のようでもあり。使う拳銃によってそれぞれに個性があり、殺伐とした荒野に一種の「音楽」すら感じさせます。


 【良い子、悪い子、汚ねェ子】
 善玉悪玉って言いながら、イーストウッドもたいがい汚いヤツなんで、めまぐるしく立場が入れ替わる三者それぞれに肩入れできるところが最大の魅力。
 とくに吹き替え版のラストは、オリジナルにはない3大名優の声のサービスでシメてくれる。

   「俺、汚ねェ奴」
   「俺、悪い奴」
   「俺、いい人」

 くぅ~! また3時間観るか。
 

タグ : 映画 西部劇 マカロニ・ウェスタン 吹き替え  テーマ : マカロニ・ウェスタン  ジャンル : 映画

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